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記憶の彼方から ” あの人に逢うために ”  作者: 龍槍 椀
ビューネルト王立学院 二年生
57/171

第57話 本番です




 



 どやぁぁぁぁ!!!! よっしゃぁぁぁ!!!






 無事に学園舞踏会を乗り切った!!!!!




 お家に帰って、ドレスを脱いで、沐浴して……、 ミャーにホットミルク入れて貰った。 ホッと一息付けた。 ほんとに、皆さんの驚いている顔って……。 ウププププッ! 楽しかったなぁ……。 呆気に取られてたよ。 ミャーが麗人に成っちゃってんだものねぇ!





「ソフィア、やり過ぎだよ……。 ほんと、ソフィアの引き立て役だよ、私って……」


「はっ? なんでよ、皆さんミャーに、興味津々、目なんかハートにしてる子一杯いたよ!」


「判って無いの? はぁ‥‥。 そりゃ、私がお化粧したよ。 うん、確かに……。 あそこまでに成るとは思ってなかった。 パーティの会場って、あんな照明だったとは、知らなかったよ……」


「えっ、でも、綺麗だって言ってくれたよ?」


「いや……、 親しみのある化粧にしようと思ってたんだけど……。 本当に傾国仕様に成っちゃんたんだよ…。 お店のお姐さんに、注意されてたの、忘れてたよ……」


「なによ……」


「ソフィアの御顔は整い過ぎてるから、気合入れれば入れる程、冴え冴えとした顔に成るの。 ちょっと隙を作れって……。 ソフィア、お化粧嫌いだから……、 久しぶりでノリノリで、お化粧しちゃってて……、 その事忘れてたんだ……。 ゴメンよ」


「なんで、謝るの? とっても嬉しかったよ?」


「判って無かったかぁ……。 今後の為にも言っとくよ? いい?」


「うん……なんでもいいよ!」


「今日、皆さんが私の周りに取り付いたのは、ソフィアに気後れしたから。 あのドロテア様だって、あんまり近くに居なかったでしょ? 作った笑顔を張り付けたソフィアは、王妃殿下の真正面に立っても、遜色ないんだ。 それでいてね、ミャーとダンスをした時に見せた、極上の笑顔…… 知ってる? 私達が踊ったあの曲……。 ホールに居た人達が、どんどん減っていっていたの……。 この天然!」





 何を言っているの? だって今日、みんなの目を奪ったのは、ミャーでしょ? 理解出来ないよ。





「獣人族の礼服は、男女兼用。 準軍服仕様。 この国に来てる人達で、商売に来てる人達も着てるんだよ。 だから、特に目新しいもんじゃない。 御当主様もそれを知ってるからこそ、私の衣装を獣人族礼服に決められたんだよ……。 ミャーにお話をしてくれた人達の話題は、全部ソフィアの事。 ドレスとか、御飾りとか……。 で溜息と共に、云うんだよ……お綺麗ねって……。 自慢のソフィアだけど、目立ちまくったよ」


「そ、そうなの?」


「そうだよ……。 本番の舞踏会……。 デビュダントの時、どうすんのさ……。 物凄く注目される事、間違いないよ!」


「……やらかした?」


「今回に限って言えば、ミャーも片棒担いじゃったからねぇ……はぁ……。 どうしよう」





 お部屋の中は、なんか一転して暗くなったよ。 やらかしちゃったんだ……。 パートナー問題と、ドロテアの懸念を一気に晴らせると思って、やったんだけどなぁ……。





 ^^^^^




 後日、御父様からも、ちょっとお小言を貰った。 男爵家の方々が、口々に褒めそやして居たって……。 大方の予想を覆して、盾の男爵家の矢面に立ってもらって、有難かったって……。 高位貴族の皆さまの注意が一気に私に向かったって……。 これからの言動には、注意を払うようにってさっ!


 自縄自縛って奴か!


 気を付けよう、本当に、本当に、気を付けよう。 ちょっとした、敵愾心が……こんな形で帰って来るなんて……。 ブーメランだよ。 せっかくオトナシクしてたのに……。 馬鹿だよ、私……。


 なんか、とっても凹んだ。 安息日を挟んで、学園に登校したら、なんか私の周りに一杯人が居たんだよ。 いつも通りにしてんのにな……。





「ソフィア様、お疲れさまでした。 貴方の戦う意思……、 存分に見せて頂きました。 もう、貴女を軽んずる者は居ないでしょう。 それが、たとえ上位貴族であろうと」


「ドロテア様?」


「大丈夫です。 わたくしの周りの男爵家の者達は覚悟を決めました。 これで、存分に戦えますわ」





 目が怖いよ……、 なんかねぇ……。 





「ドロテア様、わたくしは、わたくしでしかありませんわ。 皆様がどう覚悟を決められたかは、存じ上げませんが、これからも……」


「「ソフィア様の思うが通り、お進みください」」





 なんで、そうなる!! なんで、みんな頭を下げる!! 友達だろ!! ニッコリと笑うドロテア、ドミニク……。 そんで男子生徒も…ルークまでどうしたの! 





「わたくしは、皆様の事をお友達だと思っております。 今までも、これからも……いけませんか?」


「「 ありがとう! 私達も、そう願いたいです!! 」」





 どーも、御唱和ありがとう。 ふうぅ……。まぁ、いいか。 その内収まるよね、こんなの。 それより、授業! 授業!  あの地獄の魔女(エミリーベル先生)が来るヨ! 怠けてたら、ケツ蹴っ飛ばされるよ!! 頑張ろうね!!





