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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
23.シャルンの決意

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2

「…美味しゅうございます」

「そうか、よかった」

 ちゅ、とレダンは髪にキスした。そのまま、

「俺は失ってしまうのかな」

 不安げに響いた声に首を振る。

「私は、変わりません」

 未来永劫、あなたの妻です。

「けれど、あなたは離れていこうとしている」

 ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返し、ほう、と吐息を零して離れ、レダンはもう一匙肉を掬う。

「しっかり食べておかなくてはな…厳しい国に出向くんだから」

「…あーん」

 求めなくとも開いた口にレダンは目を細めた。

「すまない、肉の前に…俺だ」

 苦笑いした唇が口に合わされる。奪うように切なげな、呼吸を乱しつ深く交わされるキスに目を閉じ、シャルンも抱き込まれるのを期待する。かちゃりと皿に置かれた銀器の音、堪え切れないように伸ばされた腕に抱き込まれ、膝に抱え上げられて、キスを繰り返し、やがてそっとレダンの肩に頭を乗せて抱きしめられる。

 ルッカには既に話している。

 ハイオルトにレダンとともに旅人として入り込むこと。その間のカースウェルで、シャルン不在を気づかせないように侍女達で隠し通すこと。

 そして。

「レダン…」

「聞かないと言ったろ」

「でも、ご存知ですよね」

「知っていても知らないふりをすることはできる」

「レダン」

「気づかないとごまかせる」

「レダン」

「あなたがまだ俺のものだと言い抜けられる」

「……」

「けれど、あなたから聞いてしまったら、俺はカースウェル全土にかけて、あなたの願いを聞き届けてしまう」

「…陛下」

「…そこで、そう呼ぶのか」

 苦しそうな声が一瞬泣くように滲んだ。

「カースウェルの、守り手である陛下」

「……俺はあなたの守り手でいたい」

「民があなたを愛しております」

「俺はあなたに愛されているだけでいい」

「……では、おねだりします」

 シャルンは体を起こした。

 諦めたようにレダンが顔を上げ、シャルンを見上げる。ほどいた黒髪が肩に流れ落ち、幼く見えるほど切なげな顔に胸が苦しくなった。

「私を、離縁して下さいませ」

「嫌だ」

 間髪入れずに答えたレダンは足りないと思ったのだろう、激しく首を振った。

「嫌だ」

「お願いです」

「聞かない」

「私をハイオルトに」

「聞こえない」

「ダフラムが目を見開き耳を澄ませ」

「知らぬ」

「アルシアもまたカースウェルを望むとき」

「気づかぬ」

「ハイオルトまでが足枷になってはなりません」

「違う、シャルン、そんなことはありえない」

「それを確かめに参りましょう?」

「…」

 ぐ、とレダンはことばに詰まった。

「私とともにハイオルトに向かって下さいませ。何が真実か、何が偽りか、そうして何をすべきかを、一緒に見極めて下さいませ」

 シャルンはレダンの肩に額を押し付けた。

 『薔薇の大剣』を持ち支えた腕にはまだまだ力が戻らず、痺れが取れない。レダンを抱きしめたくとも、それができない。両手を垂らして凭れかかる自分は、翼をもがれた鳥のようで、レダンの重荷にしかなっていないと痛感する。

「そうして、その後」

 絶対いや。

「正当な理由の元に」

 二度と嫌。

「私を離縁し」

 離れないで。

「ハイオルトに戻し」

 離さないで。

「良き国交の種を頂きとうございます……そして、どうか」

 ぼろぼろと溢れる涙を拭えもしない、愚かで弱いみすぼらしい姫だと嗤うなら嗤え、今こそシャルンはカースウェルの未来を判じる、王妃としての決断ができる。

「由緒正しき、力に溢れた姫を、お迎え頂きますように…心より、お願い、申し上げます」

 ひっく、と引いてしまった声に、レダンが強く抱きしめた。


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