表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな奇跡の童話箱  作者: ムーンキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/33

うそがつけないオオカミ

森のはずれに、オオカミが住んでいました。

名前はグレイ。

見た目は、立派なオオカミです。

鋭い目。

大きなキバ。

低くてこわい声。

けれど――

ひとつだけ、大きな問題がありました。

グレイは、うそがつけないのです。

ある日、子ヤギたちの家の前に立ちました。

本当は、ちょっとだけ驚かせてみたかったのです。

「ガルルル……おまえたちを食べに来たぞ!」

ドアの向こうで、子ヤギたちが震えます。

「ひぃぃ!」

グレイは続けました。

「でも本当は、昨日焼いたクッキーが焦げて落ち込んでいるだけなんだ!」

……。

ドアの向こうが静かになりました。

「え?」

子ヤギがそっと聞きます。

「焦げたの?」

「うん。黒こげだった」

「どれくらい?」

「石みたいだった」

沈黙。

そして――

くすっ。

小さな笑い声がもれました。

ドアが少し開きます。

「入る?」

グレイは正直に答えました。

「うん、ちょっと入れてほしい」

森では、オオカミはこわい存在のはずでした。

でもグレイは、

「今ちょっと強がってます」

「本当はさみしいです」

「そのスープ、すごくいい匂いです」

全部、口に出してしまいます。

だって、うそがつけないのです。

ある日、森の会議が開かれました。

「最近、オオカミが怖くない!」

キツネが言いました。

「威厳が足りない!」

シカも言いました。

グレイは立ち上がります。

「ぼくも、威厳がほしいです」

森のみんなが、ずっこけました。

「せめて、こわい声くらい出せないのか?」

クマが聞きました。

グレイは胸を張りました。

「ガオーーー!」

森が静まり返ります。

なかなか迫力があります。

みんな少しだけ震えました。

グレイは続けます。

「今のちょっと自分でもかっこいいと思いました!」

……。

森のみんなは顔を見合わせました。

そして。

ぶはっ。

大笑い。

その日から、森で困ったことがあると

みんなグレイのところへ行くようになりました。

「本当のことを教えて」

グレイは言います。

「それは、ちょっと言いにくいけど……」

でも、ちゃんと伝えます。

優しく、まっすぐに。

オオカミは、こわい生き物のはずでした。

でも森でいちばん信用されているのは、

うそがつけないオオカミでした。

今日もグレイは、胸を張って言います。

「ぼく、今ちょっと誇らしいです!」

森のどこかで、

またくすっと笑い声が広がりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