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第一話

お詫びと御願い:


この作品は2024年4月頃、こちらに掲載したものですが、2024年11月に小説投稿サイト「ハーメルン」にも転載しております。

ハーメルンでは一般社団法人日本音楽著作権協会 (JASRAC)、株式会社NexToneからの許諾により、投稿小説の「サブタイトル・前書き・本文・後書き」においてJASRAC管理楽曲・NexTone管理楽曲の利用が許諾されています。

これによりハーメルン版の「魔王カラオケすみれ」は作中に登場する歌詞がそのまま掲載された、「完全版・魔王カラオケすみれ」となりました。


宜しければ是非、当作品はハーメルンにてお楽しみ下さい。


完全版・魔王カラオケすみれ(小説投稿サイト・ハーメルン)

https://syosetu.org/novel/359561/



 カラオケスナック「すみれ」が転移して来てから四週間経った。

 私も店長も毎日どうやったら日本に帰れるか考えていたが、結局のところ良い思案はなく、日々、魔王軍の幹部様や様々な魔物達を相手に、どうにかこの店を切り盛りする事に追われていた。



「すみれ」は魔王城の玄関ホールにある大階段の裏側の、10m四方程の空間にフィットしている。

 店の裏口の外には元から掃除用具が置いてあったので、私はそれで毎日、魔王城の玄関ホールを掃除するようになっていた……

 いや、魔王城のホールを掃除してる訳じゃないな。店の前を掃除しているのだ。


 そこへ。


「ハァ……ハァ……」


 魔王城の大玄関の横にある小さな勝手口が開き、誰かが入って来た……あの勝手口は魔王城の従業員以外は使ってはいけないのだが……

 ていうか! 人間ですよ! 勝手口から人間が入って来た!? いや待て、私も人間だけど、これって結構非常事態なのでは?


 勝手口から滑り込むようにして入って来たのは筋骨隆々のおじさんだった。そして無精ひげの似合う精悍な顔立ちをしているのだが、絵本の王子様みたいな変に明るい色の鎧装束を着ている。


「ぬおっ!? さっそく魔物か!! ええい、一匹ぐらい何とかしてやる!」


 そしてぎゃあああ!? 男はいきなり、何だかヒロイックなゴテゴテした剣を鞘から引き抜いてこっちに走って来る!


「ま、待って下さい、やめて、私魔物じゃありません!」

「ええい往生際の悪い! しかし……魔王城の入り口を守備する魔物にしては、えらい貧弱な奴だな」



 壁際に追い詰められた私は、必死に説明する。自分は魔物ではなく人間だという事、どういう訳か異世界からここに店ごと飛ばされて来たという事、現在は中立の立場でカラオケスナックを経営する事で生き長らえている事……



「にわかには信じられないが、こっちも時間が無い! おい! 貴様も魔物ではなく人類の味方だというのなら、俺が身を隠すのに協力しろ」


 男は抜き身の剣を私の首筋に当て、凄みのある笑みを浮かべた。


「ヒエエッ……もも、もちろん私、人類の味方です! ですからどうか、その剣を収めて下さいっ……」


 私はとにかくこの物騒な男を「すみれ」のバックヤードに招き入れる。


「それで、貴方様はその……」

「俺は勇者だ、勇者イーグル、人類の最後の希望だ。いいか? 万が一にも俺がこんな所で死んだら全てが終わる。全人類は魔王と魔物の奴隷となるのだ」


 勇者様はそんな事を言いながら、辺りの棚をギョロギョロと見回し、サラミやピーナツの袋を取って勝手に貪り食い出す。ああ……貴重な元の世界の食糧が……


「チッ……こんな物しか無いのか? これじゃ体力を回復出来ん」

「あの……勇者様がここに居るというのはやはり……魔王を倒しに来られたという事でしょうか?」


 私は恐る恐る聞いた。勇者はかぶりを振る。


「残念だが、今の俺達にはまだその力は無い……軽率だった。もう少し修行を積んでから来るべきだったようだ」

「はあ……?」

「ちょっと魔王城の周囲の様子でも見てやろうと軽い気持ちで出て来たら、なかなか敵が現れなくて思ったより深入りしてしまい、退路を立たれた挙句ここまで……仲間達は途中で離脱した。無事ふもとの村に戻れているといいのだが」


 この人が何を言ってるのかサッパリわからない。私が頭を抱えたその時。


「おーい、もう空いてるか? ん?」


 バックヤードの入り口から、誰かが覗き込んで来た……いつも贔屓にしてくれているゴブリンの兄さんだ。彼等は魔王城を守る強い魔物ではない、たまたま近くに住んでいるので魔王城で掃除などのバイトをしている一般魔物市民だ。

 そのゴブリン兄さんと、自分は勇者だと名乗る不審なおじさんとの目が合った……


「いらっしゃいませ! 店長はまだですけど店は開いてますよ! どうぞ、お好きな席にお掛け下さい、ただ今注文を伺いに参ります!」


 私は急いで二人の間に入った。そしてゴブリン兄さんから見えない角度で、勇者おじさんの頭に、そのへんにあった茶色い紙袋を被せる。


「その……魔物は?」


 ゴブリン兄さんがきょとんとして聞いて来る。


「ああ! この魔物は『さまよう青白い鎧』だそうです! 田舎から出て来たばかりで右も左も良く解らないと! さあさまよう青白い鎧さんも、店内へどうぞ!」



 何だそうか、人間かと思ってビックリした、ハハハ、時々川で獲れた魚などをくれる魔物(おひと)好しのゴブリン兄さんはそう言って店内に戻って行った。


「……何だそのさまよう青白い鎧とかいうザコ96%のネーミングは……」

「どうでもいいじゃないですか、とにかくここで騒ぎを起こしたらすぐ魔王軍の幹部が来ますよ、御願いですから今はその物騒な剣をしまって下さい」

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