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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
14.光の噴水

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3

「…」

 のろのろと相手が振り返った。

 シャルンの凝視に、嫌々と言った風情で仮面を外す。

 見慣れた紺色の瞳と、目を奪う金色の髪。

「あの、その髪は」

「…染めた」

「……お祭りのためですか?」

「…俺が」

 ふいにレダンが眉をひそめた。立ち竦んだまま、そっと呟く。

「ギースのようなら……受け入れてくれたかと、思って」

 伏せた瞳を上げる。切なげな甘い色に胸が痛んだ。

「バックルのように…奪えば、この手に堕ちてくれるのかな」

 迷った頼りない声。

「陛下……」

「あなたの…望むものに、なりたくて」

 けれど。

「あなたの、望むものが、わからなくて」

「陛下……レダン…」

「俺の知らないあなたも……全部欲しいんだ」

 シャルンは溢れる涙に仮面を剥いだ。遮る全てが煩わしく、少しでも近く、レダンに寄り添いたかった。

 随分ひどい顔だったのだろう、レダンが目を見開く。ためらう間もなく、告白する。

「陛下…私、ケダモノになりたかったのです」

「……」

「あなたを、欲しいまま、貪れる、ケダモノに」

 ごくり、とレダンが唾を飲んだ。

「でも、無理でした」

 シャルンは微笑む。

「私、ケダモノの振る舞いがわかりません」

「シャル」

 何か言いたげに口を開くレダンに一所懸命に笑う。

「どうしたら、あなたを求められるのですか?」

 みっともない顔のはず、涙で汚れて化粧も落ちて、仮面の方がよほど美しいはず、それでも、今持ち合わせるものはこの身一つしかないならば。

 両手を差し伸べ、懇願する。

「私に教えてくださいませ」

 レダンが凍りつく。

 怯むな、と声がする。

 望みのままに、思いのままに、この人の側なら、それができるはず。戦闘の中でも軽々とシャルンを踊らせてくれる、傷つき倒れる敵の間を宮殿の中のように歩ませてくれる、その腕の中なら。

「陛下のケダモノに、喰われとうございます」

「く、そっ」

 レダンが舌打ちしたのはなぜだろう。

 いや、そんな理由も、もはやどうでもよかった。

「シャルン、シャルンっ」

 我慢の限界、そんな顔でレダンがドレスを蹴立てて駆け寄ってくる。重く華麗な衣装のまま、シャルンを強く深く抱き締めて、髪にも額にもそして頬にも所構わずキスを繰り返す。

「…あなたを…壊してしまうかもしれない」

 低い声が呻いた。

「私は強欲な男だから」

「どうぞ、陛下の、思いの、ままに」

 唇を奪われ、息が飲み込まれて、合間にシャルンは必死に応じる。

「私は、あなたの、妃で、ございます」

 短く喘ぐ自分の呼吸にことばが切られていくから、すがりつく腕でも伝えた。

「離さ、ないで…っ」

「わか…ってる」

 俺ももう、あなたから離れられない、許してくれ。

 掠れた誓いに、シャルンは何度も頷いた。

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