森の道化師
深い深い森の奥、色とりどりのパッチワークの服を着たシマリスのピポが住んでいました。
彼は自分を「森の道化師」と呼び、毎日キノコのステージの上でジャグリングをしたり、おどけたダンスを踊ったりしていました。
でも、森の動物たちはみんな忙しくて、ピポの芸には見向きもしません。
「ああ、今日も僕の観客は木漏れ日だけか」
ピポは真っ赤な鼻をピコピコさせながら、一人で自分に拍手を送るのでした。
ある日、ピポのステージの前に、一羽の灰色の小鳥が落ちていました。
その小鳥は羽を怪我しており、何より悲しいことに、喉を痛めて大好きな歌を歌えなくなっていたのです。
ピポは、震える小鳥を励まそうと、一生懸命に踊りました。
ドングリを空中に投げて、鼻の上で回して、わざと派手に転んでみせました。
でも、小鳥はただ、悲しそうに目を伏せるだけです。
ピポは気づきました。
「笑わせる」ことだけが道化師の仕事じゃない。**「寄り添う」**ことも大切な芸なのだと。
彼は踊るのをやめ、小鳥の隣に静かに座りました。
そして、自分のパッチワークの服から、一番柔らかい布を切り取って、小鳥の羽に優しく巻いてあげました。
「歌えなくてもいいよ。僕も、誰にも見てもらえない道化師だからね」
それから毎日、二人は一緒に過ごしました。
ピポが静かにパントマイムを見せると、小鳥はリズムに合わせて小さな足で地面を叩きました。
音のない、けれど温かい時間が流れます。
冬が近づくある夕暮れ、小鳥の羽がすっかり治りました。
小鳥は空へ飛び立つ直前、ピポの肩に止まり、喉を震わせました。
声はまだ出ません。でも、ピポの胸には、美しいメロディが直接響いてきたのです。それは、小鳥が精一杯伝えた「ありがとう」の音でした。
小鳥が去った後、ピポはまた一人でステージに立ちました。
でも、今の彼の顔に寂しさはありません。
「見ててね、僕のたった一人の親友」
ピポが空に向かってドングリを投げ上げると、遠くの空から、あの小鳥の羽ばたきのような風が吹き抜けました。
森の道化師は、誰もいない森で、世界で一番幸せそうな笑顔で踊り続けるのでした。




