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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

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王女アリシアとの再対話

部屋は静かで、質素だった。王城の奥深くにある、小さな書斎。

豪華ではないが、粗末でもない。落ち着いた空間だ。

机の上には、書類が山積みになっていて、シンプルに整えられた椅子が二脚、部屋の中央に置かれている。

この部屋の装飾は最小限だ。飾り気のない、実務的な空間だった。


王女アリシアは、すでにその椅子に座っていた。

今日はドレスではなく、簡素な室内着を着ている。

そんな彼女は、俺が部屋に入るのも気にせず、無言で書類に目を通している。

見上げもしない。

その姿勢は、王族としての強さを感じさせる。


「座って」


アリシアは、何も言わずに、ただ手を軽く動かして席を勧めた。


俺は一歩踏み出して、向かいの椅子に腰を下ろす。

エリスも、今日は護衛として黙って立っている。

俺が話すのは、今日が初めての一対一だから、きっとそうしているのだろう。

そして、それはきっと重要な場だ。

この部屋、そしてこの時間にエリスが口を挟まないのは、アリシアとの会話があくまで「本音」のものだからだろう。


アリシアは、再び書類を整理しながら、ポツリと口を開く。


「少年たちとの話、聞きました」


「はい」


俺は簡単に答えた。


「どうでした?」


アリシアは、ようやく目を上げて俺を見つめる。

その目は、冷静で落ち着いている。

反応を探っているのだろう。


「困りました」


俺は即答した。

正直に、感情を込めて答える。


アリシアはその答えに、少し微笑んだ。


「正直ですね」


「統治者にとって、『困る』はかなり深刻な評価です」


アリシアが顔を上げ、少しだけ表情を強くする。

その言葉は冷静で、無駄な気遣いを省いたものだった。


俺は続ける。


「でも、そう言われても、必要だと思いました」


アリシアは、小さく息を吐いてから言う。


「あなたは、制度の外から制度を見ている」


その言葉に、少し驚く自分がいた。

その通りだが、俺はそれをわざわざ言われるとは思わなかった。


「だから、きれいごとを言わない」


アリシアは、ゆっくりと目を閉じ、少し笑みを浮かべる。


「褒めてます?」


「ええ」

「かなり」


その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


「では、本題に入りましょう」


アリシアが表情を引き締めると、部屋の空気が少しだけ変わった。

これから、重要な話になる予感がした。


「あなたは、今の制度をどう思いますか?」


その質問が、突然だった。


「合理的です」


俺は、しばらく考えた後に正直に答えた。


「残酷ですけど」

「合理的です」

「男が弱く、数が少ない世界で」

「全員を守るのは無理だ」


アリシアは静かに頷きながら、話を促す。


「続けて」


「だから、制度そのものを“間違い”だとは思いません」


慎重に言葉を選びながら続ける。


「ただ、“唯一の正解”として扱うのは、違うと思います」


アリシアの目が鋭くなる。


「理由は?」


「制度は、人を守るために作られる」


俺はゆっくりと言う。


「でも、長く続くと、制度を守るために人を切る」

「その段階に見えました」


沈黙。

アリシアはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開く。


「その通りです」


その答えに、少し驚く自分がいた。


「だからこそ」


アリシアが続ける。


「制度を、簡単に変えるわけにはいかない」

「一部を変えれば、別の場所が壊れる」

「孤児院の規定を緩めれば、次に切られるのはどこか」

「女性労働者か」

「戦線か」

「他の子どもか」


「はい」


重い沈黙が続いた。


(分かってる)

(この人、全部分かってる)


「だから」


アリシアは静かに言った。


「あなたに聞きたい」

「変えるとしたら、どこからどう変えるべきか」


(俺に、聞くか)


一瞬、躊躇した。


(これは、罠じゃない)

(覚悟を、測ってる)


「制度を“優しく”するのは無理です」


最初にそう言う。


「はい」


「だから」


俺は続ける。


「“出口”を増やしてください」


「出口?」


「はい」

「守られなくなった男が、犯罪か、危険労働か、野垂れ死ぬか」

「その三択しかないのが問題です」


アリシアの指が机の上で止まる。


「第四の選択肢を作れますか」


「例えば?」


「訓練でも、魔法でもない」

「“補助役”としての公的職」

「危険を負わない」

「前線に出ない」

「責任も、最小限」


「それは」


アリシアが眉をひそめる。


「コストがかかる」


「はい」


即答。


「でも、“切り捨てるコスト”ももう限界です」


アリシアは目を閉じた。


(刺さったな)


「あなたは」


しばらくして言う。


「ずいぶん、自分を棚に上げますね」


「俺は」


少し苦笑して言う。


「この世界の例外です」

「参考にすると、危険です」


「自覚はある、と」


「あります」

「だから」


続ける。


「俺を“モデル”にしないでください」

「制度は、”例外”で作ると歪みます」


「正しい」


アリシアは、小さく笑った。


「困ったことに、とても正しい」

「だから」


彼女は、結論を出す。


「制度は、すぐには変えません」


「はい」


「だが」

「実験はします」


視線が、こちらに向く。


「あなたの提案した“出口”」

「小規模に」

「試験的に」


「条件は?」


「あなたは」

「関与しない」


「え?」


「監督もしない」

「指導もしない」

「名も出さない」

「完全に、無関係な存在として扱います」


それは――かなり厳しい条件だ。


「なぜですか」


「あなたが関われば」


アリシアは、はっきり言った。


「“希望”になる」

「それは、制度改革にとって毒です」


納得できる。


(本当に、この人、統治者だ)


「代わりに」


続ける。


「あなたには」

「“観測者”になってもらいます」


「観測者」


「ええ」

「制度が」

「誰を救って、誰を切るか」

「その結果を、あなた自身の目で見なさい」


重い。

だが――逃げ場のない重さじゃない。


「分かりました」


俺は頷いた。


「約束します」

「希望には、なりません」


アリシアは、深く息を吐いた。


「あなたは」

「王族向きではありませんね」


「よく言われます」


「ですが」


立ち上がり、窓の外を見る。


「国にとって」

「必要な“異物”です」


その言葉に、

不思議と悪い気はしなかった。


(異物でいい)

(余剰より、ずっといい)


「今日は、ここまでです」


「ありがとうございました」


書斎を出る前、彼女が言った。


「あなたは」

「制度を壊そうとはしていない」

「ただ」

「“壊れる音”を聞かせに来た」

「それが」

「一番、やっかいです」


俺は、軽く頭を下げた。


---


王城を出ると、夜風が冷たい。


(変わるかな)


すぐじゃない。

多分、遅い。

それでも。


(やらないより、マシだ)


俺は、歩き出した。


次に待っているのは――

制度の“結果”を、見る回だ。

少年の一人が、選択の結果を持って戻ってくる。

それは、成功かもしれない。

失敗かもしれない。

あるいは――そのどちらでもない現実かもしれない。


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