 ――――――――――――――――――――





 本番の招待状と、【処女宮(ヴァルゴ宮)】からの指示書が来た。 やっぱ、どう頑張っても、御父様の出席は認められなかったって。 そんで、仮親として、コローナ伯爵様がご指名されたんだって…… これ、モロにマジェスタ大公の息掛かってんじゃん。 コローナ伯爵って、ソーニア様のお父様だよ? 


 あぁ……そういう事ね。 あちらは、マジェスタ大公がエスコートするから、ソーニア様の実の両親を呼ぶ為の、口実か…… 私をボッチにする作戦ね。 判った。 大丈夫。 平気。


 当日、コローナ伯爵ご夫妻で、うちに迎えに来てくれるってさっ! 逃げ道を封じるのね。 そんで、それまで、会わせない様にするのね。 判ってるよ。 最初から最後まで、徹頭徹尾、アウェーってこった。 よし、気合を入れよう。 


 ギリギリ、侍女の同行を許されたから……、 私の味方は、またも、ミャー 一人ね。 よろしくね、ミャー。 


 さて、色々準備しなくちゃね。 いいよ、戦う意思を見せてあげる……!








献春月(ヴィトモグ)】 十五日。 


 満月。 春の足音が聞こえてる、宵闇。 風は、花の香りが孕み、柔なら絹のように、頬を撫でる。 中庭で宵闇に閉ざされつつある、空を見上げてたんだ。


 戦支度は終わった。 ドレスはこの間とは違って、白。 デビュダントと聞いて、御領地の皆さんが用意してくれた。 御飾りは、レーベンシュタインのお家の家宝の首飾り。 なんでも、数代前の奥様の持ち物らしいの。 よく見ると、所々に魔石が仕込んであった。 


 ……レーベンシュタインの女性ね。 旦那様の右腕だった人だって教えて貰った。 戦えるご婦人は、何時だって凛として美しいんだ。


 これだけの事をして貰って、何も出来ませんじゃ、役に立たない案山子だ。


 いっちょぶちかましに行くか!!


 白いロングの手袋を、空に突き上げ、対魔術防御陣を展開して、起動魔方陣に魔力を注ぐ。





「我、ソフィア=レーベンシュタイン。 いざ、参る」





 魔方陣が起動して、私のドレスに多重防御が施された。





 ^^^^^^





「これは、お美しい……。 レーベンシュタイン男爵、お嬢様の事は、任せよ」


「コローナ伯爵様、よしなに。 ソフィア、いいか」


「はい、御父様。 コローナ伯爵様、ソフィア=レーベンシュタインに御座います。 どうぞ、よしなに。また、今宵のエスコート、誠に感謝に堪えません。 何卒、宜しくお引き回しの程を」





 優雅に、ドレスのスカートの端をつまんで、右胸に手を当て、軽く膝を折る。 揺れる銀髪のサイドの髪。 底光りする、紅い目。 白磁の肌。 ミャーの手による、傾国仕様のお化粧。 完璧ね。 でも、その中に、そぐわないものが有るの。 そう、私の視線の強さ。 まるで、飢えた肉食獣か、魔獣の光。


 ちょっと、コローナ伯爵がたじろいでた……。 奥様もね。 武門のお家の方だから、ビビりはしないけど、ちょっと、見直したって目をしてる。 これから行く場所が、どんな所かを理解してるからね。 喰うか喰われるか。 この国に疑惑の目を向けている他国。 巻き込もうとしている国。 いまだ、立場を明らかにしていない、エルガンルースの重鎮達。


 まとめてかかってこい。 


 私は、私でしかない。 この世界に生を受けて、この世界に生きる私でしかない。 ならば……。



          足掻いてやる。



       何処までも、何時までも。



          民の安寧の為、



     レーベンシュタイン男爵家の娘として



          矜持を持って……、




          喰いちぎってやるよ!





            邪な想いは。






 コローナ伯爵家の豪華な馬車に乗り込み、ミャーと隣り合わせに座るの。 月が上がっていた。 満月の月光が、気持ち良く照らし出してくれている。 今日向かうのは、【処女宮(ヴァルゴ宮)】では無い。 ずっと昔、御父様と呼び付けられた、別の宮殿。 




金牛宮 (トーラス宮)】 




 《謁見の間》ある迎賓館的な所ね。 各国の大使を一堂に寄せ集めるのには、持って来いの場所ね。 それに、王家の舞踏会は大抵この建物で行われるのよ。 上位貴族の皆様は、よくご存知な場所。 ミャーは、【金牛宮 (トーラス宮)】 に入ったら、【処女宮(ヴァルゴ宮)】の侍女さん達と合流する手筈。 


 また、影働きだね。 ごめん、頼りにしてる。 馬車は、【金牛宮 (トーラス宮)】の車寄せに到着。 馬車の扉が開かれる。 まずコローナ伯爵様ご夫妻が外へ、その後に私達。 いつ見てもデカいね、この建物……。 外観がパルノテン神殿に酷似してるのが、ちょっと笑いを誘うよ。





「さぁ、ソフィア嬢。 君のデビュタントだ。 行こうか」


「はい、どうぞ、よしなに」





 子供の定位置、伯爵様の右側に立つ。 腕を取り、歩みを合わせ、背中をピンと張る。


 ミャーは打ち合わせ通り、【処女宮(ヴァルゴ宮)】の侍女さん達の元に。 天空に掛かる満月の月光が、力をくれた。 さぁ、行くぞ。




         いざ、私の戦場に!




         デビュダントだ!









 

戦う意思を披露する事になってしまったソフィア。


彼女の姿に、盾の男爵家は、エルガンルース王国の未来を重ねる。


後世、この婚約者候補達のデビュタントが、エルガンルース王国の命運を決したと、そう考察されている。



次回、交錯する舞踏会。 お楽しみに。



ではまた明晩、お逢いしましょう!!

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