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記憶の彼方から ” あの人に逢うために ”  作者: 龍槍 椀
ビューネルト王立学園 三年生
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第73話 ノルデン大王国の公邸にて

 



 ノルデン大公国の公館での御茶会&晩餐会は、楽しいよね。 特に、楽しんで居られるのが、ユキーラ姫様。 でもね、彼女、時に明るく、時に楽し気にしながら、時に沈痛な表情で、そして…… 時折表情が消える。 ええっと、まぁ、病んでるわよね。 相当ね。 周りの武官、文官さん達が、その表情に一喜一憂しておられるのが判るのよ。


 ダーストラ様は、ノルデン大王国公館の中では、武官の装いから、法衣貴族様の装いに変わられてた。 臨戦態勢から、準臨戦態勢に変わってって事ね。 そこだけは、良かったと思っているのよ。 取り敢えず、いきなり戦いを挑まれる事は無くなったよね。 そうだよね。 そうと言ってよね。 


 でもさぁ、やっぱり、心配してらっしゃるのよ。 ユキーラ姫の精神状態をね。 喜んだり、悲しんだりはいいんだ。 普通の事だしね。 ただ、あの虚無としか現せない表情……、 アレだけは頂けない。 なんとか、平静を取り繕ってるのがアリアリとわかるもの。




 でね、そんな様子を、ミャーはしっかり見てた。




 ユキーラ姫が表情を消してしまったら、ミャーがそっと近く寄って、一言二言。 頷くユキーラ姫。 何を言っているのかは判んないけれど、そんで、彼女、戻るのよ。 ホントに優秀な侍女だわ。


 賢者ミュリエ様と、ナイデン大公様も、同席されていてね、その様子をご覧に成ってたのよ。 特にミュリエ様がね。 じっくりと、私達の様子をご覧に成られた後、ダーストラ卿に語り掛けられたの。 その前にナイデン大公様にそっと目で何かの合図を送られていたのも、知ってるわよ。





「提案が有るのですが? ダーストラ様」


「何だろうか?」


「ソフィア殿と、ミャー殿……。 ユキーラ姫にとって、最善の人選だと思われるのです」


「ふむ……。 確かに」


「お国に帰還されるまでまだ、間が有るのでしょう……。 如何でしょうか、彼女達にユキーラ姫について居て貰えば……。 姫の御心が癒されるのでは?」


「……我々から、差出せる物は? 信義には信義を尽くさねばならん」





 こんな状態のユキーラ姫には、何かしらの治療が必要よね。 この状態の姫様をそのままにしておけば、心が壊れちゃうしね。 ほぼ、同族のミャーが居れば……なんとか……なるかな? でも、賢者ミュリエ様の言いたい事も判るよ。 でも、それって、ミャーだけで、いいんじゃないかい?





「ソフィア殿は、ガンクート帝国を敵に回されました。 これは確実です。 こんな事を言っては何ですが、此方の学園に通われるのは、暫くお止めに成った方が良い。 狙われます。 確実に」





 真剣な目で、ナイデン大公様が、そうおっしゃったのよ。 そうか、私の身の安全を、心配してくださったんだね。 そうか……厄介な奴等の目に付いたか。





「お話ですが、ここノルデン大王国の公邸に詰める事を、ご提案されて居られるのですか?」


「そうだ。 理由は先ほど言った事だよ。 余りにも危険だ。 奴等の手の者がこの国に大量に紛れ込んでいる。 それに、奴等の口車に乗った高位の貴族も多いと聞き及んでいる。 サリュート殿下の準備が整うまでは、御家にも帰らぬ方が良いだろう」


