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第94話 ノルデン大王国での日々 その1




 

 ノルデン大王国にも、貴族専用の学校が有るんだ。 統治者教育ってのを前面に押し出してる学校で、校名は、” ノボーリュシカ王立学園。 私が泊めて貰っている、王城のある、王都グレトノルトの中にあるんだ。


 大きさは、ビューネルト王立学園と大差無い程デカい。 十二年間に及ぶ教育を施す学校なんだよ。 生徒はノルデン大王国の貴族の子弟のみ。 嫡男様とかは統治者教育、二男様以下の方々は、それぞれの方面に向かって、勉強する場所なんだって。 


 その中でも競争が激しいのは、やっぱりお国柄なんだろうけど、法務に携われる学科なんだってさ。 聴いたところによると、ビューネルト王立学園で法務関連で、トップの成績だった、エルヴィン様 程の人が、こっちじゃ沢山いらっしゃるそうなのよ。


 伝え聞いたところによると、かなり凹んでるって。 この話をもって来てくれたのが、こないだやった、講義を受講してた、”ノボーリュシカ王立学園 ” の、生徒さんだったりする。 あの人、留学開始当初、かなり尊大な態度だったらしいんだけど、授業が始まって、一週間もしない内に凹んだって。


 そりゃそうよ。 ノルデン大王国は、完璧と言われる程の、『法治国家』。 エルガンルース王国の様な、情で法が曲がるようなそんなお国柄では無いからね。 なんたって、多民族国家だもの。 帰依してる精霊神様だって、多岐に渡ってるし。 ノルデン大王国が『大国』として、纏まってられるのも、大王様の権威の上に、不磨の大典を持ってるからなのよね。


 法律は運用する人でどうとでもなる……。 なんて、ココでは夢物語。 解釈の仕方が違う程度で、厳密に法が運用されて居るの。 だから、その法を学ぶ人たち……いわんや、その法を制定する側に立とうとする人たちの努力は、並々ならぬものなのよ。




 エルヴィン子爵。 覚悟が足りなかったみたいね。





         頑張って。





 貴方が得る、知識と知恵は、いずれ、エルガンスール王国にとって無くては為らない物になる筈だから。 




 そんな風に、色々と面白いお話を聴かせてくれる、此方の学園の人達なんだけど、ちょっとウザい。 やれ、晩餐をご一緒にとか、夜会を開くから来いとか、面倒くさいったらありゃしない。 そんな暇が有るんなら、大協約一節でも覚えろよ!




 でね、相談したんだ。 言わずと知れた、法務長官様に。 




 大変お怒りになってね。 ” 学生が勉学に勤しむ時間を何と心得る!! ” ってさ。 そんで、私が受け持っている、大協約に関する講義には、こっちの学園の生徒さんは、出入り禁止になっちゃったよ。


 つまりは、法務院大学の生徒さんと、「証人官」を目指している人だけに限定されちゃったよ。 かく言う私も、学園には行かないようにって、でかい釘を刺された。





「ソフィア殿のような、魅力的な方が、あの場に行かれる事は、宜しくないと思われますな。 あ奴等には、ノルデン大王国を担うという気概が足りない」


「皆様に、お邪魔になる様なので、ノボーリュシカ王立学園はご遠慮申し上げますわ。 此方でお世話になります。 よしなに」


「うむ。 頼む。 ……そうそう、ユキーラ姫より、苦情が入っておりましたな」


「何事でしょうか? なにか、お気に触る様な事でも、してしまったのかしら?」


「半分は、仰る通りですな。 ここ暫く、法務院大学での研鑽に時間を費やされて、ユキーラ姫とお会いになって居られないのでは? ” いい加減、囲い込むのは、お止めなさい ” と、ご叱責を頂きました」


「誠に……申し訳ございません」


「うむ、良いのです。 半分は本当の事ですから。 貴女の ” 法典 ” への情熱を、利用した事は間違いありませんからな。 おかげで、法務院大学での生徒達は、何かが憑いたように、研鑽に励むようになりました」


「初めから優秀な方々ですから、わたくしが居る事で、かえってお邪魔してませんこと?」


「貴女の真摯な授業への態度が、彼等にとって、忘れかけていたモノを、呼び起こされる切っ掛けになった事は、事実でしょう。 これには、私も感謝しておりますよ。 日々の研鑽と弛まぬ向上心は、常に ” 慣れ ” との戦いになります。 自分との闘いですな。 それを、思い出させて下さったのです」


