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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
3章 猫をたずねて三百里

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69話:ゆるキャラと城塞都市

 ガスターおじいさんと別れた後は、再び街道を歩いて城塞都市を目指す。


 徒歩で移動しているのはゆるキャラたち以外におらず、馬車が通過する度にぽてぽて歩く奇妙な三人組は注目されていた。

 今後も注目を浴びるのは避けられないだろう。


 というわけで開き直って、馬車から身を乗り出してこちらを見ていた女性冒険者たちに手を振ってみる。

 すると彼女たちは「キャー!可愛い!」と黄色い歓声を上げながら遠ざかっていった。


 よし〈コラン君〉は可愛い。

 魔獣なんかじゃないぞ。


 到着した城塞都市の城壁は暗めの灰色で、王都の真っ白いそれと比べると質実剛健な印象がある。


「鼠人族と翼人族のハーフねえ」


 最初こそ門番に胡乱げに見られたが、冒険者証を提示すると都市に入る許可は出た。


 この冒険者証というのが思ったよりも便利で、都市に入る際の税金は免除される。

 第三位階という階級も強者の証として受け取られるため、冒険者証を見た後の門番たちの反応は悪くなかった。


 シンクのような幼女が第三位階で疑われるかとも思ったのだが……。


「第三位階で妖精と角の生えた子どもと珍獣の三人組ってまさか」

「それがどうしたんだ?」

「なんだお前知らないのかよ、樹海の守護竜様の噂を」


 むう、シンクが王都の空を飛んで一週間足らずだが、もう噂が流れているのか。


 この世界の通信網は発達していないため、早馬や伝書鳩、商隊や冒険者による手渡しの手紙などが市井での連絡手段となる。

 それ以外だと今回のような人づての噂話も貴重な情報源だ。


 国や冒険者ギルドといった巨大組織になると、電報程度の通信設備があるとグラボが言っていた。

 エドワーズがシンクの姉の情報を調べたのにも使われたと思われる。


 ある意味科学よりも万能な魔術がある世界にしては、意外と発達していないのだなとゆるキャラは感じた。

 魔術や魔術具で電話やテレビ電話並みの通信も不可能ではないが、術者や製作者が限られるため、秘匿中の秘匿だとか。


 なにはともあれ無事門はくぐれた。


「へーここが城塞都市()()()()かあ」

「王都よりもこぢんまりしてるね」

「ん、ちいさい」


 そりゃあ王都エルセルと比べると規模は小さい。

 というか都市に求められる役割も違うので単純な比較は出来ないだろう。


 レヴァニア王国の北東の端にある、城塞都市ガスターの役割とはもちろん国防である。


 北から南東へ流れる大河に沿うように都市は形成されていて、その中心に国内外を繋ぐ大きな橋が架けられている。

 橋の両端は巨大な門で守られていて、都市の右端と左端には高々とした監視塔がそびえ立つ。


 空から見た限りだと都市の面積だけなら王都の半分くらいありそうだが、そのうちの殆どが軍事施設だ。

 中央の橋周辺、都市面積の二割程度が一般市民が出入り出来る区域で、その大半が駐在する軍人たち向けの武具店や飲食店になっている。


 時刻は夕暮れなので飲食店は書き入れ時だ。

 どこの店も王国の鎧を着た兵士たちで賑わっている。


「ねーねートージ。あの人なにやってるの?なんか薄着で寒そうだね」

「ん、でもふりふりが付いてて可愛い」

「ん?誰の話だ……っておおう」


 フィンとシンクの視線の先には、確かに薄着でふりふりの付いた可愛い、いや妖艶な女性が立っていた。

 大通りから中通へと誘う入り口に佇む彼女は、通りすがる王国兵士たちに声をかけている。


 素肌が透けて見えそうなほど薄い生地のドレス姿で、膝上何センチかわからないくらい短い裾には、シンクが可愛いと称したフリルが付いていた。

 夕暮れ時で薄暗くなければ薄いドレスの向こう側の、色々と見えてはいけないものが見えてしまっていたに違いない。


 中通りの店々は桃色のネオン(みたいに見える照明)が妖しく輝いていて、それぞれの店先には大通りの際に立つ彼女よりも更に扇情的な衣装の女たちがいる。


 あれはアレだ、北海道で言うところの大歓楽街すすきの的なお店の通りだ。

 これは子供たちの教育に非常によろしくない。


「あ、奥に似たような格好の人が沢山いるね」

「む、ふりふりしてる?」

「どれどれ……」


「いやー、腹減ったなー。門番さんに教えてもらった店で晩飯にするかー。二人とも腹減っただろ?」


 かなり強引に話題を変えてしまったが、二人とも空腹には違いなかったようだ。

 ゆるキャラの誘いにあっさりと乗ってくれる。


「そうね、お腹がすいたわ!」

「ん、もぐもぐタイム」


 目的の店は分かりやすい目印を掲げているため、少し歩いたらすぐに見つかった。


 木彫りの丸い看板で、横向きの栗鼠が彫られている。

 なんとなく親近感の湧く看板の下の扉を、押し開いて中に入った。


「いらっしゃいませ!〈樫の膂力〉亭にようこそ」


 ゆるキャラたちを出迎えたのは、元気のよい犬人族の女の子の給仕だ。

 耳と尻尾がピコピコ動いていて可愛い。


 フィンとシンクも触りたそうにうずうずしている。

 そういうサービスは無いからおさわりは駄目だぞ。


 亜人入店OKで宿泊も出来る店を門番さんに教えてもらったわけだが、店内の雰囲気も活気があって悪くない。


 そして扉を開いた直後から、旨そうな匂いかエゾモモンガの鼻孔をくすぐっている。

 ふむ、これはなかなか期待できそうだぞ。

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