ぼくにだけ見える空④
「風が止まらない」
最近、スカイは疲れていた。
学校では友達の曇り空。
帰れば、母の重たい雲。
そしてミオの、言えない雨。
誰も気づかないけれど、
スカイは毎日、空を見ている。
見て、考えて、
どうにかしようとして。
その日の昼休み。
ユウタがまた笑っていた。
でも空の奥で、雷が光る。
別の友達は曇り。
誰かは強い向かい風。
スカイの胸がざわつく。
(まただ。)
放っておけばいいのに、
気づいてしまう。
声をかける。
話を聞く。
考える。
帰るころには、頭が重かった。
家のドアを開ける。
「おかえり。」
母の声はやさしい。
でも空は、今日も分厚い雲。
ミオの空も、まだ不安定。
スカイの中で、何かがきしむ。
(ぼくがちゃんとしなきゃ。)
(ぼくが見てるんだから。)
その瞬間だった。
胸の奥で、強い風が巻き起こる。
スカイは思わずしゃがみ込む。
視界がぐらりと揺れた。
鏡の前に立つ。
恐る恐る、見上げる。
自分の頭の上。
そこには――
大きな雲の柱が、渦を巻いていた。
空をえぐるような、黒い竜巻。
風がうなり、雲を巻き込み、
雷が中で光っている。
(……なに、これ。)
竜巻は、外じゃない。
自分の中から、伸びている。
怒りでもない。
悲しみでもない。
言えなかった言葉。
踏み出せなかった夜。
分かったつもりだった悔しさ。
全部が混ざって、
暴れている。
「スカイ?」
母の声が遠くで聞こえる。
でもスカイは動けない。
今まで、人の空ばかり見てきた。
晴れにしてあげようとしてきた。
でも――
自分の空は、ずっと後回しだった。
竜巻がさらに強くなる。
(ぼく、こんなに荒れてたのか。)
初めて、気づく。
誰かを守る前に、
自分の空を知らなきゃいけなかった。
風の中で、スカイは目を閉じる。
逃げない。
見ないふりをしない。
ごまかさない。
荒れているのは、自分だ。
竜巻はすぐには消えない。
でも、スカイは初めて、
自分の空から目をそらさなかった。
――つづく――




