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小さな奇跡の童話箱  作者: ムーンキャット


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食卓3人組と仲間たち!⑥

やさしさのひとすくい お玉さん

その日は、冷たい風が吹く夜でした。

キッチンでは、ことことと音がしています。

「今日はあったかい匂いがするね」

フォークスが鼻をひくひく。

「スープ系か?」

スープんが前のめり。

ハッシーが静かに言いました。

「……シチューだね」

その瞬間、やわらかな声が響きました。

「ふふ、あわてないで」

丸くて大きな影が、ゆっくり前へ出ます。

お玉さん

「こういう日は、ゆっくり混ぜるのがいちばんですよ」

ことこと。

白いシチューの中で、にんじんやじゃがいもが顔を出します。

「焦らなくていいんです。

味は、待ってあげると深くなるんですよ」

そのとき――

「任せろぉぉ!」

ヘラクレスが勢いよく混ぜようとします。

「ちょ、ちょっと待って!」

サイバシ将軍も身構えます。

しかし。

「ヘラクレスさん」

お玉さんはやさしく言いました。

「今日は力より、やさしさですよ」

ヘラクレスの手が止まります。

「やさしさ……?」

「ぐるぐるではなく、くるり。

底から、そっと」

お玉さんが、ふわりとすくい上げます。

とろり。

「ほら、具がつぶれていません」

スープんが目を丸くしました。

「すげぇ……包み込んでるみたいだ」

フォークスがうなずきます。

「刺すより、すくうより、つかむより……

包むって感じだね」

そのとき。

小さな声がしました。

「……ぼく、今日は出番ないのかな」

見ると、スープんが少ししょんぼり。

お玉さんはにっこり。

「そんなことありませんよ」

ことり、と一杯分をすくいます。

「スープんさん。

あなたが運んでくれるから、あたたかさが届くんです」

スープんの顔がぱあっと明るくなります。

「お、おう!」

みんながそれぞれ役目を果たし、

シチューはお皿へ。

湯気がふわりと立ち上ります。

その夜の引き出しは、いつもより静かでした。

でもそれは、さみしさではなく、

あたたかい満足の静けさ。

ヘラクレスがぽつり。

「……力だけでは、ぬくもりは出せんのだな」

お玉さんはやわらかく笑いました。

「どんな料理にも、

ひとすくいのやさしさを」

ことことと鳴る鍋の音は、

まるで子守歌のようでした。

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