ぼくにだけ見える空①
「晴れのち雷」
ボクはスカイ。
ぼくには、少し変わった力がある。
人の頭の上に、その人の「空」が見えるんだ。
晴れたり、くもったり、雨が降ったり。
ときどき、雷も鳴る。
でも、それが見えるのは、ぼくだけ。
*
「おはよー!」
教室のドアが勢いよく開いて、ユウタが入ってきた。
クラスの人気者。いつも明るくて、よく笑う。
今日も顔はにこにこしている。
けれど、その頭の上には、よく晴れた青空の奥で、黒い雲が小さく渦を巻いていた。
雲の中で、かすかな光が走る。
今にも雷が鳴りそうな空。
(……今日は、無理してるな。)
ユウタはみんなに囲まれて、大きな声で笑っている。
でも、黒い雲は消えない。
むしろ、少しずつ厚くなっていく。
スカイは立ち上がった。
「ユウタ。」
「ん? なに?」
笑顔はいつも通り。
けれど空は、不安定だ。
スカイは静かに言った。
「今日、ちょっと天気が変だよ。」
「天気? 外はめちゃくちゃ晴れてるじゃん。」
「そっか。」
少しだけ間を置く。
黒い雲の奥で、また光が走った。
「……何かあった?」
ユウタの笑顔が、ほんの一瞬だけ止まった。
「別に。なんもないって。」
強がる声。
空の中で、雷が大きく鳴りかける。
スカイはそれ以上問いつめない。
ただ、ぽつりと言った。
「雷ってさ、我慢すると大きくなるよ。」
ユウタは眉をひそめた。
「なにそれ。」
「オレの持論。」
沈黙。
しばらくして、ユウタは机に視線を落とした。
「……昨日さ。」
声が少しだけ小さくなる。
黒い雲が前に出る。
晴れ間が、少しだけ後ろに下がる。
「家で、ちょっとな。」
スカイはうなずくだけ。
聞き出そうとはしない。
ただ、その場にいる。
しばらくすると、空の色が変わった。
黒い雲は残っているけれど、少し薄くなり、晴れ間が隣に戻ってくる。
無理に作った青空じゃない。
雲を含んだ、本当の空。
ユウタは小さく笑った。
「……言うつもりなかったのにな。」
「晴れてる顔、疲れるでしょ。」
今度の笑いは、静かで自然だった。
頭の上の空は、晴れと雲が半分ずつ。
でも、雷はもう鳴らない。
スカイは窓の外を見る。
青空はきれいだ。
でも、どんな空にも、見えない雲はある。
それを知っているのは、
たぶん、ぼくだけ。
――つづく――




