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記憶の彼方から ” あの人に逢うために ”  作者: 龍槍 椀
ビューネルト王立学院 一年生
22/171

第22話 祭り後



 


     深夜も深夜。 





 いくら、お祭りの夜でも、もう、街がひっそりと眠りにつく頃、お父様が御帰館された。 めっちゃ疲れてらした。 当然、私のせい、 ミャーに言いつけて、カップに二つ、蜂蜜入りホットミルクを作ってもらって、執務室にもっていったの。


 せめてもの、お詫びにね。


 お父様が疲れた瞳で、私を見てから、ゆっくりと言葉を紡ぎ出された。 ゆっくりとね。




「ソフィア……疲れたよ。 アンネテーナ妃殿下の半分錯乱した姿、お前にも見せてやりたかったよ」


「見たくないです」


「そうだろうな。 妃殿下が何故、ソフィアに執着していたか、判った気がする」


「何故でしょうか? やはり、この姿でしょうか?」


「あぁ…… 彼女の姿をそっくり写したような外見……。 学園で、アンネテーナ妃陛下に対し、あれほど心を砕き、優しくしていた者は他に居なかったからね……。 思い出されたんだそうだ、君の姿を一目見てね」


「……詮無き事。 わたくしは、ママとは違うのです。 形に囚われて、横紙を破るなど、妃殿下のする事では御座いませんね」


「辛辣だな。 最初はお怒りだった。 王宮に至急で呼び出され、何事かと取り急ぎ参内すると、大層お怒りの妃殿下の御座所に連れて行かれた。 君が出席を承諾したのに、私が止めたと思われたようだ。 話が嚙み合わなくて、困ったよ」


「左様ですか……申し訳ございません」


「”耳” と、”口” が警備を突破して、私に囁いてくれたから、指摘出来た。 君の居所をね」


「では、やはり、妃殿下の暴走と言う事ですか?」


「あぁ、側近の侍従達は妃殿下の御意思を知ってはいたが、まさか、彼等を通さずに、直接招待したとは思っていなかったらしい。 侍従達も、妃殿下のお怒りの原因がわからず、困惑していたよ」


「……困った方ですね」


「奔放なのだ。 内宮の規則も貴族の常識もあえて無視されている様な気がしている」




 ちょっと、それは、頂けない。 王妃ってのは、全ての規則を遵守しながら、揚げ足を取られない様に立ち回り、相手の情報、譲歩を引き出す話術を身に付けなきゃ、国王陛下の横には立てない。 王国外の国々との折衝やら、社交やら、ヘタ打てばそれこそ大惨事につながるからね。


 思案気な私の顔を見ながら、乾いた笑いを浮かべつつ、御父様はお話を続けられたの。




「内郭府の係官もとんだとばっちりを受ける事になるな、あれは」


「と言いますと?」


「祭りの進行に奔走している時に、予定されて居ない招待客、それも低位貴族の令嬢の確認など、するものか。 真夜中過ぎまで、未決箱の中に招待状と一緒に、問い合わせ文書が入っていたと、報告があった」


「そうですの。 それは、災難でしたわね、その係の方」


「手順を踏まないと、こうなると言う、良き教訓となったのではないかな? それに、君が行動で示した、下位貴族の矜持が話題となっている」


「と、言いますと?」


「ずっと、黙って待っていたらしいね。 立ったまま、一口の飲み物も、一片のパンも口にせず」


「ええ、待ってくださいと、そう申し付かりましたから。 下手に動けませんわ。 だって、「王宮」ですもの。 引き立てられて連れ込まれたのではなく、訪問したのですから」


「そうだね。 それが、彼等には、判らない。 理解できない。 彼等ならば、拷問されたと取るだろうし。 侮られたと、激昂もする。 衛兵達も感心していたと、報告にあった。 国王陛下、妃殿下の御前に控えている間に、次々と報告が入るのだよ。 最後の、”日付が変わると、お帰りに成られました”と言ういかにも君らしい、行動が報告された時、妃殿下が絶叫されてたよ」


「はぁ……。 王家……、 大丈夫でしょうか?」


「さぁね。 もう、私も居る必要が無く、御前を辞そうとしたんだが、クドクドと何か謝罪めいた事を言われたよ。 反応すると、また、困った事になりそうだから、じっと聞いていただけなのだがね。 ひとしきり、そんな事があって、やっと御前を辞せた」


「それは……申し訳ございません。 でも、これで、妃殿下はわたくしをお呼びに成ろうとは思われませんね。 正規の手順を踏もうにも、わたくしは、男爵家の娘。 至高の階の上の玉座に座る方には遠すぎます。 宸襟を開くには、爵位が全く不足しておりますものね」


「あぁ……、 多分。 そうだな。 ご理解頂けると思うが……。 春の園遊会か……、 次は」


「あぁ……園遊会ならば、低位貴族も出席させられますか……。 覚悟しておきます」


「うむ……。 高位の者達に囲まれていれば、無茶もされまい……と、思いたいね」


「御意」




 重い溜息と一緒に、何かを吐き出して、私が持って来た、ホットミルクを口にされる御父様。 表情が柔らかくなった。 色々と気を揉んでいらっしゃったんだ。 本当にごめんなさい。 



