小津の魔法使い
岐阜には名画座がある。
新しい映画ではなく、古い映画を上映している。料金は500円である。
そこで世界的巨匠小津安二郎の作品を三本観た。
「秋刀魚の味」「東京物語」「麦秋」である。すごく面白かった。
と言っても、表面的には「えっ?何が面白いの?」という感じかも知れない。
主役は老人のことが多く、動きも少ない。
しかし、心理や人間関係が巧みに描かれ、飽きさせられない。
また特に「東京物語」は全世界の映画評論家、映画記者が投票をしてもジョゼフ・L・マンキーウィッツの「イヴの総て」やフリッツ・ラングの「メトロポリス」とオールタイムベストワンを競り合う傑作である。
海外の人は「東京物語」こそ恐ろしい映画の極みと感じるらしい。
ある老夫婦がめんどうをみて欲しいと東京にやってくるが長男も長女もそれぞれの家庭や仕事に夢中で老夫婦は邪魔にされている。唯一優しくしてくれるのは死んだ次男の未亡人(原節子)だけである。
誰も悪人はいないが、老夫婦は孤独と絶望を味わう。
その家族の中の孤独と絶望が小津安二郎監督を貫くテーマである。
それは人間の根源的な孤独を描いているから西洋の監督や評論家に衝撃を与えたのだろう。
デンマークのラース・フォン・トリアーやベルギーのダルデンヌ兄弟に影響を与えていると思う。
それにしてもストーリーは暗いのだが昔の日本の風景と昔の日本人の上品さ、昔の女優さんの美しさと上手さにはため息が出る。原節子、岩下志麻、岡田茉莉子、岸田今日子、淡島千景、香川京子。
そして全ての作品に戦後最大の伝説的女優杉村春子先生が出ている。(-_-;)
すごく上手い。
でも野中広務元官房長官に似ている。