「……買被りですわよ」


「なんの! しかし、少しばかり、お時間を頂きすぎた。 ユキーラ姫様の御勘気を頂くのは、避けたい。 どうですかな、少しお休みになられては。 姫様には、私からご連絡申し上げておきます」


「お気遣い、誠に有難うございます。 お言葉に甘えます」





 こうして、私は二週間ほど時間が貰えたんだ。 まぁ、そのほどんどは、ユキーラ姫とご一緒に過ごす事になったけどね。





 ^^^^^^





 御父様に……どう伝えようか?






 貴女の娘は、人では無くなりました。 って、報告なんざ出来ないもんね。 






 お手紙は、ちょくちょく、したためてた。 近況報告とか、こんな事が在りましたとか。 でも、国事犯の容疑者にされて死にかけたとか、今でも後遺症が残ってますとか、妖魔と魂が溶け合って、半妖になりましたとか……、 書けないよね、手紙にはね。 


 ボヤカシまくって、差しさわりの無い所を、お知らせしといた。 まぁ、いいよね。 これで。 御領地に帰ってから、ゆっくりとお話する事にしたんだ。 かなりの衝撃を御父様に与える事になってしまうからね。 申し訳ない。よ……


 ミャーと一緒に、お部屋でお茶してる時が、一番平和だね。 随分とお部屋の中も、片付いたし、何時、お客様が来られても問題ない位には、綺麗になったよ。 まとめた考察を書き記した羊皮紙はデカイ箱に詰め込んだしね。 これ持って帰れるかなぁ。 ダイジョブだよね?





「お嬢様の着れなくなった、お召し物を、レーベンシュタイン本領へお送りいたしますので、その時に御一緒にお運びいたします。 よろしいでしょうか?」


「ええ、そうしてくれると、助かるわ。 後で読み直したいモノも沢山あるもの」


「手配いたします」


「お願いね。 それで、ミャー、こっからは姉妹の時間よ」


「……承りました」





 二人掛けのソファに、仲良く並んで腰を下ろしたの。 ニッコニコでね。 






「明日から、二週間お休み貰ったの。 ユキーラ姫に捕まったけど……。 二週間、お休みなのよ、ミャー」


「ソフィアは何がしたいの?」


「うーんとね。 寝たい。 なんか、まだ体がだるくってね」


「そんなに急激に成長するから、追いついてないんだよ、何もかもが。 ミャーは、羨ましいけどね」


「あら、そう?」


「売れっ子姐さんみたいになっちゃってるんだよ? それで、眼鏡外して、お風呂上りで、薄物だけ羽織ったら、もう、ミャーでもおかしくなるよ?」


「そんなに? ……あんま、変わんないと思うんだけどなぁ……」


「気を付けてね、ソフィア。 ソフィアが思っている以上に、ソッチ系の妖しい色香が漏れてるんだよ? 気を引き締めないと、厄介事が団体さんで襲って来るヨ。 主にソッチ系で……」


「……なんか、対策、考えないと、いけないね。 ユキーラ姫とご一緒する時は、良いとして、法務院大学へ行く時は、なんか考えないといけないかもね。 また、エルネスト様にでも、ご相談しようかなぁ」


「法務長官捕まえて、尋ねるような事じゃ無いと思うけど……。 まぁ、気にして下さってるし、良いんじゃないかな、ソフィア。 ミャーも、考えて見るよ」


「ありがとう。 助かるわ」


「うん、ソフィアが面倒事に巻き込まれると、ミャーも面倒だし。 予防は必要」


「ははっ、あははは!」


「なによ」


あの・・ 無鉄砲で、強引なミャーがねぇ……。 予防だって……! うふふふふ」


「ソフィア~~~~~!!」





 ちょっとばかり、お部屋の中で、追いかけっこして、楽しんだ。 スカートまくり上げて、両手で持って、走って逃げ回って……。楽しかったよ。 




   それにしても……、 何時にエルガンルース王国に帰る事が出来るんだろうね?







