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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
6章 O・M・G

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172話:ゆるキャラと登山隊

 マリスとシナンの三人でラーナムの冒険者ギルドへ向かう。

 道中の雑談の中でシナンは何か聞きたそうにこちらを見ていたが、結局核心の話題に触れることはなかった。


 彼と初めて会った時はもっとふてぶてしいというか、言いたいことはずばずば言うタイプかと思ったがそうでもないようだ。

 ゆるキャラへというよりは、マリスに気を使っている様子が伺える。


 リリエルを含めてハーレムパーティーでの長旅だったはずだが、約得という雰囲気でもない。

 あれか、看護クラス唯一の男子みたいな立場だったのだろうか。


 男として見られていない上に、女性ばかりなので居心地が悪いみたいな。

 まあゆるキャラの中の人は男女比が半々の普通校だったので、想像で勝手に言っているだけなのだが。


「おーいマリス。こっちこっち」


 冒険者ギルドに到着早々、ドラミアーデがこちらを見つけて声をかけてくる。

 呼ばれた方に行ってみれば、打ち合わせ用の広いテーブル席には彼女以外にもアレスたちパーティーメンバー、そしてリエスタ&ライナードの双子の姉弟が座っていた。


 おお、知り合いの冒険者たちが揃っているな。

 ゆるキャラ的にも話が進めやすくて助かる。


「お、来たね。トウジは私の横に座って、ほらほら」


 リエスタに促されるまま座ると、彼女は流れるような動きでゆるキャラに抱き付いて、灰褐色の毛皮に顔をうずめた。

 そしてそのまま喋り出す。


「えーそれでは第二回〈混沌会議〉を始めます。くんかくんか」

「ん?何だその会議は。てか二回目?あと当たり前のように匂いを嗅ぐをやめてくれ」

「はっ、匂い……その手がありましたか」


 マリスもしまったみたいな顔をしてにじり寄らないでくれ。

 君はさっき散々ゆるキャラを弄んだから十分だろうに。


「ちょっと第一回は昨晩やったじゃないの。主催者がすぐに忘れてどうするのよ」

「いや、開催も主催も心当たりが無いのだが!?」


 昨晩ということは十中八九、宴会のことを指して第一回と言っているのだろう。

 ただの宴会を適当に名付けているだけなら良いのだが……。


「前回同様で議長はトウジ、司会進行はリエスタでお送りするよー。さて今日の議題はクランの名前決めと、各パーティーメンバーの構成を決めていきまっしょい」

「うんちょっと待とうか。やっぱり何の話だか分からん」


「えーしょうがないなあ。なら説明してあげよう。うちの弟が」

「トウジさん、実はですね」


 相変わらず気弱そうに巨体を縮こまらせたライナードの説明で、ようやく昨晩の事の顛末を理解することができた。

 昨晩の宴会が初対面だった組み合わせもあったが、酒が入るとあっさり意気投合。

 全員で仲良く宴会を楽しんでいた。


 冒険者らしく自然とこの街の名物〈残響する凱歌の迷宮〉の話題になり、リエスタとライナードの双子は異邦人のニール先輩を探すために迷宮に潜るつもりだと皆に説明する。


 アレスたちは双子の案内目的でラーナムに訪れたが、折角来たんだしうちらも迷宮に潜るかという話になった。

 シナンたちはリリエルの護衛で来たわけだが、それならうちらも……となり全員が迷宮に挑むことが昨晩の宴会で決定していたのだ。


 もちろんゆるキャラはそんなことを一言も聞いていない。

 何故なら酒豪イレーヌに果敢に挑んだリリエルを介抱していたからだ。


 そういえばリエスタに「というわけでこれからもよろしくね!」みたいな事を言われた気がする。

 その時は介抱に忙しくて適当に相槌を打ったわけだが、まさかそんな話になっていたとは。

 飲み会の席で(冒険者の)仕事の予定を決めるとか、飲みニケーションここに極まれり。


「それで全員が迷宮に入るなら、クランを作ろうという話になったんです」


 クランとは複数のパーティーをとりまとめた集団のことだ。

 ファンタジー用語としてはギルドと混同されがちだが、少なくともこのアトルランにおいてはギルドのほうが圧倒的に大規模の組織であった。


「あー、ごめん。昨晩そんな話になっているなんて知らなかったんだ」

「今更やめるなんて言っても遅いんだからね!」


 抱きついたままリエスタがゆるキャラに顔を近づけて凄む。

 リエスタとライナードは亡国の王族の血筋である。

 王族貴族というのは見目麗しい連中が多く、双子も類に漏れない。

 鼻と鼻がくっつきそうな距離まで金髪碧眼の美少女の顔が迫り、堪らず仰け反ってしまう。


「いや、しかしだな……」

「クランがあると便利だよ。複数パーティーで迷宮に挑戦できるから攻略しやすいもの」


 リエスタ曰くクランで迷宮に挑めば、戦闘面以外にも案内役や荷物持ちといった役割分担でお互いの負担を軽減できるそうだ。

 単純に人数が多い分魔獣への対処も楽になるし、相手に合わせて相性の良いパーティーをぶつけることもできる。


 イメージとしては世界最高峰の高山に挑む登山隊だろうか。

 極端な話、単独登頂よりも人数がいればいるだけ楽になるのは確かかも。


 うーん、しかし何かと隠し事が多いゆるキャラたちだ。

 出来れば少数精鋭のほうが……いや、周囲を身内で固められるならそのほうが隠しやすいのか?


 深層に挑むならデクシィ侯爵家が派遣した、金冠の第二位階冒険者フレックのパーティー帯同が必須なわけだが、彼には色々と知られたくないことがある。

 例えばフレックをクランの別パーティーに押し込んで秘密から遠ざける、という手も使えるかもしれない。


「ねーねーだからクラン作ろう?クランの世話はうちの弟がちゃんとするからさー」


 野良猫を飼いたいみたいなノリで、猫なで声のリエスタがゆるキャラに迫ってくる。

 ええい、エゾモモンガの耳に息を吹きかけるんじゃあない、甘噛みもするな。

 あと弟君が「えっ、聞いてないよ!」って驚いているぞ。

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