 そして、ありがとうございます。



 夜は静かに時を刻む。 もう、おねむだよ。  明日はお休みだし、ゆっくりと眠ろう。 目が覚めれば、新年だよ。 いや、もう、新年に成っちゃってるか……。 この世界にはお正月なんか、ないから、二日から学校が始まるのよ。


 ほんと……、 なんとかしてほしいね。




 ついでに、



 炬燵ミカンしたいよ。 




 ――――――――――――――――――――





 明けて、【精霊月(ガイスト)】一日。 





 お日様は、今日も昇る。 眩しい光、澄んだ空気。 【鏡祭り】の後。 シンと静まり返っている、お屋敷の中。 



    今日は、安息日なのよ。



 目が覚めちゃった、もう、寝てられないから、ミャーを誘って、お庭に出てちょっと散策。 御父様のお話じゃぁね、どうも、アンネテーナ妃殿下は、なんかの罪悪感を刺激されちゃってるらしいのよ。


 二人で、お庭を散策しながらね、昨日の夜、 御父様に、アンネテーナ妃殿下の謝罪というか、なんと言えばいいのか判んない、一人語りを聞かされたのよ。 長いお話だったよ。 それをつらつらと思い出していた。 根が深いから、今後もアンネテーナ妃殿下からの接触があるかもしんない。 そんなお話だった。


 アンネテーナ=ギボシ―子爵令嬢は、『瑠璃色の幸せ』の時間軸でね、アーバレスト殿下の御心を掴んじゃったの。 御自分も確かに、アーバレスト殿下を愛しておいでだった。


 ただ妃殿下は、「側妃でも良い、アーバレスト殿下の御側に居れさえすれば」、とか思ったらしいのよ。 あくまでも正妃は、ディジェーレ=エレクトア=マジェスタ公爵令嬢だとね。 それが、周りの貴族の令息達の暴走と、ママの弟の、エルグリッド=ノーマン=マジェスタ公爵の策略で、思わぬ方向に事態は進んで行って、ご自身が王妃となられてしまったって事らしいの。


 ご自身の意思では無い、ディジェーレさんの境遇。 行方が分からなくなっても、誰も探さないという状況。 親切にしてくれた、色々と教えてくれた、そんな恩人とも言うべきママを、結果的に排除して、その立場を奪ってしまった。


 アーバレスト陛下の横に立つためにされた王妃教育。 別世界も良い所ね。 でも、もう、誰も助けてはくれない。 重い荷を背負ってしまった彼女は、弱音を吐く事すら許されない。 自らが意図せず犯してしまった罪。 その贖いを、アーバレスト殿下の横に立てるように勉強するって事で、折り合いを付けられたらしいね。


 贖罪の為に至高の玉座に座る道を選んだアンネテーナ妃殿下。 色々な問題を孕みつつも、なんとか王妃様になって、男御子も得られたそんな時に現れたのが、私。 びっくりを通り越したんだよね。 生まれ変わりかと、思っても仕方ないよね。 


 で、妙な執着が生まれたと。 


 面と向かって話がしたいとね。 


 ねぇよ。 身分差、考えろよ。 至高の存在と、最底辺貴族。 交わる事なんか無いよ。 と、云うより、交わる気、サラサラないよ。 うん、そうだね、出来る限り避けよう。 もう、絶対に招待状なんぞ受け取らない。 つまりは誰からも、何も受け取らない。




 迂闊だったよ。




 ホント、「世界の意思(シナリオ)」は、何かしら 「ぶっ込んで」くるよね。 なんとか、王家とか高位貴族とかと繋がりを持たそうと、必死な感じがするよね。 ほんと、もう、ほっといて欲しいよ。 私抜きで、どうぞ話を進めて下さいってこったよ。


 深っか~~~い、重っも~~~い、溜息しか出ないよ。


 ミャーとの散策も、そんなに心を軽くしてくれなかったよ。






 ――――――――――――――――――――






 学園の何時もの日々に戻った。


 教室で授業を受けて、魔法を勉強して、運動場で鍛錬する毎日にね。


 友達たちと、学園の隅っこで、平和な毎日を過ごしていたんだ。



 その日まではね。



 その日、運動場で鍛錬した後、【クリーン】の魔法を使って、綺麗にした後、帰りの乗合馬車に乗ろうと、待合場所に向かっている時に、高位貴族の御令嬢に呼び止めらたの。




「ソフィア=レーベンシュタイン! 彼を誘惑しないで!! 私の彼を! マクレガーを返して!!」





    はぁぁぁぁぁ?!?!?



        おい、



        いま、



      なんつった!!!!








今晩は!!


今日は短いです。



自転車、漕げません。 



なんか、うまくいきません。



すみません。



こんな日も有ります。




それでは、また明晩、お逢いしましょう!!

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