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45話 聖女の器

「聖女の器かと聞いている! 答えろ、娘!」

「わ、分かりません……」

 私が怯えて1歩下がると、オーウェン団長が間に入り私を背中へと隠した。


「突然そんな事をそんな形相で聞かれても彼女も戸惑うだけです。聖女の器とは一体何なのですか?」

 と、オーウェン団長。


「どうやら違うようだな……。聖女の器でない以上、この件に関してこれ以上話すことはない。ヴァレンタイン、貴様その娘を大事そうに抱えているが、本当に大事に思うのなら、今後一切魔女の森の生き残りなどと口外しないよう、しっかりとしつけておけ」

 ヴェイン団長は殺気のこもった形相でそう言い放った。


「なぜあなたはそう一方的なんだ! 彼女が自分の出生を話して何が悪い!」

「言い方が悪かったか? 守り切る覚悟も実力もないくせに、守っているつもりでいるな。殺されたくなくば、黙っていろ!」

「アヴァリス、脅しはやめなさい」

 皇帝陛下が割って入る。


「皇帝陛下、俺はこれで失礼する」

 ヴェイン団長はそう言って静かに歩き出した。

 そんな彼の背中へ、オーウェン団長は自身の想いをぶつける。


「俺は、生涯をかけて彼女を守ると決めた! 俺の両親や仲間のように……もうお前に、誰も殺させはしない!」

「……何を戯言(たわごと)を。今の貴様では、俺に一太刀も入れられずにその娘を殺される。言葉には気を付けることだな」

「っ!」

 オーウェン団長が言葉に詰まると、ヴェイン団長は再び歩き出し、玉座の間から出ていった。


 すぐにセシル皇帝陛下が私たちへ頭を下げてくる。

「オーウェン、ルカさん、彼に代わって謝罪します」

「そんな、なぜ皇帝陛下が……頭を上げてください!」

 慌てるオーウェン団長。


「アヴァリスも多くを語らないものですから誤解されがちなのですが、彼は決して悪い人間ではないのです。どうかその事を分かってあげてください」

「……皇帝陛下は、ヴェイン団長が当時魔女の森に出向いていたことはご存じないのですか?」

 オーウェン団長がそう切り出す。


「……知っていますよ。本人から聞きましたから」

「それなら教えて下さい! 彼は1万以上もの人間をどうやって一瞬にして消し去ったのでしょうか!?」


「消し去った? 彼が、ですか? 彼にはそんな事はできませんよ」

 皇帝陛下は困ったようにそう答えた。

「そんなはずはないんです! 彼が俺の両親を……仲間を……ルカの同胞を……」

 オーウェン団長の強く握られた拳がわなわなと震える。


「オーウェン、落ち着いて下さい。先程も言いましたが、彼は誤解されやすいだけで……」


「もういいです。ですが、陛下とヴェイン団長が共謀をしてどこかを攻撃しようとしているのであれば、白狼騎士団は全力でそれを止めますので、その時はご容赦下さい」

 オーウェン団長もそう言って玉座の間から出ていってしまった。


 ど、どうしよう。私、どうすれば……!

 その場でおどおどとしていると、セシル皇帝陛下が優しく話しかけてくれた。

「ルカさん、僕の方でも聖女の器という言葉について、アヴァリスに問い詰めてみます。今は、オーウェンの側についてあげて下さい」


「は、はい! ありがとうございます、それでは失礼します!」

 私は皇帝陛下に感謝しつつ、急いでオーウェン団長を追いかけた。


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