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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
7章 E.L.E

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201話:ゆるキャラと堕星

【6章のあらすじ】

・来客は樹海から来たイレーヌ、王国からは〈混沌教〉のリリエルと冒険者のシナンやアレスたち、アネアド村のリエスタ姉弟、そして帝都のブライト伯爵たちだった

・大宴会を一人抜け出し外にでると、〈影の狩人〉の弟子フレックに襲われたのでとっちめる。彼はデクシィ侯爵の使いらしい

・クラン〈混沌の語り手〉結成。クルールの兄マリウスの戦場で戦えないトラウマ解消法を考える

・迷宮十一層の白霧街の守護者〈白霧夜叉〉を撃破。その中身である〈寛容と曖昧の女神〉の残滓が同行することに

・ヨルドラン帝国の第二皇女エルメア襲来。求婚されたが謹んでお断りする

・〈試練教〉の過激派が邪神崇拝をしていると聞いて、〈嘆きの塔〉に乗り込む。〈混沌教〉の信者モエと出会う

・外様の神〈黒茨卿〉の顕現を目論んでいた邪教〈茨棘教団〉の長ラウグスト撃破。顕現の要となる外様の神の残骸を押収

・残骸は四次元頬袋内に隔離していたが、突如暴走。死にかけたところを〈混沌の女神〉に助けられたが…

 夜明け前の大地を明るく照らしたのは、一筋の流星であった。

 白銀の大地を橙に染めながら流星が堕ちると、轟音と高熱を周囲に撒き散らす。


 大気圏を貫いて尚健在の運動エネルギーは地面に巨大なクレーターを作り、降り積もり固まっていた根雪を根こそぎ吹き飛ばし蒸発させた。

 一瞬で蒸発した雪が靄となって漂う中、クレーターの中心地には異形の亜人の姿がある。


 エゾモモンガとオジロワシを掛け合わせた、北海道胡蘭市のゆるキャラ〈コラン君〉だ。

 スーパーヒーローのように片膝をついた状態で着地していて、ゆっくりと立ち上がってから……べちゃりとその場にうつ伏せに倒れ込んだ。


「はあ……」


 でかいため息をついてからごろんと転がり仰向けになる。

 視界一杯の黎明に近づく夜空は明るくなり始めていて、煌々と輝く星々は次第に消えてなくなるだろう。


「ほあ………」


 駄目だ、ため息しか出ない。

 生身での大気圏突入は中々に楽しかった。


 猫の力のおかげか、真空にも熱にも影響を受けることなく神無き大陸に着陸。

 テーマパークのアトラクションみたいなノリだ。

 自力での大気圏突入とか、気分は連邦の白い悪魔である。


 なんて現実逃避している場合ではない。

 これまでの冒険を振り返ろう。


 トラックに轢かれて死んだ益子藤治は、その原因となった猫こと〈混沌の女神〉によってアトルランという異世界に〈コラン君〉の姿で転生した。

 転生先のリージスの樹海で妖精族のフィンや竜族のシンクと出会い、再び〈混沌の女神〉に会って人間に戻る方法を聞くための旅に出る。


 旅先のレヴァニア王国でいくつかの出会いと別れを経た後、邪人のルリムとアナが仲間に加わった。

 次に向かったヨルドラン帝国ではシャウツ男爵家令嬢のクルールと知り合ったり、第一位階冒険者〈国拳〉オグトと一戦交えたりもした。


 帝国内にある〈残響する凱歌の迷宮〉にシンクの探している姉たちの手がかりがあると分かり、集まった仲間たちと共にクランを結成し迷宮攻略に挑む。


 十一層で〈寛容と曖昧の女神〉の残滓であるサシャが仲間になり、隠されていた転移装置は〈嘆きの塔〉に繋がっていることが判明した。

 塔では〈試練教〉の宗派〈茨棘教団〉が外様の神の復活を目論んでいたが、それを阻止。

 復活の要である茨の塊を四次元頬袋に封印したまでは良かったのだが……。


 外界と遮断して巨大化もしていなかったのだが、迷宮探索を再開して十一層に戻った途端、茨の塊が暴走する。 

 勝手に口から飛び出し人型になって襲ってきた。


 シンクを庇って胸元を茨の針で貫かれたゆるキャラはセーフモードとやらを発動。

 中の人の意識は無かったが、自動操縦で動く〈コラン君〉が外様の神をボコボコにしたらしい。

 その後駆け付けた猫にゆるキャラは回収、治療されてから第五大陸に落とされて現在に至る。


 外様の神の脅威を退けられたのは良かったが、それ以外は未解決のまま皆と離れ離れになってしまった。

 クルールの兄マリウスのトラウマ克服作戦が途中だし、〈茨棘教団〉の悪事も調査中で、迷宮探索もまだ下層に入ってすらいない。

 ただ迷宮探索についてはもう不要か。


 シンクの姉たちは十中八九ゆるキャラと同様に神に認められ月に至り、この神無き大陸に飛ばされたのだ。

 シンクの姉が同行している先輩異邦人のニールという人は、竜族の吐息をも跳ね返す〈魔法使い〉らしいので余裕で認められるだろう。


 それに彼らは迷宮に潜り行方不明になった後、通過したはずのレヴァニア王国内で目撃されている。

 これは神無き大陸に飛ばされた後、飛んで戻ってきたからだと考えれば辻褄が合う。

 残念ながら神無き大陸の位置をゆるキャラは知らないので、位置によっては成立しない予想ではあるが合っている気がする。


 猫と再会して色々と理解が深まったのは良いが、まだまだ足りないというか現状は問題ばかりだ。


 まずゆるキャラが猫に拉致された時の状況が分からない。

 フィンやシンクたちはゆるキャラが無事だということを知っているのだろうか?


 もしゆるキャラと茨の塊が目の前から忽然と姿を消しただけなら、現場は大混乱ではなかろうか。

 あの猫のことだから、その辺のフォローは期待できない。

 皆の心境を想像すると心が苦しい……。


 猫への最後の質問、失敗したかなあ。

 急だったから慌ててしまった。

 てかお茶会が余計なんだよ。


 次に今の状況だ。

 猫曰く世界中にある迷宮の一部は強者をここ、神無き大陸に送り込むシステムになっているそうだ。

 確かこの大陸カンナウルトルム(呼び方がたくさんあるね)は創造神のミスで守護神が不在なため、魔獣や外様の神の尖兵である〈闇の眷属(ミディアン)〉や邪人が蔓延る無法地帯となっている。


 それらを駆逐するために強者を選別して送り込むのは分かるが、雑過ぎないか?

 周囲を見渡す限り雪原が続いていて、人の気配どころか人工物が見当たらない。

 具体的にこの大陸で何をしろと言うのか。

 適当にメテオされても「いいですとも」とはならないぞ。


 元々ゆるキャラはこの世界での使命を与えられていない。

 猫のうっかりで死んでしまった詫びに転生させられただけなので、スローライフしてても良いのだ。

 個人目標として人間に戻りたいというのはあるが。


 猫もゆるキャラの救命目的で月に至らせたみたいだしな。

 去り際にカンナウルトルムで頑張れ、って言っていたように聞こえたが無視だ、無視。

 というわけでゆるキャラの今後の方針はこうだ。


「よし、帰るぞ」


 どこにだって?そんなことはもちろん決まっている。

*誤字報告ありがとうございます*

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