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第159話 エルガンルース国内の斑模様






 あれからね、聞いたところによるとね…………、





 

 《ナイデン王国》――― ハチの巣突いたみたいに成ってるよ。 






 ミャーがこっそり仕入れてくれている、裏側の情報でね、分かったのよ。 弱みを見せたとたん、コレだ……。 ツナイデン国王陛下も大変だよね。 生粋の獣人族って、ほんと、血の気の多いからねぇ……。




 ^^^^^




 《ノルデン大王国》の王城から、飛び出すように脱出してね。 その後、いろんな場所をウロウロしてたんだ。 《ノルデン大王国》の国内には居れないから、直ぐに国境を越えたけどね。  


 殿下との約束は、エルガンルース王国の「百年祭」への出席。 王宮、【金牛宮 (トーラス宮)】で行われるんだよ、たしか……。


 私が十八歳になる年の【授雲月(ヴァルコール)】 初日に有るんだっけ……。 ノルデン大王国から飛び出したのが、十七歳の年の、【授雲月(ヴァルコール)】 だから、猶予は一年有ったんだよ。


 一年は少なくとも、隠れとかないといけないんだ。 その間に、私が生きているのとか、「百年条約」の文書を私が保管しているのが、マジェスタ大公にでもしれようものなら、それこそ、あの人全力で私を狩るからね。 


 サリュート殿下も、その事を危惧されていたわ。 殿下も敵視されてたから、「使節団」の アノ人達と一緒に、行方をくらませているけどね。 まぁ、その時までは、オトナシクする事にしたんだ。 「百年祭」の時は、派手に出て行くけどねっ!


 と言う訳で、今直ぐには動けないから、ミャーの持つ暗殺者ギルドの伝手で、セーフハウスの一つに身を隠したんだ。 隠遁生活って訳よね。 でも、引きこもったままじゃぁ、外の状況とか、人々の事とか判んないから、情報収集もかねて、普通に生活してたのよ。 




      普通に……、 冒険者としてね。




 私……以前作った、冒険者ギルドのギルドカード持ってるでしょ? あれ使えば、身元を隠したまま、色々と動けるもの。 使わないって選択は私の中には無かったの。 市井の声を間近で聞くには、皆の間で暮せば早いんだからね。 そしたら、私にもきちんと聞こえの良い、仕事がいるのよ、仕事が!


 冒険者ギルド登録時に、レーベンシュタインの名前を出すのが嫌でさ、単にソフィアって名前で登録したんだ。 ”ソフィア”って名前は、エルガンルース王国の女の子の名前としては、割と有るんだ。 


 だから、目立つ事も無いんだよ。 冒険者としての活動は……、 まともに活動してなかったから、鉄級のままだった。  だけど、其処は採取関連の常時依頼を受けて薬品の納品もしてたら、いつの間にか、銀級に昇格する事が出来たんだ。 


 隠れて生活する事には、目途がたった。 自前で情報も集めまくった。 ミャーからの情報も貰った。 だから、エルガンルース王国の状況、色々とわかって来たのよね。 ほんと、危機的状況だってことがね。




            本当に、良く判ったよ。





 ――――





 サリュート殿下は、エルガンルース王国の国民とか、貴族とかの間では死んじゃった事に成ってるのよ。 無理な「使節団」を組んで、無理矢理オブリビオンに向かって、あえなく死んじゃったってね。 


 それも理由として、魔族との条約を破棄し、人族の世界を作るとかなんとか……言い出しやがった馬鹿が居るんだよ。 軍編成して、同盟呼びかけて……、 ほら、《ガンクート帝国》の兵が、王家墳墓の谷に入って来てたじゃない、あれがその結果なんだよ。 あわよくば、オブリビオンに攻め込んで、カロンの街を分捕っちゃう気に成ってたみたいよ?




 ほんと、馬鹿……。




 頭が痛い事に、マジェスタ大公が国権のほとんどを掌握して、好き放題しているのは、情報収集を始めてから、直ぐにわかった事。 今じゃ、アーレバースト国王陛下は、完全に彼の云うがまま。 言う事を聞かない、アンネテーナ妃陛下は、【処女宮(ヴァルゴ宮)】に押し込められて、全く身動きが出来ないようなのよ。 


 只事じゃないよね。 もう、王家「エルガン」は、有名無実に成り果てて、求心力も権能も、全て失っちゃってる感じ。 エルガンルース王国で、唯一と言うか、抵抗しているのは、盾の男爵家と、辺境卿達くらい。 表立っては動いてないけどね。


 マジェスタ公爵系の人達って、みんなルース王国系の人達でね、「人族至高」の考え方が古くからあるの。 だから、ルース系の貴族の人達って皆頭が高くて、選民思想的な物言いが多いのよ。 《ガングート帝国》の貴族と親和性が高い訳だよ……


 《ガングート帝国》と言えば、エルガンルース王国内で「帝国至高教会」の奴等が、我が物顔で闊歩しているんだ。 あっちこっちの精霊教会を接収して、自分達の「神」とやらの聖堂にしているんだよ。 もう、精霊様達えらい勢いで、御怒りに成っているんだ。 


 心ある人たちは、そんな中でも、お家の中で精霊様にお祈りを捧げてるんだけど、帝国至高教会の連中がなにやら、帰依を強制してるんだと。 わたしもこの目で見てた事あるんだ。 アレは、酷いよ。 脅して、透かして、洗脳して……それでも言う事聞かないと、拷問にかけて、あげく背信者として吊るし上げるの……。


