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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
28.『水晶亭』の主人

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4

「実は、この子はハイオルトの出身だ」

「ほう」

 興味深くバラディオスはシャルンを眺める。

「酷い傷だな」

「大火事で家族共々焼けただれた……と聞いていたが」

 レダンは声を潜めた。

「本当の所はもっと話が複雑でな、盗賊団が村を荒らし、両親を連れ去り、この子の残る家に火をつけたらしい。その後の調べで両親は北の採石場に送られたと聞いた」

「…なんてことだ」

 一瞬口を噤んだバラディオスは唸った。

「シャルテの火事か? それともベーツの人攫いか」

 レダンは素早くガストを見やり、ガストが微かに頷き返す。

「心当たりがあるか」

「……残念ながら、な」

 忌々しそうにバラディオスは眉を寄せる。

「王が城に籠られがちなのをいいことに、好き放題しているらしい。採石場にも次々人を送り込んでいると聞くが、枯渇しかけたミディルン鉱石に人手などいるものか。不興を買った者を牢屋がわりに送り込んでいるとも聞く」

 ソルドもそう言う一味に攫われかけたのを俺が保護した。

「この国は、遠からず滅びるぞ」

 不吉な予言と思った以上の惨状に、シャルンは固くこぶしを握り締める。それに気づいたのだろう、バラディオスが視線を和らげ、

「ソルド、この子に何か飲み物を」

「はい」

「……そう怯えるな」

 赤髪の少女がすぐさま立ち去るのに、バラディオスは優しくシャルンに微笑みかけた。

「いっそこんな国は滅びてしまえばいいのかも知れない。お前のように国外へ逃げて、ステルンやダスカス、いやシャルン様の嫁がれたカースウェルへ行った方が幸せかも知れないぞ?」

「でも…」

 シャルンは思わず口を開く。

「ハイオルトの……人々が…」

「なんとか生きていくさ、俺のように」

 苦しげな笑みが広がる。

「国が無くなっても、飯は食わなくちゃならんし、生きていかなくちゃならんのだから、なんとかするさ、それぞれに。第一、ハイオルトはもう、とっくの昔に国民を見捨ててるだろ?」

「っ」

「唯一、国民のためにと何度も何度も輿入れをされたシャルン姫さえ、もうこの国にはいないんだ。見送りさえ禁じられたが、あの方だけは幸せになって欲しいと祈ってる」

「わ、たし、は」

 見捨ててなぞいない。

 そう叫びたかったが、寸前強く肩を抱かれて、シャルンは思い止まった。

「それでも、この子は両親に会いたいらしい」

 非情にも聞こえるほどの静かな声で、レダンは続ける。

「北の採石場に連れて行ってやりたい」

「……」

 バラディオスはしばらく考え込んでいた。

 飲み物を持ってソルドが戻ってくる。硬く強張った顔に何とか笑みを浮かべて、シャルンはコップに注がれた甘い水を飲んだ。

「…美味しい……ありがとう、ございます」

 ソルドが一瞬目を見開き、やがて少しずつ赤くなる。俯いて小さな声で呟いた。

「どう、いたし、まして」

 こんな少女が攫われて。

 シャルンは唇を噛み締める。

 止めなくては。

 何としてでも、今ハイオルトで行われている非道を止めさせなくては。

 やがて、バラディオスは何かを決心したように、シャルンを凝視した。

「わかった」

 一息つく。

「マイン伯に繋ぎをつけよう」

 だが、その為には少々危ない橋も渡らなくちゃならない。

「今の宿屋を引き払い、この2階へ宿を移せ」

「2階へ?」

 ガストが思わず確認する。それでは丸々『敵』の手の中に包み込まれてしまうのではないか、そう言う不安を浮かべてレダンを見たが、レダンはあっさり頷いた。

「有難い。そうさせて頂こう。俺の名はラグン。これは友人のグスト。従者のサールだ。改めてよろしく頼む」

「任せておいてくれ」

 バラディオスは朗らかな笑みに戻った。

「ただし数日時間が欲しい。その間、旅の疲れを癒し、ゆっくりしていてくれ」

 

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