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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
8章 ロマン輝くエリステイル

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241話:ゆるキャラと吸血鬼と超能力者

 主要メンバーであるトロールが全滅したため(ティアネは除く)、〈トリストラム〉は解体された。

 再び空白地帯となった古戦場跡の西側地域は、〈冬東協会〉、〈ノーザンナイツ〉、〈シュド連盟〉が共同で管理するそうだ。


 個人的には〈ニュートリストラム〉として復活して欲しかったが……平和とはかけ離れたトラブルに見舞われそうだからやめておいたほうがいいか。

 地獄の門が開いてしまいそうだ。


 マルズの〈空虚神の加護〉で造られた空間から溢れた戦利品は、古戦場跡の住民が残らず持ち去ってしまった。

 ガルーダの突風で吹き飛ばされたので壊れてがらくた同然のものもあるはずだが、ここはスラム街なのでそれでも利用価値は十分にあるのだろう。

 無理して先にレキの同胞たちを回収しておいたのは正解だったな。


 またクローグたちは街の商人を呼びつけていたようで、昨晩は不審な馬車が目撃されていた。


「兎形族の毛皮を買い取りつつ、トロールたちには特注の武具を売る予定だったようだ」


「特注?ああ、トロールたちは体が大きいからな」


「毛皮は手に入らないし、特注品を売る相手はもう居ないしで大損だな」


 古戦場跡の住人としては街の商人は目の敵みたいなものなのだろう。

 〈冬東協会〉の幹部オズワルドがざまあみろといった感じで嬉しそうにしている。


「それでトウジ殿たちは騎馬族の村へ向かうのか?」


「ああ。子供たちを送り届けて、危機が去ったことも伝えないとな。それでリリンたちも本当についてくる気なのか?」


「当たり前じゃない。なんのためにちゃんと約束は守ってもらうわよ」


 約束というのはゆるキャラがリリンとティアネの仲間になるというものだ。

 仲間といっても闇の眷属や邪人の味方になれというわけではなく、むしろリリンたちが外様の神の先兵を辞めて、創造神の子らとは中立の立場を取っている。


 リリンとティアネは外様の神の先兵にしては珍しく好戦的ではない。

 ゆるキャラ的には闇森人のルリムやアナ、グレムリンの例があるのでさほど珍しく感じなかったのだが、一般的にはアトルランに進行している大半の先兵がクローグたちのような邪悪な連中だそうだ。


「兎形族や騎馬族にとって君らは仇そのものなわけだし、どうやって説明すればいいんだよ」

「それも含めてなんとかしてよ。役目でしょ」


 ぐぬぬ……ハチミツはやらんぞ。


 リリンたちの協力がなければゆるキャラも死んでいたかもしれないし、兎形族の子供二人も無事だったかどうか。

 仕方ないから移動しながら考えるとしよう。


 まずは騎馬族の村を目指すのだが、雪山を越える雪中行軍となる。

 メンバーはゆるキャラとユキヨ、ニール先輩にリリンとティアネ、そして兎形族の子供二人だ。


 結構過酷な道のりなのだが、皆さん健脚でいらっしゃる。

 いや、真面目に地に足を付けて健脚を酷使しているのはゆるキャラとティアネくらいだった。


 リリンは自身の黒い翼を変形させた日傘を差しながら、宙に浮かんでついてくる。

 古戦場跡から出て雪原へ辿り着くと、地面に積もった雪の照り返しが眩しかった。


「思いっきり太陽光が雪で反射してると思うんだが、吸血鬼的に大丈夫なのか?」

「大丈夫よ」


 黒い日傘の下から顔を覗かせたリリンは、いつの間にかサングラスをしていた。


「いや、眩しいかどうかじゃなくてだな」

「私は他の吸血鬼と違って直射日光を受けても灰になったりはしないわよ。弱点には違いないからこうやって日傘を差しているけれど」


「他の吸血鬼とは違う?まるでどっかの真祖みたいだな」

「……貴方の知識って基本的に見当違いだけど、たまに核心を突くのよね」


 そりゃあゲームや小説、映画にアニメといった様々な作品に出てくる吸血鬼の設定を適当に連想しているだけなので、見当違いにもなるさ。

 真祖とやらについて詳しく聞いてみたかったが、それ以上のことははぐらかされてしまう。

 自然界がバランス調整のために生み出した生命体かどうかは分からずじまいだ。


 なにやら楽しそうな声が聞こえたので振り向くと、ニールの両肩にのった兎形族の子供たちがきゃっきゃと喜んでいた。

 ニールは雪原の上をまるでアイススケートをしているかのように滑っていて、しかもメダリストに負けず劣らないすごい技を披露している。


 三回転(トリプル)フリップ+一回転(シングル)ループ+三回転(トリプル)サルコウのジャンプ・コンビネーション……かどうかはゆるキャラに専門知識がないので分からないが、それはもう景気良くぐるんぐるんと回っていた。


 衣装がまたひらひら舞うローブと長い黒髪なので、本物のスケーターのように映えている。

 氷上でもなければスケート靴を履いてもいないのにニールはすいすい進むし、肩に乗った子供たちが遠心力で吹っ飛ぶこともない。


 すべて【念動】の制御によるものだ。


 兎形族の子供たちはニールの両肩に固定されているので、さながら遊園地のコーヒーカップ(高速)に乗っているかのよう。

 あれで喜ばない子供がいるだろうか?いやいない。


「すっかり仲良くなったようで」


 休憩時にハスカップジュースを渡す際、つい刺々しい口調になってしまう。

 久しぶりにゆるキャラとしての矜持が傷付けられた気分になったのだ。

 この思考がいわゆる着ぐるみの中の人(スーツアクター)としてのものなのか、〈コラン君〉意識に引っ張られたものなのかは自分でもわからない。


「あー、ちょっと()()をしたからな」


「ずる?」


「【精神感応(テレパシー)】を使ったんだ。俺……私に害意が無いことをこの子らの精神に直接伝達したから、信じて心を開いてくれたのさ」


 ふむふむ、なるほど、【精神感応】ね……。


「えっ?そんなこともできるのか?【念動】だけじゃなくて」

「そりゃあできるだろう。超能力者なんだから」


 当たり前なことで何で驚いているんだ?という表情でニールが首を傾げる。

 いやいや普通は一人一系統でしょうよ、そういうのは。

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