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ゆるキャラ転生  作者: 忌野希和
5章 ハック&スラッシュ&サーチ&デストロイ

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160話:ゆるキャラと紅白ハニー

 圧倒的な輝きがその場を支配する。

 体を覆う赤いマフラーを翻して四次元頬袋から吐き出したのは、一辺が十五メートル程ある黄金の建造物、金閣(仮称)だ。


 〈残響する凱歌の迷宮〉六層の疑似太陽に照らされ、直視が出来ないくらい眩しい。

 金閣はゆるキャラの口元から萎んだ状態で出てきたが、風船が膨らむように一瞬で元の大きさになり蝙蝠竜の頭上に展開される。


 この金閣もリージスの樹海にあるシンクの実家から頂戴したものだ。

 仮称の通り金閣に似た建造物なのだが、大きさも材質も地球のそれを上回る。


 なんてったって全てが純金製だ。

 地球基準だと考えたくもない恐ろしい価値になりそうだが、こちらの世界の金の価値はどれほどなのだろうか。

 本物の錬金術もあれば魔銀(ミスリル)とかいう上位互換の金属もあるし、地球程ではない……と思っておこう。


 ノンオイルでからっと揚がったと思っていたゆるキャラが生きていただけでなく、頭上ゼロ距離に巨大質量が出現してさぞ慌てている、はずだ。

 なんせ金閣を自身の真下に展開したので蝙蝠竜の姿は一切見えない。

 あとは金閣の自由落下に任せるのみ。


 そういえば金って柔らかいんだっけかと今更ながらに思い出したが、金閣は持ち前の質量を生かして周囲の木々を押し潰しながら落ちていく。

 底がボコボコになるかもしれないが、質量兵器として機能するならそれでいい。


 金閣が地面に着陸。

 蝙蝠竜が転倒した時よりも大きな地揺れと共に土煙が巻き上がる。


 森林にそびえ立つ金閣の上空を滑空して、その麓に降り立つ。

 土煙が収まるとそこには、下半身を金閣に押し潰された蝙蝠竜の姿があった。


 金の柔らかさもあって完全に押し潰れているわけではないようだが、抜け出せるほど余裕もなさそうだ。


「結構ギリギリだったな。あのタイミングでそこまで逃げれるのか」

「トージ!大丈夫?」


 戦闘が終わったのを見計らってフィンがこちらに飛んでくる。

 ルリムたちがいる付近では、何故かシンクが竜に戻っていてこちらに向かって開けていた口を閉じたところだった。


 ああ、ゆるキャラを助けようと吐息(ブレス)を身構えてくれていたのか。

 シンクの吐息は熱線(ビーム)なので、ゆるキャラが直撃すれば唐揚げどころか消し炭になる。


 かつて樹海の空でワイバーンが熱線の餌食になったのを思い出す。

 もちろん今狙っているのはゆるキャラではなく蝙蝠竜であり、吐息が放たれていれば周囲の森諸共焼き払っていただろう。

 それに比べれば金閣による森林破壊なんてたかが知れていたな。


「Kyowaaaaaaaaaaa (ま、参った。参ったからこれをどけてくれないか。このままでは子孫が作れなくなるっ)」


「うちの娘(みたいな存在)に卑猥な言葉を浴びせて追いかけた挙句、俺を焼いて食おうとしたくせに許されると思っているのか?」


「Kyuiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii (ごめん、ごめんなさい。もうしないから許して~)」


 ええ……めっちゃ泣いてるんだけど。

 地面に横たわっている蝙蝠竜の赤い目から、とめどなく涙が溢れている。

 体が大きければ目も大きいので、水道の蛇口を全開にしたかのような水量だ。


「ねえトウジ。わたしは大丈夫だからトウジがいいなら許してあげて。それにもし暴れても、今度こそわたしがとっちめるから」

「俺はいいけど、いいのか?」


 再び《人化》してやってきたシンクが蝙蝠竜の助命を嘆願してきた。

 ルリムたちは遠巻きにこちらの様子を伺っているが近付いてくる様子はない。


「さっき追いかけられてた時に気になることをいってたから、確認したい」

「ふむ……自由にしてやるけど暴れるなよ」


 ゆるキャラが金閣を四次元頬袋に回収すると、元の厚みの半分ほどにまで潰れ、血まみれの蝙蝠竜の下半身が露わになった。

 重量的には圧殺も十分可能であったようだが、一緒に潰した木々の残骸が邪魔をして難を逃れたか。


 体半分が潰れてるだけあって蝙蝠竜は暴れる元気もないようだ。

 地面にだらりと体を預けて、半開きの口から漏れる呼吸は荒い。

 というかこのままだと死んでしまいそうなので、更に情けをかけてやる。


「治してやるけど暴れるなよ」


 〈ハスカップ羊羹(一本)〉を口に放り込んでやると、みるみるうちに下半身が再生した。

 潰れていた筋肉が再隆起し、半分閉じかけていた目がくわっと見開かれる。


「Kyuooooooooooooooo!(ふおおおおおおお!死の淵から見事生還。ありがとう、ハニーの保護者殿)」

「シンクのことをハニーと呼ぶな。あと《人化》できないのか?咆哮が頭に響くんだよ」

「Kyauuuuuuuuuuuuun (僕は亜竜だからね。ハニ……竜族のシンク嬢のようにはいかないさ)」


 亜竜と竜族は別種族だ。

 両者の間には蜥蜴と竜、猿と人くらい大きな種族としての隔たりがあり、同列に扱うのは乱暴で失礼な行為である。


 ただし亜竜が絶対に竜族になれないかと言われれば、そうではない。

 稀にだが亜竜は長い年月を生きて力を蓄えると、竜族に進化することがあった。

 猫が長生きすると妖怪の猫又になって人に化けられるようになる、みたいなものだろうか。


 レヴァニア王国の守護竜グラボ少年も生まれは吸血竜という亜竜だったが〈混沌の女神〉の力により竜族へ進化。

 竜族としての強さと《人化》を手に入れていた。


 ゆるキャラの勘ではあったが、種族基準で鑑みても強さは「シンク >>>>>> グラボ少年 >> 蝙蝠竜」という予想で正解だったわけだ。


「なら仕方ないからこのまま話を聞こう。さっき気になること言っていたと聞いたけど、具体的にはなんなんだ?」


「ん、わたしを追いかけてた時に『これを逃したら次はもうない』とか『白いハニーの時のように失敗しない』とか言ってた」


 ん?白いハニーって、もしかして……。


「Kyowaaaaaaaaaaaa?(あれ、君たちハクア嬢の知り合いかい?」

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