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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
30.北の採石場

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「あれは想定外ですよね?」

「…」

 馬車が激しく揺られつつ北の採石場に近づいていく間、誰もがシャルンの話を聞きたがった。

 レダンとガストは戸口に控えて、見かけは薄汚い、その実シャルンのために命を捧げる覚悟の男達にあれやこれやと尋ねられては答えているシャルンを横目に座っている。

「あれは嫉妬ですよね?」

「うるさいぞ」

 ガストがにやにや笑いながら尋ねてくるのに唸る。

「嫉妬して何が悪い」

「決断も段取りも巧みでしたね」

 むっとしているレダンに、ガストはなおも笑みを広げる。

「…これだけ動けるのに、なぜシャルン1人に責務を負わせたんだ」

「……王族ですからね」

 ガストが小さく溜息をつく。

「彼らは何と言っても王の配下、欺かれているにせよ、『お前は間抜けだ』と王に伝えるのには勇気がいったんでしょう」

「お前はいつも伝えてくるがな」

「カースウェルはそういうところは風通しがいいですからね」

 あなたは罵倒されることを拒まない。

「好んではいないぞ」

「楽しんでるなら、それはそれで人が悪いでしょう」

 あなたは、あなたが気に入らない情報があるとは周囲に知らせない。

「…」

 ちらりとレダンはガストを見やる。

「無意識ならば大したものだが、意識的だから性格が悪いですよね」

 満面の笑みを返してくる相手に、これ見よがしに吐息する。

「そう教えただろうが」

 情報は情報でしかない。好き嫌いを伝えていては、必要な情報も消されてしまう。

「王は全ての情報に興味があると触れておけ、と」

「街角の野菜の値動きから、新しく考案された薬の使い方まで」

 歌うように続けたガストは、目を細める。

「けれど、それらを処理できるのはあなただからです」

「俺1人では無理だ」

 それぐらいはわかっている。

「適切に行える人間に任せる」

「でも、あなたはその責任を取る気でいる」

「当然だ」

 レダンは肩を竦める。

「俺の指示に従ったものは俺の手足だ。手足が行ったことは俺の責任だ」

「……手を切り落とそうとされましたね」

「…懐かしい話だな」

「私の落ち度でした」

「指示したのは俺だ」

 ガストが口を噤む。

「あの時は俺がお前を買い被りすぎただけだ」

「むかつきますね」

「その後、十分な成果を挙げた。俺の目はどこまでいっても節穴だった」

 しばらくがたごとと馬車が揺れ続ける。

「…シャルン妃をどうされるおつもりですか」

「離縁する」

 レダンの答えにガストが一瞬息を呑んだ。

「…他の方法は」

「ない」

 十分に考えた。

「彼女もそう望んでいる」

「…らしくないですよ」

「シャルンには勝てない。それに」

 レダンはまだ一所懸命にこれまでの経験を話し続けているシャルンに目をやる。

 短い髪に頬を明るく上気させ、汚れた馬車と男達の中にあって、淡い瞳が煌めいている。

「あれは暁の星だ」

「はい?」

「星は人の手に入らない」

「らしくない」

「もう1つ理由がある」

「はい?」

「髪を、切らせた」

「…」

「俺もまた、彼女を傷つけた」

「………」

「次は正当な立場で、彼女を手に入れる」

 ガストが嬉しそうに笑った。

「ほっとしました。それでこそ、カースウェルのケダモノです」

「褒めるな」

 レダンは苦笑した。


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