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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー2 〜砂糖菓子姫とケダモノ王〜  作者: segakiyui
13.異国の王子

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3

「なぜ…」

「一度破談にして追い返した姫が、カースウェルの王妃になった。皆知りたくなったんじゃないの、あなたの本当の姿をさ」

「本当の、姿…」

「いつまで『出来損ない』の仮面を被ってるつもりなのさ」

 シャルンは喉を締められたような気がした。

「レダンをあたふたさせてるだけでも、私はあなたを気に入ってるけど、あなたが欲しくてなりふり構っていないレダンに、ちょっとばかり失礼だよね」

「私は…」

「あなたから、レダンを欲しいって伝えたの?」

 そっぽを向いて嘯く相手にむっとする。

「…、っ、つ、伝えましたっ」

 いつかの媚薬の一件が蘇ってきて、恥ずかしさで仮面の奥で顔が熱くなる。

「へえどうやって」

「び、媚薬を飲みましたっ」

「…へ?」

 相手はぎょっとしたようにシャルンを覗き込んだ。

「誰が」

「わ、私がっ」

「レダンの前で?」

「レダンの前で」

「…ぶ」

「ぶ?」

「……ぶわっはっはっはっはっ!」

 いきなり相手は爆笑した。

「わはははははは!」

「あの」

「媚薬! すごいね! わははははっ!」

 ひとしきり笑った後、ひいひい言いながら、

「で、どうなったの」

「わかりません…っ」

「わからないって何が」

「私、眠ってしまったみたいで」

「わはははははっ!」

 それはすごいな、いや立派って言うのか、いやそりゃあレダンも手が出せないよなあ、可哀想、いや可哀想すぎる、男としちゃほんと落ち込むよね!

 げらげら笑い続ける相手に、シャルンは泣きそうになった。

「そうです、そんなことわかってます、だから私きっとレダンに嫌われてて、結婚したのもきっと偽装だなんて考えて、ガストのことまで邪推して」

「何を……邪推……したの…」

 息も絶え絶えの相手がなおも確認する。

「陛下はガストをご寵愛になっていると」

「ぎゃははははは!!!!」

 相手はベンチから転がり落ちた。

「そりゃひどいよ、シャルン! あんまりだろうさ、わははははは! あーもう死ぬかも知れない、笑い死にってあったっけ、あるよなきっと、わはははは!」

 のたうちながら笑う相手に、さすがに腹が立った。

「あのですね! 確かに私はいろいろ愚かですけど、だからレダンに嫌われてても仕方ないですけど、でもそれでも陛下には、陛下にだけは、好いていて欲しくって、そう、ずっと、願って…っ」

 声が喉に詰まった。

 ぼろぼろ溢れる涙が仮面の内側を濡らし、顎から滴る。

 仮面なんて意味がなかった。

 ケダモノの仮面を被ったところで、シャルンはやっぱり愛しい相手の気持ち一つ汲み取れないのだ。

「姫樣……姫樣あっ」「奥方様、どちらですか奥方様!」

 聞き慣れた声が響き、シャルンがはっと顔を上げると、建物の端を回り込んできたルッカとベルルが、シャルンを見つけて駆け寄ってきた。

「姫様、こんなところに……一体そなたは何者です!」

「奥方様にご無礼、許しませんよ!」

 近づく2人に、今の今まで笑い転げていた相手がすっと距離を取る。

「めんどくさいのが来たね」

「どこの王かは知りませんが、カースウェルの王妃ですよ、控えなさい!」

「彼女は今宵の私の妻だよ」

「何を失礼な!」

 ベルルが噛みつく。

「奥方様には陛下がおられます!」

「『宵闇祭り』なのだよ、夫と妻が共に居るのは無粋だろう」

「、あなたは…」

 ふいにルッカがはっとしたように目を見開いた。

 気づいたらしい相手が唇にそっと黒手袋で包まれた指を当てる。

「さあ、ではお二方に今夜のお相手をお願いしようかな」

「何を非礼な」

「…ベルル」

 ルッカが声を荒げるベルルに首を振り、黒衣の男が促す方へ顔を向けた。

「参りましょう」

「え、で、でも、奥方様が」

「大丈夫。…奥方様、少しこちらでお休みください。私共はこの方をお送りしたら戻って参ります」

 ルッカがおもむろに切り出して、シャルンは呆気にとられた。がしかし、すぐに首を濡らす雫に気づいて、少し落ち着けと言われているのだと理解する。

「…わかりました。少しここで休みます」

「お飲み物などお持ちしますね」

 不安そうにベルルがルッカを見やりながら頷き、2人はシャルンを振り返り振り返りつつ去っていった。

 

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