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第154話 闇の中で……




 

 薄暗がりの闇の中、 【呪い除け】の魔法円の中で、ミャーからの連絡を、待ちながら、今後の事を話し合ってたのよ。 問題が山積みに成っている現状と―――、





     そう、今後の事をね。





 《ノルデン大王国》の王家の墳墓に、私達が転移してきたのは、おそらく、ミッドガルドでは誰も感知してない。 向こうでも、何処に飛んだかは、詳細には判んないけど、詰所で、履歴を追えば……、 アレルア様なら、分かるかと思う。


 まぁ、暫くは、完全に足取りは掴めないよ。 私達はこれで死んじゃった事になるのかも知れないし、私に至っては、存在自体、おかし気な事になる筈。 だって、曲がりなりにも、私の偽物が、エルガンルースに居るんだもん。


 アルファード公爵は、進攻出来なかった事を韜晦する為に、虚偽申告するよ。 絶対に。 エルガンルースの王家墳墓の谷の転移門から、カロンの街の様子見えてた筈だからね。 高位魔族、高位種魔物が軍勢を作っていたの、見えてた筈だから。


 まぁ、衛兵さん達と、南部審問軍団の兵士の皆さんだよ。 人族の進攻に備えて、防衛のために集まってたってのが、真相だけどね。 アルファード公爵はきっと、逆進攻をされそうになって、転移門を封鎖したとかなんとかいうね。 うん、自分の失敗を糊塗する事に掛けては、「信頼の実績」があるもんね。




            側妃ユミ様の事とかさっ!




 いくら、マーリンの親だって言っても、アレは許せんからな。 殆どの事象の、実行犯(諸悪の根源)ってアルファード公爵だよ……。 「瑠璃色の幸せ」の世界の時だって、ママを実質嵌める、証拠作ったの、ハリーダントだもの……。 言われたからした。 それが正義だと思ったから……って。


                クソがっ!


 まぁいい、それは後回しだ。 今を考えよう。 と言うのも、これって、とっても潜伏しやすい状況に成ったって事よね。 だって、転移門は閉鎖したって思ってるし、あれだけの軍勢に、たった四人で向かった、「使節団」はきっと殺されちゃってるって判断してもおかしくない。


 つまりは、第一王子はすでに、この世の人ではないと、判断するに足りるモノを見たんだ。 あぁ、報告するよ奴は。 サリュート殿下は死んだってね。


 こっちが下手な動きをしない限り、追手は掛からないんだ。 あっちのシナリオからは完全に排除された形になるんだよね。





「殿下、この際です。 エルガンルース王国の膿を洗いざらい探ってみては、如何でしょうか?」





 私の提案に、殿下は頷かれた。 よく判って、いらっしゃるもんね。





「死んだものが動き回るのは、何かと不便だが、目を韜晦するにはちょうどいい。 セーフハウスの一つや二つ、隠し持っているから、其処を拠点としてもいい。 エルヴィン達も、そう言った所は確保しているだろ?」


「ええ、まぁ……。 隠し資産も有りますしね」





 事も無げに、エルヴィンがそう言う。 アレは、きっとエルグランド公爵の隠し財産だね。 自由に使っても、足のつかないお金。 多分、莫大な金額……。 伊達に長い事、王国の金庫番して無いよね。





「兵隊を集めたり、要所要所から、重要な指揮官を抜くのは、任せてほしいな。 それとなく、親父の命令書作れるように、隠し砦に白紙の命令書を束にしておいてあるから」





 ニヤリって笑いながら、マクレガーがそう言うんだ。 レクサス公爵が緊急時に使用する事を事前に認めている、白紙命令書だよ。 ” 責任は俺がとる、王国の緊急時には使え ” って、各所の高級指揮官に通達出すって王宮での話に出てた。


 あれって、確か、レクサス公爵の身に何かあった場合に、後で追認するから、どんどんやれって、そう言う意味だったような……。 マクレガー……。 あなた、それ、どっから仕入れた情報なんだ?





「スザック砦から帰還した後、親父殿に呼ばれて、教えて貰った。 いずれ必要な時が来るかもしれないって。 親父殿は動けないかも知れない、弟は取り込まれるかもしれない。 実戦を経験し、肌身で戦いの凄惨さを経験した俺なら、使い処が判るだろうってな」





 すこし、真面目な顔をしたマクレガー……。 そうだった、コイツも、戦場の何たるかを知っているんだった……。 そうか……、 レクサス公爵は、肚を括っているのか……。


 少し寂しそうな表情のマーリン。 そりゃ、親の失態を目の当たりにしてんだものね。





「筆頭宮廷魔術師には何も期待などしていない。 レーベンシュタイン、其処は間違えてくれるなよ。 俺が、心に引っかかるのは、森の民(エルフ族)の事だ。 師匠の事でもある」





 あぁ……。 そっちか……。 聖賢者があっちと手を組んでいるのは、紛れもなく私の存在が原因。 あの人達、「妖魔」と、理力には、批判的と言うか、得体がしれない邪なモノと捕らえてるからね。 


