腐るタンピ
痛い。
痛い。
イテーよ。
腐った。
腐った。
あんたのために開けたタンピアス。
ベロに斜めにピアスが刺さってやがる。
あんたみたいだね。
蛇にピアスとか・・・
ばっかじゃねーの。
あたしは少し息を吸い込む。
体のしびれる感覚はハンパない。
それよりもっと息苦しい。
「帰れっ。」て?
笑える。
いつもの様に部屋に入ったら、
知らない不細工コタツに座ってた。
笑える。
泣いてるフリして
「何で!?」
なんて叫んでるあたし。
大爆笑じゃん。
「今日誰が来ていいって言った?てかお前なんでこんな帰るの早ぇーの?」
「誰きてんの?」
「関係ねーだろ。」
カ・ン・ケ・イ・ネ・−・ダ・ロ
だぁ?
このクソヤロウ。
ヤリチン
ヤリチン
やりすぎてニートの癖にヘルニアにまでなったくそ男。
夢はミュージシャン。
親の金貢がせて貢がせてまだまだ売れない。
売れるわけがない。
センスがないもん。
あれだけ無理してホメてやったのにねぇ。
極めつけは体臭キツイくせに何かっこつけてんの?
泣きまねやめて我に返ったあたし。
怒りのワンパンチ。
チクショー!!外れて壁にぶち当たった!!!
壁にあいたこぶし大の穴。
ドン引きのくそ男。
バイバイ。
すげー最低なワキガ野郎。
あんたは本気で臭すぎだ。
それでもあたしは、本気で好きだんったんだよ。
・・・・ついさっきまでは。
くそっ。
ベロに開けたピアスが痛ぇ。
さっき叫んだときに歯に引っかかったか?
それとも昨日なめたあれか?
激辛ラーメンの汁か?
あんなやつの何があんなに好きだったんだろう。
顔か?
なんだ?
今考えると何も好きじゃない。むしろ最低だ。
最悪だ。
金返せ!!
ベロのピアスが疼く。
空気がサージカルステンレスに触れて口の中がやたらと寒い。
なんかリンパもはれてきた。
わきの下痛い。
口の中血まみれじゃね?
広がる鉄の味。
今は冬。
この寒空の中一人で死んでいくんだ。
さよなら。みなさん。ごきげんよう。
ポケットのケータイが震える。
突然の親友からのメール。
「久しぶり!元気?」
元気じゃねーよ。
むしろ死にそうだ。
あたしは正直に返す。
「死にそう」
「えー大丈夫?心配なんだけど!!」
ありがとう。
なんか今は涙がでそう。
すげーあったかい。
「何があったかわかんないけど元気出せよ。ってかおまえ元気だよ!!」
イミワカンネェ。
お前あたしが見えてんのか?
でもちょっと元気。
病院に行こう。
そしてこいつと久々会って話そう。
「タンピ腐った。元気だよ。」