 どこぞの魔女裁判思い出したよ。 ほんと病んでるよ。 南の領地の方が酷いね。 まだ、北側はそうでも無いんだけど、南は酷い。 西側は何とか中立保ってるよ。 うん、御父様の御領地のある地方ね。


 王国の西側と言えば、エルフ系の人達の大森林 《 エルステルダム 》 も、混沌としてるんだよ。 と言うのもね、あそこ、現在二大派閥にわかれちゃってるのよ。


 一つは、森と共に、自然と共に生きるって決めている旧守派。 大協約にも協力的で、「妖魔」が何かを知っている人達。 ちなみに、そんなに多くの人はいない。 エルダーって、長老クラスの人達が多いのが特徴。 でも、穏やか過ぎて、若い人が付いて来てないみたいなの。


 もう一方が、革新派なんだ。 【聖賢者(アノ)ハイエローホ(エロ爺)】と中心とする、魔法至上主義な集団。 その上、森から出て大帝国へとの夢を持つ人たちなんだ。 急進的で、野心的な彼等の言動は、若い《エルフ族》の心を捕らえ、結構な頭数を揃えているんだ。


 まぁ、若いだけあって、其処までの権威を持っている訳じゃないんだけどね。 でも、その後ろ盾に成っているのが、聖賢者様なんだと。 だから、《エルステルダム》内じゃ、結構やりたい放題、してやがるんだと。 長老クラスのエルダーさん達が苦々しく語っていたって、ミャーが教えてくれたのよ。


 それでね、《森の人(エルフ族)》が、これまたエルガンルース王国内に相当食い込んでるんだよ。 革新派の聖賢者の一派がやらかしてくれてね。 魔法至上主義者達が、何をトチ狂ったのか、人族至高の考え方の奴等との、緩い集まりなんかを作っちゃったって事。


 奴等魔法が唯一の拠り所だから、それを持ってない「帝国至高教会」の枢機卿が抱き込みにかかって、そこはまぁ「人族」の悪知恵でね、成功しちゃったらしいのよ。 互いに持たない物を出し合って、覇を得ようと、画策してやがるの。


 ほんと、混沌としてるよ。 何よりこいつらが、エルガンルース王国を確実に食い物にする為に、考え着いたのが、第二王子ダグラス殿下の抱き込みと傀儡化。 もう、後で謀殺されるの確定みたいなポジションなのよ、今の彼。 


 それ(謀殺)を押しとどめて、自分の駒にしようとしているのが、マジェスタ公爵。 多分だけど、彼は偽ソフィアが、【自動人形(オートマタドール)】って気がついてないの。 だから、偽ソフィアを、マジェスタ大公家の養女に迎えてダグラス王子の正妃に付けようと躍起になってるんだよ。


 ダグラス王子と、偽ソフィアの間に生まれた皇子の祖父として、全てをその手に納める気だね。 うん、間違いないよ。 そして、ルース王国の再興を果たすんだ。 栄耀栄華を想うがままにする為にね。



 まぁ、「魑魅魍魎」の「化かし合い」って、そんな様相だよね。



 ここは、ぐっと深く沈んどくに限るよ。





 ^^^^^^^




 まぁ、冒険者ギルドは楽しかったよ。 依頼だって そこそこ こなしてね。 裏からの情報で、《ナイデン王国》の暗部がミャーを探そうと躍起になってるって話も、聞こえてきたからねぇ。 まぁ、その内の何組かは、私たち自身で撃退したけどね。


 その度に、居所を変えなくちゃならなくってね。 面倒だったよ。 あちらとしては、どうも、内々に納めたいらしくて、エルガンルース王国内に居る限り、大々的には仕掛けてこなかったんだ。 これ、私のある種の賭けだったりもするんだよ。


 あの日、あの場所で、ナイデン大公に喧嘩売って、飛び出したでしょ。 あれで、彼の顔は丸潰れ。 それを根に持って、ちょっかいを懸けてくるか、それとも、本国でのゴタゴタで動きが取れなくなるか――― のね。 




       結局、賭けには勝ったみたいなんだよ。




 ツナイデン国王陛下に関しては、あれから動きは無いの。 私達にちょっかいを掛けて来るのは、現政権に冷や飯を喰らわされている一派らしいの。 まぁ、そうなるわよね。 ミャーを手に入れて、どうにか現状を変えようとしているんだものね。


 尾行が付いてるなぁ――― って思ったら、ワザと、洞穴系採取依頼を受けてさ、ヤバめの階層まで降りてって、嵌めるの。 与し易しって、思われる様に引き込んでね。 骸は、魔物が美味しく頂いてくれるから、まず表には出てこないんだ。


 それでも、追手が居なくなれば、その辺に私達が居るって判るから、居所を変えるのよ。


 そんなこんなで、エルガンルース王国内の結構色んな場所に潜伏したんだ。 今じゃぁ、ミャーと私、外見はかなりコナレタ冒険者風に成ったよ。 まぁ、フードで顔隠してるけどね。


 だからこそ、レーベンシュタインの領には行けて居ないんだよ。



            御父様の事が心配なのよ。



              無理してない?



              無茶してない?




             貴方は、この世界に居る、




            たった一人の御父様なんだよ?




               居なくなったら……、




                ダメだからねっ!








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