別役実さん
昨日の午後、NHKラジオに別役実さんが出演していた。日本を代表する戯曲作家である。
そのお話をラジオで聞いたのだが、非常にしっかりしたお話で感動した。
何を書くにしろ言葉に発してすぐ理解できないような不自然な文を書くな、とおっしゃるのにはドキリとさせられた。
今は古語で分からなくなっているが、古典小説も和歌も漢詩も当時の人にとっては耳で聞いて楽しめるエンターテイメントであった。
また別役実さんがおっしゃるには三島由紀夫あたりまでの文豪は実際に読んで意味がすっきり通る、朗読にたえうるそうである。
太宰治は特に句読点まで効果的に利用して、独特のリズム感を作っている。
頭の中で観念的な作品を作ることを別役実さんは戒めていた。
もう一つ感心したのは別役実さんが若い子の言葉などを安易に使わないことであった。
今、濫用されている言い回しで「~させていただく」という言い回しがある。
この言い回しは一昔前まではなかった。
橋本龍太郎総理が使って、流行ったのだ。その当時、作家の嵐山光三郎さんだけがこれを汚い言葉と批判なさっていた。だから私も、人様が使うのをとがめまでしないが自分自身は使わない。
だいたいよく考えて欲しいが「~させていただく」と言うからには何者かにやるかやらないかを判断してもらう、委ねる感じがする。
時と場合によっては通じるかも知れないが、先日、こんな言い回しを見つけた。
「トイレでのいたずらを発見したら厳しい対応を取らさせていただきます」
これはおかしい。
「取ります」でいい。
また次のはどうだろう。
「この学校を卒業させていただきました」
裏口入学でもしたのか?「卒業いたしました」でいいだろう。
こういう変な言い回しが流行り、変と感じない人ばっかりというのも怖い。(-_-;)
本筋に戻ってくるけど、別役実さんは小一時間ぐらいの話の中で乱れた敬語などがなく、感服した。
形骸化した敬語については私は言葉の専門家としてまた書きたい気もする。
ただ周りの人の言葉狩りになることはいやである。
お読み下さった方が少し立ち止まって下されば幸いです。