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小さな奇跡の童話箱  作者: ムーンキャット


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27/33

ぼくにだけ見える空②

「雨のち無風」

その日、家に帰ると、妹のミオがリビングで宿題をしていた。

「おかえり。」

声はいつも通り。

でも、ミオの頭の上には重たい雨雲が広がっていた。

細かい雨が、しとしとと降っている。

風はない。ただ、静かな雨。

(学校か。)

スカイはランドセルを置きながら言う。

「今日、なんかあった?」

ミオは顔を上げる。

「べつに。」

即答だった。

でも雨は止まない。

むしろ少し強くなる。

スカイはミオの前にしゃがむ。

「雨、降ってるよ。」

「なにそれ。」

ミオは笑う。

でも目は笑っていない。

「スカイ、変なこと言わないで。」

その言葉に、スカイは黙る。

強く聞けば、きっと閉じる。

そう思って、引いた。

(言いたくなったら、言うよな。)

スカイは自分の部屋に戻った。

夜。

トイレに起きたとき、廊下の向こうから小さな音がした。

すすり泣き。

リビングの隅で、ミオがひとり座っていた。

頭の上の雨は、もう豪雨だった。

「……っ、やだ……」

小さな声。

スカイは立ち止まる。

(今なら、行ける。)

でも、足が動かない。

昼間、ミオに言われた言葉がよぎる。

「変なこと言わないで。」

もしまた拒まれたら?

もし余計なおせっかいだったら?

迷っているうちに、ミオは涙を拭き、立ち上がった。

雨はまだ降っている。

でも、ミオは何事もなかった顔で自分の部屋に戻った。

スカイは、何もできなかった。

翌朝。

ミオの空は、雨のあとみたいに静かだった。

雲は薄い。

でも、色が少し冷たい。

「いってきます。」

いつも通りの声。

スカイは言えなかった。

大丈夫?も。

昨日のことも。

見えていたのに。

分かっていたのに。

守れなかった。

その日の夕方、スカイは鏡の前に立つ。

自分の頭の上を、なんとなく見上げる。

そこには、まだ小さな風が吹いていた。

雨じゃない。

雷でもない。

でも、どこか落ち着かない風。

(ぼくは、人の空ばっかり見てる。)

自分の空は、ちゃんと見ていただろうか。

窓の外は晴れている。

でも胸の奥は、ざわざわしていた。

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