ホラー映画(前編)・「ブラックスワン」
のっけからお詫びですがなかなか更新出来ず、すいません。ゴールデンウイークに働いていた分の休みを楽しんでいました。楽しんでいたというのは今の時期、いかがかとお叱りを受けそうですが。ちょっと筆がそれますが大震災後、体調を崩される方が多いことに心を痛めています。一つ言えるのはことさら明るくなろうとせず、日常を受け入れることが大事なんじゃないでしょうか?(-.-;)
さて、仕切り直すため文体を変えて書くのだが、のっけからお詫びである。
私は今までホラー映画、ホラー小説に怖いと思ったことがなかった。しかし、その発言をついに撤回することになった。
ホラーという分野の感性の処女膜が破られた。そんな凄まじい作品に出逢ってしまった。
アカデミー賞受賞作「ブラックスワン」である。
正直、油断があった。アカデミー賞受賞作でチャイコフスキーの「白鳥の湖」をベースにした作品。私の得意分野だと思った。
しかし、ふたを開けたら、予想外の作品に私はうちのめされたのである。ホラー映画というのを怪物が出てきて、人間がバタバタ死ぬと定義するならこの作品はホラー映画ではない。怪物も幽霊も出てこない。しかしホラーというのを観るものに恐怖や絶望を与え、その人生観や魂を揺るがすと定義するなら「ブラックスワン」は第一級のホラー映画であり、なおかつ全てのジャンルの映画の中でも今年のベストワンを争う傑作だった。
あまりの恐怖に私は何度も両手で顔を覆い、ついには上着で顔を隠すに至った。しかし、私はなまじ英語が出来てしまうため、耳から恐怖が入ってくるのである。しかも恐怖でありながら、最後まで引きつけられ、帰ることも出来ないのである。
何の予備知識もいらないが「白鳥の湖」はオーロラ姫と黒鳥オディールの両方を一つの劇団の最高のスター、プリマドンナがやることだけは知っていた方がよい。
この先、予備知識なしで観たい方はご遠慮願いたいけど、本当に怖いので、敢えておすすめしない。
アカデミー賞女優賞のナタリー・ポートマンがプリマドンナの役をやっているのだが、オーロラ姫のパートはともかく、オディールのパートが上手くないと周りに言われる。ナタリー・ポートマンは「スターウォーズ」のアミダラ姫をやっていた人である。
オディールの役がやれない彼女にプレッシャーをかけてくる人間が三人いる。ヒロインにプリマドンナの地位を失うなと圧力をかけてくる母親。役とひきかえに体を迫ってくる監督。そしてオディールのパートが上手い後輩。こう書くとちょっと芸術が好きな人なら大映ドラマという昭和のほのぼのしたドラマみたいな道具立てだと思うかも知れない。しかし演出と演技が徹底しているので、三人により主人公がどんどん狂っていく様が本当に怖い!(ToT)
こんな恐ろしい作品は流しちゃいけないんだよ!(-_-)
さらに主人公の正気が失われていく中で観客の心に決定的なダメージを与えるような恐ろしい秘密が暴露される。(もし観るならその辺りはあまり意識せず不意打ちを受けて欲しいが普通の人間なら恐怖で警告は忘れてしまうので、大丈夫???)
チャイコフスキーの有名な傑作に彩られながら、本当に恐ろしいストーリーが展開していく。
そしてこの作品を観た私は数日後にやはり私の人生観を揺るがすような、そして映画史に残るような掛け値なしの傑作ホラー映画を観たのである。(続く)