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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

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反発勢力の台頭

最初に異変がはっきりと表に出たのは、王城内の議会だった。


白い石で造られた円形の会議室。高い天井から差し込む光が、長い机の上に並ぶ書類を照らしている。その中央、王女アリシアの前に、一枚の請願書が静かに置かれた。


提出者は「国防強化派連盟」。

構成員の大半は、前線経験を持つ女性将校や現役の魔導騎士たちだ。


(これは)


アリシアは内心でそう思いながら、表情を崩さずに書面を読み上げさせた。


---


「――我々は、現行の試験的施策に強く反対する」


発言したのは、灰色の軍服を着た女性だった。背筋が伸び、声は低く、無駄がない。


ヴァレリア・グラント。

元戦線指揮官。現在は議会軍事顧問。


「“守られない男性の出口”?聞こえはいい」


彼女は一度、会議室を見渡した。


「だが、それは戦力の浪費だ」


室内の空気が、ぴたりと止まる。


ヴァレリアは淡々と続けた。


「この国は、女性が強く、男性が弱い。それは感情ではなく統計だ」


彼女の背後の水晶板に、数字が投影される。


戦死率。

出生率。

魔力適性の平均値。


「限られた資源は、強い者に集中させてきた。その結果、我々はこの国を守れている」


机を軽く叩く。


「弱い男性を保護し、医療を与え、雇用枠を用意する。それはつまり、強い女性から奪っているということだ」


誰も反論しない。

言葉が、正確すぎるからだ。


「前線では仲間が死んでいる」


ヴァレリアの声が、わずかに低くなる。


「その裏で、戦えない男に居場所を与える?」


視線が、まっすぐアリシアに向けられる。


「それは、誰のための国だ」


重い沈黙が落ちた。


冷たく、理屈が通っている。

間違いではない。


---


その頃、俺は王城外の詰所に呼び出されていた。


理由は、はっきりしている。


「あなたが、張本人だ」


エリスが苦い顔で言う。


「反対派が、正式に表に出た」


「予想はしてました」


自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。


「相手は感情論じゃない。軍事と数字で殴ってくる」


「はい」


分かっていた。

遅すぎるくらいだ。


「俺、何か言うべきですか」


「今は動くな」


即答だった。


「ここで前に出れば、“男のために制度を歪める男”になる」


「それ、事実じゃないですか」


「事実でもだ」


エリスは低く言う。


「象徴になった瞬間、負ける」


その言葉に、背中がひやりと冷えた。


---


数日後、反対派は街に出た。


演説は整然としていた。

声明文は理路整然。

論文まで出された。


どれも冷静で、感情を煽らない。


「我々は男性を憎んでいない」

「ただ、現実を見ろと言っている」

「強い女性が戦い、弱い男性は守られる。それがこの国を支えてきた」


酒場でも、その話題が出る。


「まあ、確かに」

「前線の人が言うならな」

「甘やかすなって言われても」


批判は個人に向かっていない。

英雄叩きでも怪物叩きでもない。


構造批判だ。


それが一番、厄介だった。


---


その夜。


王女アリシアは一人、書斎で資料を並べていた。


反対派の試算。

制度実験の成果。

医療利用率の改善。

犯罪率の低下。


どれも事実だ。


だが同時に、軍事予算の圧迫や人的再配置の歪みもまた事実だった。


(どこかで、必ず軋む)


ノックの音。


「入れ」


エリスが入ってくる。


「殿下。例の男が、何か言っているか?」


「いいえ。何も」


アリシアは目を細めた。


「それが一番厄介ですね」


エリスが一歩進み出る。


「反対派は、彼を切り捨てるつもりです。“象徴”として」


「分かっている」


アリシアは静かに言った。


「だから彼を前に出さない」


「この争いは、制度と制度の戦いにする。個人を盾にしない」


「可能でしょうか」


「難しい」


即答だった。


「だが、それをやらなければ」


一拍。


「この国は、“正論で人を殺す国”になる」


エリスは黙って拳を握った。


---


翌朝。


俺の元に、匿名の文書が届いた。


《男を甘やかすな》

《戦えないなら、口を出すな》

《守られる側は、黙っていろ》


紙をゆっくり机に置く。


(始まったな)


暴力ではない。

脅迫でもない。


正論による排除だ。


俺は深く息を吸った。


(ここからが本番だ)


反発勢力は間違っていない。

だからこそ、こちらも感情では返せない。


次に必要なのは、単なる対案ではない。


誰が、何を失うのか。


どの犠牲を、どこまで引き受けるのか。


それを、はっきり示す覚悟だった。


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