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第139話 「 百年条約 」  5



 


 第一の砦の兵士の皆さん、及び、中級司令官の魔人族の指揮官様。 お世話になりました。 深々と頭を下げ、お礼を述べたの。 なんか、物凄く恐縮されたんだけど、気のせいだよね? あぁ、この正装かぁ……。 そうだよね。 だって、何にもせずに見てただけだもんね。





「聖女ソフィア殿。 命を助けて頂いた事、忘れませぬ。 このミミッデアン。 この度の審問で、人族の者と友誼を結べました。 彼から聴いたのですが、高位(ハイ)百手族(ヘカトンケイル族)との、戦い方を指南されたとか。 誠に慧眼。 体格の差を機動力で補い、体力の消耗を抑え、膨大な数の小打撃にて討つ。 いやはや、その手が有ったかと、砦の兵共も納得しておりました。 これからは、私も精進をせねばなりません」


「……戦士ミミッデアン様に置かれましても、大変な御役目の完遂、誠に有難うございました。 でも……」


「でも?」


「いくら「審問」とは言え、命の遣り取りは……」


「聖女ソフィア殿。 いささか暴走してしまいましたが、アレは立派な「審問」で御座います。 途中で止めていたらならば、私は真に友誼を結べる、人族の漢には逢えませんでした。 ―――その名をこれから生まれてくる子に授ける事も」


「……それは……。 そうなんですが……」


「貴女のお優しいお心遣い、胸に沁みます。 出来ればなのですが……」


「何でしょうか?」


「生まれて来る子が、女児ならば、貴方の名を付けさせていただきたいと思います。 優しき子になる様に。 慈しみの心を持つように。 困難に当たり、立ち止まってしまうモノに、道を指し示せるように。 賢く、優しい子供となる様に。 どうか、お願いいたします」


「……母からの願いと同じです。 ソフィアの名には、同じ想いが載せられるのですね。 どうぞ、名付けてあげてください。 でも、わたくしの様に、お転婆になっても、知りませんよ?」


「はははは! 有難い! 御許可下さいまして、感謝の極み!!! この度の「審問」で、私は精霊様から贈り物を頂きました! 「マクレガー」の名と、「ソフィア」の名。 家内に自慢いたしましょう。 そして、誉れ高き名に負けぬような子に育て上げます!」





 高らかに宣言されちゃったよ……。 ま、まぁ、別に減るもんじゃないし、気に入ってくれたんなら、名前くらいいいよ。 ……本当に、何にもして無いんだけどなぁ……。


 なんか、感謝されたり、恐縮されたり、変な感じだよ。 荷馬車に乗って、次の関門に向かおうと、砦を後にしたんだ。 遠くに見えなくなるまで、兵士の皆さんが手を振って送って下さったのよ。


 本当に歓待してくださったよ。 マクレガーも治ったしね……。 まぁ当人は、相当疲れてんのか、未だに隙を見ては、居眠りしてるよ。 荷馬車の荷台でね……。 サリュート殿下もお許しに成ってるし、まぁ、放置しておいても良いよね。





         本当に、お疲れさまでした。





 ^^^^^^^^^^





「私の相手は、確かダークエルフだったな」


「はい、左様に御座います」





 ガムデン伯爵様から渡された羊皮紙に書かれた、第二関門の情報を見直した。 魔法力の審問とある。 魔族には高位魔術を扱うモノが多々いる。 だから、人族にもそれを要求するんだ。 





     ” 同等の者で在れ。 ”





 大協約の精神はそこに有るんだ。 だから、次の審問は、魔法力の審問なんだよ。 でね、魔法と成れば、やっぱりマーリンだよ。 《エルステルダム》の森での研鑽を積んで、今や賢者の称号も受けているらしいのよ、あの、賢者 エスカフローネ=ウッダート様からね。


 と言う事は、マーリン。固有魔法とか、魔法理論でトンデモナイ開発か、発見をした事になるんだ。 教えてくんないけどね。 魔術師が自分の固有魔法を教える訳ないんだけど、ちょっと興味はあるんだ。





「ダークエルフとなると、魔力は無尽蔵と考えても良いな」


「はい……。 それに、記載事項によると、……ご姉妹が記載されておりますわ」


「相手は、その内の一人か――― 難しい戦いになりそうだ」


「そうですね。 大魔法を双方で撃ち合うのか、それとも違う方法なのかは記載されておりません。 広域魔法や、極大魔法の撃ち合いも過去にはあったそうです」


「気合を入れなければな」


「そうですね。 こればかりは、どんな「審問」を実施されるのか判りませんし、対処の方法が判りかねます。 ただ、ダークエルフと言う種族の特性から、攻撃魔法も、防御魔法も使える、魔術師として有名です。 闇神官(ダークプリースト) と言う可能性すらあります。 そうならば、回復系の魔法も駆使してきますので、要注意に御座いますね」


闇神官(ダークプリースト) かぁ……。 《エルステルダム》で、師匠に教えを受けている時に、師匠が言われたんだ。 ”決して、闇神官(ダークプリースト)とだけは、事を構えるな ” ってな。 それがダークエルフ族だとすると、無尽蔵の魔力にモノを言わせて、極大魔法の集中砲火もありうる。 用心せねばな」


