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小さな奇跡の童話箱  作者: ムーンキャット


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26/33

ぼくにだけ見える空①

「晴れのち雷」

ボクはスカイ。

ぼくには、少し変わった力がある。

人の頭の上に、その人の「空」が見えるんだ。

晴れたり、くもったり、雨が降ったり。

ときどき、雷も鳴る。

でも、それが見えるのは、ぼくだけ。

「おはよー!」

教室のドアが勢いよく開いて、ユウタが入ってきた。

クラスの人気者。いつも明るくて、よく笑う。

今日も顔はにこにこしている。

けれど、その頭の上には、よく晴れた青空の奥で、黒い雲が小さく渦を巻いていた。

雲の中で、かすかな光が走る。

今にも雷が鳴りそうな空。

(……今日は、無理してるな。)

ユウタはみんなに囲まれて、大きな声で笑っている。

でも、黒い雲は消えない。

むしろ、少しずつ厚くなっていく。

スカイは立ち上がった。

「ユウタ。」

「ん? なに?」

笑顔はいつも通り。

けれど空は、不安定だ。

スカイは静かに言った。

「今日、ちょっと天気が変だよ。」

「天気? 外はめちゃくちゃ晴れてるじゃん。」

「そっか。」

少しだけ間を置く。

黒い雲の奥で、また光が走った。

「……何かあった?」

ユウタの笑顔が、ほんの一瞬だけ止まった。

「別に。なんもないって。」

強がる声。

空の中で、雷が大きく鳴りかける。

スカイはそれ以上問いつめない。

ただ、ぽつりと言った。

「雷ってさ、我慢すると大きくなるよ。」

ユウタは眉をひそめた。

「なにそれ。」

「オレの持論。」

沈黙。

しばらくして、ユウタは机に視線を落とした。

「……昨日さ。」

声が少しだけ小さくなる。

黒い雲が前に出る。

晴れ間が、少しだけ後ろに下がる。

「家で、ちょっとな。」

スカイはうなずくだけ。

聞き出そうとはしない。

ただ、その場にいる。

しばらくすると、空の色が変わった。

黒い雲は残っているけれど、少し薄くなり、晴れ間が隣に戻ってくる。

無理に作った青空じゃない。

雲を含んだ、本当の空。

ユウタは小さく笑った。

「……言うつもりなかったのにな。」

「晴れてる顔、疲れるでしょ。」

今度の笑いは、静かで自然だった。

頭の上の空は、晴れと雲が半分ずつ。

でも、雷はもう鳴らない。

スカイは窓の外を見る。

青空はきれいだ。

でも、どんな空にも、見えない雲はある。

それを知っているのは、

たぶん、ぼくだけ。

――つづく――

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