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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
9章 悠久狂騒曲

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287話:ゆるキャラと待望の再会

「シンク!? どうしてここにいるの?」

「……ん、姉さん」


 ゆるキャラたちは数時間の休憩の後、エリステイルが漂う塔の内部へと戻ってきた。

 ラウグストとの激闘により地底湖の岩盤は崩れ、中央の石造りの祭壇も破壊されたのだが、見事に元通りになっている。


 昇降機を兼ねた祭壇が昇ってくると、先行してエリス本体の元へ向かっていたニールたちが戻ってきた。

 シンクとハクアの竜姉妹、待望の、感動の再会となったのだが、いかんせんギャラリーが多すぎる。


 狭い祭壇まわりに知った顔も知らない顔もぎゅうぎゅうに居るものだから、シンクはすっかり人見知りモードだ。

 ゆるキャラの腹にしがみついたまま、駆け寄ってきた姉に返事をする。


 ニールから説明済みかと思ったが、ハクアはこの瞬間までシンクが自分を追いかけていたことを知らなかったようだ。

 まあこんなに早く再開できたのは僥倖だしな。


「えっと、見ないうちにちょっと背が伸びた? 私も成長してるはずだけど」

「……ん」


 妹を置いて故郷であるリージスの樹海を勝手に飛び出したからだろう。

 少し気まずそうにしながらハクアがシンクの頭を撫でている。


 撫でられているシンクの方もどこかぎこちない。

 シンクは場の雰囲気に呑まれているだけだと思うが……。


「へー、君がハクアの妹か。確かにそっくりだな。でもどうしてここにいるんだ?」

「条件が色々整ったらしく、レジータの力で転移してきたんだ」

「大陸間をか! それはすごいな」


 自身も超能力で転移を使うからか、ニールが興味深げにレジータを見やる。


「おおっ! そちらのお二方はもしかして創造神に連なる神々では? ちょっと触ってもよろしいですか? 出来れば体細胞のサンプルを頂いても?」


 サシャとレジータの存在を看破したミンドナファムが、赤黒の瞳を爛々と輝かせて二人に迫る。


「うわ、なによこいつ」

「ひいいいいい怖いようううううううう」


 馴れ馴れしくにじり寄る邪人にドン引きの神々。


「竜巫女ー。ひさしぶりー」


 フィンは竜巫女のフレンと面識があるようだ。

 気さくに周囲を飛び回る妖精を、竜巫女はぼんやりと見上げていた。

 見た目よりかなり長生き故に感情の起伏が乏しくなってしまったフレンだが、どことなく喜んでいる気がする。


「すぐにと思っていたが、出発は一週間後に延期しよう。ついてくるのをやめるつもりはないんだろう?」

「……うん」


 ニールの問いかけにハクアが躊躇いがちに答えた。


「しゅっぱつ?」


 ゆるキャラに抱き付いたまま、事情を知らないシンクが不安げに見上げてくる。

 シンクはハクアがニールと共に、彼(今は彼女)の元の世界である地球(ややこしいがゆるキャラの地球とは違う)に旅立とうとしていることを知らない。


「皆の紹介もそうだが、どこか落ち着ける場所に移動したほうがいいよな。ここは一応敵地で、またいつ別の闇の眷属が現れるか分からないし」


「それならコラン村に戻らないか? あそこなら大勢で押しかけても受け入れてくれるだろう」

「コラン村?! なにそれ!」

「あー、昨日説明した村だよ」


 折角名前は伏せていたのに、ニールがばらしたのでフィンがめちゃくちゃ反応している。


「リリン……そっちの吸血鬼の姉ちゃんが外壁にトウジの彫刻を彫ったりもしてるぞ」

「なにそれ! 見たい! 見たい!」


「ちょ、落ち着け、落ち着けって。エリスさんたちはどうしますか?というか一週間後で構わないのですか?」


「勿論構いませんよ。長い歳月を過ごしてきましたから、一週間くらいでしたらあっというまです。その代わり分体の私たちを連れて行ってください。トウジさんの中で大人しくしていますので」


 というわけでコラン村への大移動が決定した。

 面子はこの場にいる全員なので、総勢十三名という大所帯だ。


 移動手段は竜族の姉妹にお願いすることになる。

 シンクの背中にはゆるキャラとフィン、ユキヨ、それとゆるキャラの四次元頬袋に入った神様四名。

 ハクアの側はニール、フレン、ミンドナファム、そしてリリンだ。


 リリンがこちらに乗れなくてちょっと不貞腐れていたが仕方がない。

 シンクは人見知りなのだ。


 ところが何故か同じ初対面のユキヨはシンク本人が許可したので、余計にリリンとしては不服なようだった。

 シンクに邪人や闇の眷属への偏見は持っていないはずなので、今後の親交で仲良くなればいいさ。


 さて、この塔へは遥か頂上から侵入したが、塔の運営者が味方になった今はそんな苦労は不要らしい。

 エリスの差配で地底湖の壁に真っ暗な横穴ができ、そこを潜るとあっという間に外に出ることができた。


 冠雪した森が広がり、空は曇天、背後にはそびえ立つ塔。

 時刻はおそらく午前中で、天気は良くないが一日ぶりの外で空気が美味しい。

 早速ハクアとシンクに竜の姿になってもらって、コラン村へと出発した。





 天翔ける紅白の竜。

 色こそ違うが、その姿形は姉妹というだけあって非常に似ていた。

 いわゆる飛竜タイプでスリムな流線型が美しい。


 背中にゆるキャラたちという荷物を背負ってはいるが、ハクアの後ろを飛ぶシンクもどこか嬉しそうだ。

 コラン村で落ち着いたら、二人っきりの時間を作ってあげよう。


 小一時間も飛ぶと、コラン村の上空付近へと到着した。

 雪原に突如現れる城塞のような外壁が非常に目立つ。


 コラン村の開発も中途半端なので、ある程度形にしてやらないとな。

 ゆるキャラたちを出迎えたのは二匹の巨大魔獣。

 氷熊(ヒグマ)のユメと凍原狼(ツンドラウルフ)のリュフだ。


「Vruuuuuaaaaaaaaaa!」

「Gawooooooooooooon!」


 コラン村入口の正面にある広場へ降り立つと、嬉しそうに駆け寄ってきて二匹とも大人しくお座りしている。

 大変お行儀は良いが、二匹とも地面に滴る勢いで涎を垂らしている。


 あ、はい。

 コラン村を守ってくれたご褒美にお饅頭をあげようね。

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