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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
17.悩ましい温泉

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「心配なのですか」

「う」

「そう言う書状を見ると、あなたを信じてくれないかもと?」

「…」

「潜入した者の話では、ハイオルト王は先日ミディルン鉱石の切り出し場を巡視されたほどお元気ですよ」

「シャルンには、切り出し場の視察をさせなかったくせに」

 賢明な彼女のことだ、見て回ればすぐに気づいただろう、鉱石の枯渇などはあり得ないと。頻回に行き交う荷馬車、多くの石工や人夫が忙しく走る岩棚、活気に溢れて交わされる掛け声。

「それだけで、どれほどシャルンは安心したか知れないのに」

 嘘をついた王を窘めただろうが、国の行く末に安堵し、すぐさまミディルン鉱石の売買や配分について検討を始め、調整にかかっただろう。

 ハイオルト王はそれをさせたくなかったのだ。

「まあ断言しますが、ハイオルトに経済援助は必要ありませんね」

 ガストは改めて書類を確認する。

「国内の資本を再調整すれば十分です。けれど、王はそれをする気がないのだから改善は望めないでしょう。抜本的には乗り込んでハイオルト王に退位願うとあっさり済みますか」

「シャルンを呼び寄せているのは、それがらみだよな?」

「おそらくは」

 ガストは頷く。

「奥方様を呼び返し、あれやこれやと帰国を遅らせ、それを理由にあなたに経済援助をねだってくる、そう言う図式でしょう」

「俺はなあ、ガスト」

 レダンは鬱陶しく溜め息をつく。

「シャルンの母上と言うのは、彼女と似ている聡明な女性じゃないかと思うんだ。亡くなったんじゃなくて、ハイオルト王に愛想を尽かして出て行ったか、あるいは」

「…良からぬ企みに巻き込まれたか、ですね?」

「だからシャルンには詳細を伏せられた、か」

 どちらにしてもシャルンが可哀想すぎるだろ。

 吐き捨てたことばにガストが静かに頷いた。


 レダンが何かを考えていると察してくれたのだろう、シャルンは膝の上に座ってくれたまま、楽しげに窓の外を流れる景色を眺めていたが、ふと体を強張らせた。

「どうした?」

「いえ、あの、気のせいかも知れませんが」

 訝しげに窓を見やる。

「今、あの家の外れにハイオルトの兵士が居たような」

「ああ、ここは国境沿いだからな」

 不安そうなシャルンに微笑む。

「時々兵士が巡視しているのだろう」

「そう、ですか」

 シャルンは首を傾げた。

「そう言えば、私、こちらの方には参ったことがありませんでした」

 呟きつつ、なおも考え込む。

「…こんなところまで、兵を動かせるのですか…?」

 レダンは思わず微笑んだ。

「そうだな、城よりかなり離れているな」

「…ほとんど家も建っていません。ハイオルトの国境沿いは十分な資材がなく開発もできず、荒野が

広がるままと聞き及んでいたのですが……兵はどこに駐留しているのでしょう」

 シャルンの目は心配そうに、けれども見たことのない鋭さに輝いている。日差しにきらめきを宿す瞳、結ばれた口元の緊張も、逆に危うい気持ちを引き起こす。

 侵したい。

 その小さな頭の中も感覚も、レダン一人で埋め尽くしてしまいたい。

 そうして不安も心配も感じぬままに、喜びだけで満たしてやりたい。

 まずい。

「…鎧がいるな」

「陛下」

 慌てたようにシャルンが振り向いた。真剣そのものの顔で訴える。

「どうぞご安心ください、ハイオルトは陛下に剣を向けるようなことは致しません、未来永劫、少なくとも私の命が尽きるまでは、いえ」

 きゅと愛らしい唇が強く引き結ばれた。

「何がありましても、私が盾になり陛下を必ずお守りいたします」

「……シャルン」

 堪えきれなくて、レダンはシャルンを強く抱きしめる。

 車内がなんだ、昼間がなんだ、これだけ振動していれば、多少の物音なんか掻き消される。

「へ、いかっ」

「だからさ、鎧がいるんだよ」

 甘く囁いたレダンの唇に、シャルンの抵抗は封じられた。


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