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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
17.悩ましい温泉

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3

「どういうことですか」

「どういうことも何も、その通りだ」

「ステルンはシャルンの輿入れの後、ミディルン鉱石の枯渇を把握していた、と?」

「今となっては、それもシャルンを拒む理由の一つだったことになっているがな」

「しかし」

「確認すれば、ラルハイドもザーシャルも、いまでは知っていると言うだろうな」

 ガストは不愉快そうに唇を歪めた。

「…シャルン妃があれほど知らせるまいと苦心していた情報を?」

「ああ、彼女が確実に『出戻る』ようにだろう」

 レダンは久々にでろりとソファに寝そべりながら唸る。さすがにガストもおやめください、だらしないと窘めない。それほど、この情報にはうんざりする意味が含まれている。

「シャルンが必死に自分で暴露したのに」

 腕の中でレダンを見上げた真摯な淡い瞳。

「しかし」

 ガストはなおも不審を強める。

「ミディルン鉱石は枯渇していません…」

「…だよな」

 ハイオルトに潜入して気づいた点は国の疲弊、みすぼらしい街並み、疲れ切り立ち竦んだ人々。

 けれど同時に微かな微かな違和感もあった。

 確かに、食物が足りていない。資材が足りていない。それらを補う動きがどこにも見当たらない。

 だが、通りを一本違えれば、貧しさに偽装された新しい建物や着飾った人々が存在した。娼婦宿や下町の酒場ではどこからか運び込まれた贅沢品が隠されるように備えられていた。

 北の鉱石の切り出し場に見知らぬ異国者の男二人、もし本当に枯渇しきっているのなら、新たな人手は不要で、監視管理は厳重に行われ、出入り一つも許されないはずだが、レダンとガストは仮雇いまで入り込め、切り出し場は次々と鉱石を運び出し続けていた。

 もっと深くまで潜入した二人の結論は、『ミディルン鉱石は枯渇しているのではなく、供給が偏っており、それを王は正すことができない』だ。

 シャルンの立ち居振る舞いから、ハイオルト王はそれに対して十分な手を打てず、結果ミディルン鉱石は市場では需要が供給を上回った状況となっているとわかる。

 次の問題は、それが王の無能によるものか、意図的なものによるものか、なのだが。

「諸国に情報が流れていたとなると、不快な方だよな」

 よいしょ、とレダンは体を起こし、ばさばさ広がった髪を赤いリボンで括った。

「ハイオルト王は娘御にも真実を知らせていないらしい」

 皮肉な笑みに唇を綻ばせる。

「…ルッカからも聞き取りました。奥方様が『貧しいハイオルト』の姿をあれほどご存知なのは、繰り返し王や王直属の侍従とともに見回ったからだ、と」

「娘にわざわざ悲惨で痛々しい国の状況を視察させ、自分が諸国へ出向くしかないと思わせた」

 自分の声が冷ややかなのを感じる。

「本当は豊かに潤っている人々がいることなど見せもしないで」

 簡単な結論だ。

 ハイオルト王はそれらの人々、もしくは自分の正義を守るために、ミディルン鉱石が枯渇しているために、それらの状況を改善できないのだと言い訳をし続けたのだ。そうして、それで歪む国の財政を、国のためにと言い含ませたシャルンを繰り返し諸国の王の前に晒し続けて、補った。

「俺は好きだぞ」

 にんまりと笑う。

「そう言う、正面からあからさまにぶっ叩いていい状況は」

「既にハイオルトを脅したじゃありませんか」

 ガストの呆れ声に肩を竦める。

「脅したうちに入るか」

 あんたは娘にも諸国の王にも嘘つきだ、と言っただけだ。

「シャルンをよこさないなら、どちらにも真実を伝えるぞと条件を提示しただけだろう?」

 ハイオルト王はそれを呑んだはず。

「なのに、なんだ、この書状は?」

 前回のに続いて、もう一度送られてきた手紙をぺらりと差し上げる。

「私に絡まないで下さい」

「馬鹿なのか、義父殿は? それとも俺がこんなものに応じると思っている間抜けなのか?」

「仮にも義父です」

「シャルンの親だから、この程度の罵倒で済んでる」

 他人ならさっさと始末している。

「いっそ奥方様にお見せになっては」

「病床に伏して身動きままならない、そなたが幸福で居るかを案じている、一目顔を見せにきて欲しい、などと言う図々しい文面を?」

 吐き捨てるようにレダンは唸った。

「暗に俺が邪魔をしていて面会を断り、ハイオルトへの援助も滞らせていると言わんばかりじゃないか」


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