「我が国は、彼の国に相当、喰い込まれておりますから……。 父には……」


「レーベンシュタイン男爵には此方から願い出るよ。 ユキーラ姫の御側に付いてもらいたいと。 これは、即日発行の依頼だ。 いいね、ダーストラ卿」


「勿論、ソフィア殿が良いと言われるなら、私からも願いたい」


「だ、そうだ。 どうだろう?」





 こりゃ、嫌だって言えないよね。 それなら、二、三 条件を付けさせてもらいたいなぁ。 聞いてくれるかなぁ……。





「わたくしが外部と接触する為の窓口は、如何致しますか?」


「公邸営門の側に小屋が有るので、そこを使ってくれ。 手紙の遣り取り、荷物の遣り取りは、その小屋限定で無制限とするが、そこから中には持って入らないで欲しい」


「承知しました」


「ソフィア殿。 われらノルデン大王国では、信義には信義を返す事に重きを置いておるのだ。 我等から、願う今回の事。 貴殿は何を望む?」





 ……ええぇとね……。 なんも要らんって言えない雰囲気。 ユキーラ姫のこっちに向いて、瞳をキラキラさせてるし……。 モノ貰ったって、仕方ないし。 あっちの考えてる事とかは、会話から何となくわかるし……。 学園に行けなくなるから……、王宮にも出仕、出来ないしね……。 




    う~ん。


        う~ん。




 よし、お願いしよう。 何処だって勉強は出来るんだからね。 だから、この際だから、ここで、ノルデン大王国の法典を学ぼう。 系統立てて、じっくり時間をかけて。 そんで、王太子妃教育の一環として、ユキーラ姫とのお茶を定期的に設けて貰う。 これで……、 そうだ、忘れてた。 学園に行けないとなると、あの魔女(エミリーベル先生)にも、課題貰っておかないと、絶対に付いていけなくなる!


 よし、決まり。 此処で、勉強させて貰おう!! 幸い、広いお庭もあるから、体術も訓練できるし、ノルデン大王国の武官の人達に教えを乞うのも手だよね。





「信義には、信義をの御言葉、大変ありがたく思います。 わたくしは、ビューネルト王立学園の生徒であり、名目上とはいえ、第二王子の婚約者候補でもあります。 出来れば、こちらで、知識と体術と礼法を御教え願えれば、幸いに思います」


「ふむ……。 それでよいのか?」


「我儘でしたでしょうか?」


「いや、そのこころざし、誠に見事。 ノルデン大王国の名に恥じぬよう、お教えしましょう」


「ダーストラ=エイデン様。 誠に有難き御言葉。 このソフィア、嬉しく思います」





 ガッツリと、本当にガッツリと、お礼を申し上げましたよ。 これで、対等だよね。 その日のうちに、レーベンシュタインのお家と、王宮、それと学園に使いが走って、全部まとめられてしまった。


 王宮のサリュート殿下から、即返信があってね。 十分に体勢が整うまで、匿ってもらえってさ。 王妃殿下の認可状も添えられていたよ。 御父様からも、お礼のお手紙と、粗品として、エルガンルース国内の情勢分析したレーベンシュタイン文書が渡されたみたいね。 素早い反応に、ダーストラ様は驚いてらっしゃったけど、その返信が来た時まだいらっしゃった、ナイデン大公様は、微笑んで居られた。





「まだまだ、この国は腐り切って居らぬようですな。 ダーストラ卿」


「不思議な《お国柄》では御座いますな」





 ええ、ええ、そうでしょうとも。 国政を司っている大部分の者達は、中、低位貴族の諸氏に御座いますから、大貴族の横暴と、驕慢さには、ほとほと愛想が尽きておりましてよ? それに、彼等は民草に寄り添う心根を持っております。 伊達に盾の男爵家と言われるような者達では御座いません事よ?


 学園からの返事が一番遅かったよ。 でもね、それもそのはず。 あの魔女(エミリーベル先生)から、物凄い量の課題が届けられたからねぇ……。 ダーストラ様、ちょっと引いてたよ……。


 そんなこんなで、暫くは、此方に御厄介になる事になったんだ。 お家から何着か服も届けられたんだけど、ダーストラ様が、ノルデン大王国が全てをご用意しますって、おっしゃってね……。




 ほんと、申し訳なくなったよ。 




 気合い入れて、ユキーラ姫の御心を癒す事にしたんだ。 ミャー、頼みにしてるよ。


 ホントだよ。


 お願いだよ。





「ソフィアは、いつもそうだ……」





 ちょっとブー垂れている、ミャーの頬っぺたをつついてから、豪華な寝台で眠りに付いたんだよ。




 なんか、フワフワして、眠れそうにないなぁって、思っていたけど、



     速攻、意識を飛ばした私は、



    相当、図太いのかもしんないね。










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