令嬢と人狼少女の物語
「あなた、どうしたの? 大丈夫!?」
私は、その言葉がうっすらと聞こえて、そのまま目を閉じた。
次に目が覚めた時は知らない天井、知らない布団だった。
「ここは...?」
周りをきょろきょろしていると、
「あー!目が覚めたのね!旦那様達を呼んできますね!!」
と、ドタドタとメイドさんらしき女の子が元気よく去っていった。
しばらくしたらゾロゾロと人が入ってきた。
「やぁ、目が覚めたかい?カレンが君を連れ帰ってきた時はびっくりしたよ。すぐに医者を呼んで手当てはしたけど、まだ痛むところはあるかい?」
そう旦那様?らしい人が質問してきた。
「いえ、その、大丈夫、です...」
「そうか、なら良かった!」
私が喋ったことでみんながひと安心したように見えた。
(なんなんだ、この人たち。いや、助けてくれたり、気を使ってくれたりでいい人たちなんだろうけど...)
そう思っていると、
「あなた、名前はなんとお呼びしたらいいのかしら?」
見るからに、theお嬢様って感じの女の子が聞いてきた。
「コハク...コハクっていいます。」
「そう、コハクというのね。私はカレン。カレン・アヴェンタドールよ。」
「!?」
その名を聞いて、びっくりしてしまった。
(え!?アヴェンタドール!?イシュタニア国で王都に次ぐ大きい領地の公爵家の!?)
私はまた、気を失いそうになった。
なぜ自分がここにいるのかすらあまり記憶にないのだ。
(じゃあ、さっきの旦那様って...ヨハン・アヴェンタドール公爵様!?)
大貴族を前に萎縮してしまっていると、
「あははは、大丈夫。そう畏まらなくてもいいよ。
その反応を見ると君は、この国の国民なのかな?どちらにせよ、怪我をしている女の子をどうこうしよって私は思ってないよ。」
旦那様は笑って話しかけてくれた、が、やはり体がこわばってしまう。
「あなた〜、あなたが言ってもちょっと怖いわよ〜。
カレンちゃんが家まで連れて帰って来た時は私もびっくりしちゃったけど、コハクちゃんは人狼族なのかな?」
このおっとりした口調で美人さんは質問してきた。
(カレン様が助けてくれたの?なんでだろ、思い当たる節がないな。けど助かったし、)
など、考え込んで少し黙ってしまった。
「聞いちゃいけなかったかしら〜?」
美人さんがおろおろしている。
「い、いえ!!私は人狼族です!
あ、あの!カレン様!助けていただきありがとうございました!」
目が覚めてから少ししか口を開いていなかったため、ボリュームを間違えてしまった。
「わ、びっくりした。いいのよ。私が好きでしたことだし。」
カレン様はそう言うと、ちょっと顔が赤いように見えた。
「...コハク。君はどうして、この家の裏の北の森に居たのか教えくれるかい?」
旦那様は真面目な表情に変わっていた。
(そういえば、なんでそんな所にいたんだろ...)
そう思い、私は少し記憶を遡ってみた。