22話 カミングアウト
⸺⸺白狼騎士団 資料室⸺⸺
オーウェン団長とラスさんと別れた後、私たちは資料室へと戻ってきていた。
テオが口を開く。
「ルカ、聞かせてください。オーウェン団長はあなたが12年前のことを探っていると言っていましたが、それは本当の事なのですか?」
「うん……黙っててごめん……。でも、ちゃんと白狼騎士団の事を知りたかったのは本当。だから、古いところから順にたどってたんだよ」
「何でか、聞かせてくんねぇか?」
と、ブラッド。
私は、ここまで協力してくれてる彼らには打ち明けようと覚悟を決めた。
「僕は、当時メドナ王国にあった『魔女の森』の生き残りなんだ」
「魔女の森って……あの魔女の森ですか!?」
テオが興奮気味に食いついてくる。
「えっと……どの魔女の森?」
「数々の有名な魔道士の猛者が故郷とするあの魔女の森ですよ! 12年前に……滅んでしまった……」
テオはそう言ってシュンとうつむく。
「そうだね、12年前に滅んだ、魔女の森で合ってるよ」
「魔、“女”の森……?」
ブラッドはそう呟くとジーッと私のことを見つめていた。そうだ、そのことも彼らには言うべきかも。
「ブラッド……何回も嘘ついてごめんね」
「嘘……?」
ブラッドは私を見つめたままそう復唱する。
すると、テオがクスクスと笑い出した。
「俺は気付いてましたよ。ルカが女の子だって」
「えっ!?」
「やっぱ女なんか!?」
衝撃を受ける私とブラッド。
「テ、テオ……いつから気付いて……」
私は涙目になる。
「すみません、ルカと初めて会った時からです。白狼騎士団には珍しい女の子だって思っていたら、ブラッドとぶつかった時に『男だ』って言っていたので、訳ありなんだと思って今まで聞かずにいました」
テオはニコッと微笑んだ。
「そ、そんなぁ~……」
机になだれ込む私。
一方で、ブラッドはめちゃくちゃ嬉しそうだった。
「っしゃぁ、ルカは女だった! 俺は何も間違ってなかったんだ……!」
「ブラッド、嬉しそうですね」
と、テオ。
「ったりめぇだろ! 俺ずっと男を好きになっちまったと思ってさ~、すげー悩んだんだからな!」
「え、す、好き!?」
なんのためらいもなく言うブラッドに私は顔がボンッと赤くなるのを感じた。
「なるほど、そういうことでしたか。前にブラッドが『男だって関係ねーよな……』って呟いていたのはルカのことだったんですね」
テオはそう言ってクスクスと笑う。
「あぁ、だな。男でも好きになっちまったもんは仕方がねぇって開き直った瞬間だわ、それ」
「そんな話してたの!?」
カミングアウトしたのは私の方なのに、なぜか私の方が驚く展開になっている。
っていうか、ちゃんと謝らなきゃ。
「あの、騙してて、ごめんなさい!」
私は立ち上がり、深く頭を下げた。
「いえいえ、俺は騙されてませんから」
と、テオ。
「いや、むしろ言ってくれてありがとう。つーか、女でいてくれてありがとう!」
ブラッドはそう言って頭を下げる私を強引に起こし、ぎゅっと抱きついてくる。
「ちょ、ブラッドってば……!」
「あはは、ルカ、ブラッドだけには黙ってた方が良かったかもですね」
「うわーん、テオ、助けてよ~……」
「はいはい、ブラッド。嫌がる女の子にそんなことしたらただのセクハラですよ。良いんですか? 嫌われても」
テオがそう言った瞬間ブラッドは秒で私から離れた。
「それはダメだ! ルカ、わりぃ」
「あ、いや……嫌いになんかはならないけど……」
果たして言って良かったのだろうか。でも、彼ら2人に言えて、どこかホッとしている私がいた。