 まさか、手を組んでいる 「帝国至高教会」が召喚している異世界の人達が、その妖魔の元に成ってるって思ってないんだろうなぁ……。 それに理力もなぁ……。





「レーベンシュタイン。 今展開している魔法……。 それにさっき見せてくれた、【広域探査】 これらに、「理力」とやらが入っているのか?」


「はい、幾分混ぜ込んでおりますわ。 パワーの理力ですので、魔力の数十分の一から、数百分の一、込めるだけで持続力は爆発的に増加します。 この【呪い除け】にしても、通常の魔力では無く理力を注いでいる為、少なくとも一月以上はこのまま維持できますわよ?」


「……なんと、凄まじいモノだな、理力とは。 その言葉で、いかに膨大な力を内包しているか、理解した。 そんなものを圧縮すれば、君の云う通り間違いなく暴発する。 その結果は火を見るよりも明らかだな。 次元が歪む……と、君は云ったが、それ以上の事が起こるな。 ちょっと考えただけで、幾通りもの破滅的な事象が思い浮かぶ…… ” 渡り人 ” が何故、あれほどの力を有していたか―――。 完璧に理解した ――― 」





 真剣で、真摯な瞳。 そして、秘匿され、現実の影に追いやられた真実に到達したモノだけが会得出来る光を、その瞳に宿し私を見詰めていたんだ。





「だからこそ、森の民たちは、排除したがるんだ。 力は認めていても、その力の源泉が理解できないからな。 次元が違う。 理力とは、まさに超越した力の源からの贈り物だ。 ” 渡り人 ” 以外……、 いや、妖魔も含めてだが、それ以外のこの世に生を受けしこの世界の住人には過ぎたる力だ……。 理解できないのも無理は無いな」





 納得しよったよ…… マーリン。 「人族」としては、”勇者”は認めるけど、妖魔は認められないからね。膨大な力を有する、意志無き魔物って定義されてるモノ。 その上、魔法が異常に効きにくいから、魔術師泣かせの魔物だものね……。


 だから、一所に集めて、闇の精霊神様の眷属の方々に、魂の欠片として送還してもらうのよ。 そのことわりを忘れちゃったのが、今代の聖賢者だからねぇ……。


 皆の意志は固まった。 「百年祭」までは、身を隠す。 そして、民草の意志を確認し、問題点を洗い出す。 集合場所は、殿下のセーフハウス。 もしくは、エルガンルース王国の暗殺者ギルドの会合場所。


 これは、後で確認する事になるんだけど、マジェスタ公爵が何処まで、サリュート殿下の事を把握してるかに掛かっているんだ。 微に入り細に入り、調査してたら、殿下の個人的セーフハウスも監視対象に入っている筈だしね。





     ミャーと落ち合ってから、調べなきゃね。





 あぁ、それと、御父様の御領地……。 コッチでもいいよね。 もう、マジェスタ公爵にしてみれば用済みの男爵家。 監視の目も緩まってる筈だよね。 用心に越したことは無いけど、まぁ、此方も調査対象だよ。


 無限収納の中から、お昼ご飯として、保存してあったサンドイッチを取り出して、皆に配ったの。 飲み物ものね。 ほら、お腹空いてたら、いい考えも出ないもの。


 本来なら、漆黒の闇に閉ざされて、何が起こるか判んない空間だけど、私達にとっては、心休まるいい休憩場所だったよ。 代わる代わる仮眠もとってたしね。 色んな事が一時に起こって、みんな疲れてたんだ。 仮眠っていっても、ちゃんと寝袋出してあげたから、よく眠れたんじゃない?


 私は、何時ミャーから連絡入るか判んないから、あんまり眠っていないの。 何だか目が冴えちゃってね。 眠くないんだ。 これからの事を考え始めると、止まんなくなるし。 どうやって、あの人の元へ帰るか、それも考えなくちゃならないし……。





 転移門を使えれば、一番いいんだけどね。


 それも、エルガンルースの転移門が。


 あのバカ――― 何処まで破壊したんだろう?


 それだけがちょっと気掛かりなんだよ。





 ====================





 ミャーからは断続的に、お話が届いて来た。





 ” ユキーラ姫に繋ぎつけたよ ”


 ” 姫が、大王陛下に、王家の墳墓の入室許可貰えたって言ってた ”


 ” 帯同する人たちを厳選するって ”


 ” ダー様が是非着いて来るって ”


 ” 極力少人数にするって……。 サラーム妃陛下がお忍びでいらっしゃるらしいヨ? ”


 ” 大体、目途着いた。 ソフィア、大丈夫? かなり時間かかったちゃったけど…… ”


 ” 今から行くね。 夜の闇の帳に紛れて、隠れて、静かに、見られない様に。 待っててね ”





 易々と届く ” 念話 ” の数々。  段々と、ミャーの声が上ずって、期待で興奮して来るのが判る。 私だってそうよ。 何年振りだろうあえるの。 こんなにも長く、ミャーと離れたの生まれて初めてだから……。 




            会ったら、なんて言おう。 


         あの人に逢った事……、 どう伝えよう……。





        私は、あの人の元に行く事になるけど……。





          ミャーは如何したいんだろう……。


             私としては―――







           一緒に行きたいなぁ……。







           ミャーは、私にとって、






         姉妹にして、私の片羽だもの……。







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