     ^^^^^^





 貰った、二週間のお休み。 その二週間の間、ユキーラ姫に連れ回される予定。 御茶会はもちろんの事、夜会、舞踏会、お忍びでの街の散策。 濃密な二週間のご予定で御座い・ま・し・た!!!


 いや、社交が嫌だって言うんじゃないよ? ドレスだって、オーダーメイドで作ってもらってるしさぁ。 それなりにお嬢様ぽく成ってるんだけどね。 それでも、貴族様達、それも、ノルデン大王国の高位貴族様の奥方様達との社交は精神的に疲弊するよ。


 物珍し気にされてさ、色々とお話するんだけど、大した内容じゃ無かったり、宮廷での勢力争いの事だったり、私に話して良いの? 状態だよ。 ユキーラ姫も苦笑しておられた。 


 夜会では、その奥様方の御子息なんかも、ご一緒したんだよ。 あのね、私、これでも、こんなんだけど、一応だけど、別の役割を負わされての事だけど、……第二王子ダグラス殿下の婚約者候補(売約済み) なんだよ。 


 ダンスに誘われても、ハイそうですかとは、行かないんだよ。 なんかの策略かと思って、勘ぐっちゃうよ? 私の事、嵌めようとしてるんかね。 プンスカ!! 断ってばかりだから、ダンスが踊れないって、変な噂まで流されてんだよ!! こちとら、【処女宮(ヴァルゴ宮)】で、さんざん教わってるんだよ!!





 なんかフラストレーション溜まるよ!





 そんなある日、エルネスト様が、良いものもって来て下さったの。 正式に大王陛下より下賜されたんだ。 法衣をね。 スラックスにブラウスを合わせて、上から腰をウエストニッパーで締め上げるスタイル。 その上に法衣の外套を着るの。 外套は詰襟でね、濃紺に赤い縁取りと、燻銀のボタンが沢山ついてるの。




 ノルデン大王国の、「証人官」に与えられる、正式な装束なんだって。 男女兼用なのは、それだけ、「証人官」自体が居ないからなんだって。 男女どちらでも違和感が無いように、デザインされている、法衣なんだって。 なんか、嬉しくなっちゃったよ。




 で、着てみた。 うん、これ、いいね。 とってもいいよ。 女性って感じをかなり抑えられるし、男装ってのもちょっと違う。 髪の毛もやっと伸びて来て、肩越したあたりまでになってるし、一つにまとめて、後ろに垂らしてみたの。 いいね、女性文官職の人? みたいな。 




 精一杯お礼を言って、有難く押し頂いたよ。




 法衣以外に、もう一つ有るの。




 それは、《謁見の間》に呼び出されて、陛下直々に手渡されたの。 五弁の桜の花弁の真ん中に、「漢字」で 《証》 って入ってる記章。 正規の「証人官」が付けられる、ノルデン大王国の記章なんだって。 正規の「証人官」が付けると、淡く桜色に発光するの。 



 エスタブレッド大王陛下に、手ずから付けて貰ったら、ちゃんと発光したよ。 これを法衣に付けとけって。 そしたら、いい虫除けになるからって。 それに、この法衣は、ノルデン大王国だけで通用するらしいから……、 エルガンルース王国じゃ着れないから、いいよね。 色々とめんどくさかったし、丁度良かったよ。





 ^^^^^^





 法衣と記章を貰った後に、とある夜会に招待されたんだ、ユキーラ姫に。 なんでも、高位の貴族の方々が出席される、正式な舞踏会らしかったんだ。 私みたいのが居て、良いのか? とか、疑問に思っていたら、ユキーラ姫に、その法衣と記章を付けて出席すればいいよって、言われた。




 この法衣は、正式な場所で通用する、正装になるから、問題ないって。




 だから、言われた通り、着ていったんだ。 髪は結い上げずに、一つに纏めて、後ろに流してね。 パッと見、男性でも通用するかな?





「お嬢様は、ご自身を過小評価されて居られます。 ……あの、こんど、それでダンス踊って欲しいなぁ……。 ミャーと」


「はっ? えっ? い、いいけど……、 なんで?」


「だって、とっても、素敵なんだもん!!」





 ミャーが壊れた!!!! なんか、破壊力、凄そうね。 ちょっと、焦りながらも、その装いで、その豪華な舞踏会に出席したよ! 





 私、





 頑張るからね!!








無敵装束、装着! 麗人スタイル! 実装!

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