48話 テオのお兄さん
⸺⸺シュタイン城⸺⸺
城の入り口にかかる大きな橋に足を踏み入れる。
「あぁ、着いてしまいました……」
テオがシュンと項垂れる。
「大丈夫だよテオ。自信持って!」
「そうだぜ、ったくいつものお前らしくねーじゃねぇか」
ブラッドと2人で彼を励ます。
「そう、ですよね……。よし、俺扉を開けてもらえるよう言ってきます」
「頼んだぞ、テオバルト」
「お願いね~」
「はい!」
オーウェン団長とラスさんにも見送られ、テオはずんずんと橋を渡っていく。
すると、テオが橋の真ん中辺りまで差し掛かったところで、急に彼の目の前にドンッと人が降ってきた。
「テオ~!」
「わっ、クルト兄さん!? ビックリした……」
「あのお方は……クルト第二王子殿下か。皆、挨拶に行こう」
オーウェン団長の指示で結局私たちもテオのところへと駆け寄った。
それにしてもこの人お城からジャンプしてきたのかな……。すごい跳躍力なんだけど。
「あ、ども。テオがお世話になってます!」
クルト殿下はそう言ってニッと笑った。
あれ、なんか思ってた雰囲気と違うな……。テオの話からしてもっと意地悪そうなのかと。
「白狼騎士団団長のオーウェン・ヴァレンタインです」
オーウェン団長に続いて皆それぞれ自己紹介をする。
「ふんふん、あんたら良い奴なんだな~。テオがこんなに良い顔になってる。帝国に行くまではウジウジして大丈夫かって思ってたんだけどな」
クルト殿下はテオの髪を激しくくしゃくしゃと撫でていた。
「クルト兄さん、やめてください。脳が揺れます」
「おっ、わりぃわりぃ。非力なのは相変わらずだな~。ま、そこが可愛いんだけどな!」
クルト殿下はまたニッと笑った。
……あれ? なんかすごく愛されてない?
「もー、馬鹿にしないで下さいよ。俺だって強くなったんですからね!」
テオはそう言って頬をぷくーっと膨らませる。クルト殿下はヘラヘラ笑いながらその頬を容赦なく両手で挟んで潰した。
「ねね、テオ。非力だって馬鹿にされてるって、こういうこと?」
私は痺れを切らしてそう質問する。
「そうなんですよ、全く酷いですよね!」
「テオ……それ多分、馬鹿にはされてない……」
私がそう言うと、テオ以外の皆は「だな」と笑った。
「えっ、だって非力だとか可愛いとかって馬鹿にしてるじゃないですか!」
テオは意地になって怒ってくる。あれ、何だか私もテオが可愛く見えてきた。
「クルト殿下、テオのこと、好きですか?」
私がそう尋ねると、クルト殿下は「ん、大好き」と、即答した。
それに対しテオは「俺は嫌いです!」とぷんすかしながらそう吐き捨てて、一人で橋を渡りきり城内へと入っていってしまった。
「なかなか一方通行でさぁ。俺めっちゃ嫌いって言われんだよね……」
クルト殿下は寂しそうに笑った。
「殿下、お気の毒に……。ですが、テオバルトはどうやら愛されているようで安心しました」
そう言うオーウェン団長に続いて、皆でうんうんと頷く。
「皆テオのこと大好きだよ。まぁ親父と兄貴は頑固っつうか素直じゃねぇとこあるから、それで勘違いしてウジウジしてたんだと思うけどな。テオの仲間なら大歓迎だぜ、さ、入った入った」
クルト殿下に促されて、私たちはシュタイン城へとお邪魔した。