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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
28.『水晶亭』の主人

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 夜になり、レダンとシャルンが泊まった宿にガストが疲れ切って戻ってきた。

「強行軍でしたねえ」

 溜め息をつきつつ、衝立の向こうで、宿の者に申しつけた水で汚れを落としにかかる。

「首尾は」

「悪くないと思いますよ」

 じゃぶじゃぶと布を濯ぐ音、ごしごし体を擦る音の合間に、返答がある。

「マイン伯はなかなか切れ者ですね、こちらの接触を予想していたみたいな振る舞いです。門のところに手の者がいたのか」

「ふん」

 レダンは部屋に運ばせたパンを噛み締めながら頷く。シャルンがテーブルに落としたパン屑に気づき、止める間もなく拾って口に入れ、慌てる彼女ににこりと笑った。

「陛下、そんなお行儀の悪い」

「あなたが落としたものなら、床に落ちても食べるよ」

「っ」

 シャルンが今度は落とすまいと必死になるのを、レダンは笑顔で見守っている。

「ユルク伯、ティルト伯とはお会いする算段をつけました」

「俺が必要なら出向くぞ」

「そうですね…」

 考え込んだのか、しばらくガストの声が途切れる。

「…まあいずれ」

 衝立が退けられると、打って変わってすっきりした顔のガストが現れた。頭に見知らぬ薄緑色の布を巻いていて、普段見慣れないだけに違和感がある。

「お出まし願うかもしれませんが、今はまだいいです。それより」

 ちらりとシャルンの方を見た。

「一杯やりに行きませんか」

「……会えそうなのか」

「今夜は来る予定だそうです」

「挨拶に出向くか」

 レダンがシャルンを振り返る。物問いたげな視線に、

「如何されましたか?」

「酒場に出かけます。怖いならば、ここで待つこともできますが」

「参ります」

 シャルンは急いで残りのパンを飲み込み、コップの水で飲み下した。

「どなたが来られるのですか」

「昼間見た市場を仕切っている男ですよ」

 ガストが教えてくれた。

「『水晶亭』と言う酒場をやっています。ちょっと用がありまして」

 ただ、奥方様には少々怖いかもしれません。

「…危険な場所なのですか」

 不安になって尋ねるシャルンに、レダンは笑って見せる。

「大丈夫です。あなたには指一本触れさせない」

「ほどほどにお願いしますよ」

 ガストが引きつった。

「大事な相手なんですからね」

「シャルンに手を出すなら別だ」

「あの」

 シャルンは急いで身支度しながら口を挟んだ。

「大丈夫です、私大人しくして、へ、ラグン様にご迷惑をおかけしませんから」

「ですって、ラグン様」

 レダンが残念そうに舌打ちした。


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