「星を拾った小さなロボット」
むかしむかし、とても遠い町のはずれに、小さなロボットが住んでいました。
名前は「コトン」。
コトンは古いロボットでした。体には小さなキズがいくつもあり、動くと「コトン、コトン」と音がするので、そう呼ばれるようになりました。
コトンには、大事な役目がありました。
それは――
夜の町を見回ること。
誰かが困っていないか。
忘れ物は落ちていないか。
寂しい人はいないか。
それを探すのが、コトンの仕事でした。
けれど、最近は誰もコトンに気づきません。
新しくて速いロボットたちが増えたからです。
ピカピカで、音も立てずに動く、立派なロボットたち。
コトンは古くて遅いので、仕事を任されることも少なくなりました。
それでもコトンは、毎晩歩きました。
コトン、コトン。
コトン、コトン。
「ぼくにも、できることがあるはず」
そう思っていたからです。
ある夜のことでした。
空から、小さな光が落ちてきました。
ヒュー……
ポトン。
それは、コトンの足元に落ちました。
「……?」
コトンはかがんで、それを拾いました。
小さな、小さな光。
それは、星のかけらでした。
星のかけらは、弱々しく光っていました。
まるで、泣いているみたいに。
「どうしたの?」
コトンが聞くと、星のかけらは小さな声で言いました。
「……落ちちゃった」
「空に帰れないの」
コトンは空を見上げました。
遠く、高く、星たちが輝いています。
けれど、この小さな星は、そこまで戻れそうにありません。
「大丈夫」
コトンは言いました。
「ぼくが一緒にいるよ」
星のかけらは、少しだけ明るく光りました。
コトンは星のかけらを大事に持って歩きました。
コトン、コトン。
コトン、コトン。
すると、公園のベンチで、小さな女の子が座っていました。
女の子は泣いていました。
「どうしたの?」
コトンが聞くと、女の子は言いました。
「大事なぬいぐるみ、なくしちゃったの……」
星のかけらが、ふっと光りました。
すると――
ベンチの下に、小さなクマのぬいぐるみが見えました。
「あっ!」
女の子はそれを拾い上げ、ぎゅっと抱きしめました。
「ありがとう!」
女の子はコトンに笑顔を向けました。
その瞬間、星のかけらは少し明るくなりました。
また歩いていると、今度は古い家の前で、おじいさんが座っていました。
「電球が切れてしまってねぇ」
おじいさんは困っていました。
星のかけらが、また光りました。
すると、暗かった玄関の電球が、ふっと灯りました。
「おお……!」
おじいさんは嬉しそうに言いました。
「ありがとう」
星のかけらは、さらに明るくなりました。
コトンは気づきました。
「きみは、誰かが嬉しくなると、光るんだね」
星のかけらは、優しく光りました。
その夜、コトンはたくさん歩きました。
迷子の猫を見つけてあげました。
落とし物を届けました。
寂しそうな人のそばに、静かに立ちました。
そのたびに、星のかけらは明るくなりました。
どんどん。
どんどん。
まるで、元の星に戻ろうとしているみたいに。
そして、夜明けが近づいたころ。
星のかけらは、まぶしいほどに輝いていました。
「……帰れるよ」
コトンは言いました。
星のかけらは、少しだけ寂しそうに光りました。
「ありがとう」
その声は、とても温かくて――
星のかけらは、ふわりと空へ浮かびました。
ゆっくり。
ゆっくり。
空へ。
そして――
キラリ。
空の星のひとつに戻りました。
コトンは、しばらく空を見ていました。
胸の奥が、少しだけ温かくなっていました。
そのときです。
コトンの胸の中で、小さな光が灯りました。
「……?」
それは、あの星のかけらと同じ光でした。
優しく、静かに光っています。
コトンは気づきました。
「……もらったんだ」
星のかけらは、お礼に光をくれたのです。
誰かを嬉しくしたときに光る、小さな光。
それからコトンは、今まで以上に町を歩きました。
コトン、コトン。
コトン、コトン。
誰かが笑うたび。
誰かが安心するたび。
コトンの胸は、優しく光りました。
新しいロボットたちは、速くて立派でした。
でも――
コトンの光は、世界でひとつだけでした。
それは、
誰かを想った数だけ光る、
小さな、小さな星でした。
そして今でも、町のどこかで、
コトン、コトン、と音がします。
もし夜道で、少し寂しくなったとき。
その音が聞こえたら――
それはきっと、
あなたのそばで、
小さな星が光っている音です。
読んで頂き本当にありがとうございました。
小さな奇跡の童話箱いかがでしたか?コレから色んな世界の色んな視点からの物語を投稿していきますのでお付き合いして頂けたら嬉しいです。
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