「はい、その通りで御座いますね」





 対戦相手は、記載されているのだけど、「審問」方法は、各中級指揮官に一任するとの事だから、どんな、「審問」になるかは、行ってみないと判らないのよ。 第一の砦から、第二の砦までは、荷馬車でまた三日の距離。 ゴトゴト走る馬車に揺られて、辺りを見回していると、風景が一変していたの。


 彼方此方に巨大な穴が開いてたり、不自然な地形が多かったり、遠目に見える所は、散弾で地面を撃ったように、ぼこぼこになってたり…… とにかく、滅茶苦茶なの。





「大規模魔法の痕跡だ。 極大大規模のものもある。 あそこの跡などは、【星降る雨(メテオストライク)】の痕跡だし、此方の抉られた跡は、【狂気の濁流(グロウフラッド)】の痕跡だ。 何人もの高位魔術師が命を散らした事だろうな」





 マーリンが口にする魔法はどれも、莫大な魔力を要求する高位魔法なんだ。 一朝一夕には習得できない様なモノばかりよ。 心なしか、顔色が青褪めて来ていると思うの。 それでね、ちょっと思い出した事、言ってみたの。





「マーリン様、【天蝎宮(スコルピオン宮)】での事を覚えておいでですか?」


「ん? あぁ、レーベンシュタインの魔法を初めて見た時の事か?」


「ええ。 あの時、わたくしが使ったのは―――」


「初級魔法の【火球(ファイアーボール)】だったな。 とても、そうは見えなかったが」


「ええ、多分お役に立ちますよ? 想像力は」


「……何を……。 威力の底上げか?」


「ええ……。 まだ、次の所までは、距離も時間もあります。 マーリン様なら、一度見れば、お判りになるでしょうし。 イメージの問題なんですよ」


「ふむ……。 では、見せてくれると言うのか? 本来ならば秘匿するべきモノでは無いのか?」


「マーリン様の「審問」は、きっと、全力での事となるかと。 一つでも手を増やす事は、それだけ重要な事だと思います。 わたくしの知る想像力をお教えする事に、なんら抵抗はありません。 それに……」


「ん?」


「わたくしは、魔術師では御座いませんわよ」


「ふふふ……。 では、願うか。 レーベンシュタインの技術を見せて貰おう。 次の休憩の時からで良いか? 流石に走っている荷馬車の上からは……遠慮申し上げたい」


「御承知いたしました。 その様に」





 まぁ、理力を使ったり、マリ力を使うってのとは違うから、きっとマーリンの役に立つと思うよ。 高温にしたり、低温にしたり、イメージで左右される魔法の効果って厳然と存在するし、四組のクラスメイトだって、私の放つ魔法を見て、似た様な事出来たんだもの。




    マーリンなら……、 私以上に出来るって!




 第二の関門に着くまでの間、休憩時間は、ありとあらゆる魔法を撃ってみた。 勿論初級の魔法ばっかりだけど、イメージを変えてね。 最初は驚いていたマーリンだったけれど、その内、自分もやり始めて……、





「いい加減にしないと、地形が変わるぞ?」





 って、サリュート殿下に嗜められるほどだったんだよ……。






 ====================






 第一の砦を出て、三日目の夕刻。 第二の砦に着いた。 此処はちょっとした岩山の中腹に、ある洞穴タイプの砦だったんだ。 周囲を警戒する魔族の人達は、細身のダークエルフ族とか小さいグランドホビット族とか、とにかく魔法に特化した種族の人が多かったよ。


 まぁ、皆さん兵士なんだけどね。


 手に手に魔法の杖を持って、此方を胡散臭げに眺めてるって感じだった。 洞穴に近くに着くと、きちんとした扉の有る門から、何人かのダークエルフを伴って、一人の魔人族の女の人が出て来たんだ。 ローブを着ているし、そのローブになんか見覚えがあったんだ。


 ……あぁ、 そうだ、このローブ、アレルア様と一番最初に時にあった時、着ていらっしゃったローブと同じデザインだ……。 って、事は、この人……。





「ようこそ、第二の「審問」を受けに来られた人族の使節団。 私はココの責任者である、闇神官(ダークプリースト)の ミラベル=アーデン 見知り置きを」


「エルガンルース王国 使節団、サリュート=エルガンです。 魔法力の審問を受けに参りました。 よろしくお願いする」





 ピンと張り詰めた空気。 うん確かに、そうだ、闇神官(ダークプリースト)の正装だ。 厄介な……。 でも、ココの責任者って事は、彼女が中級指揮官でしょ? 実際に戦うのかな? でも、魔人族の人だし……。 控えている、ダークエルフが戦うのかな?





「サリュート殿。 この砦での「審問」は、魔法力です。 あなた方のお一人が、此処に居る私の弟子と戦ってもらいます。 この子達は、姉妹で、私の知る全ての「攻撃魔法」と、「防御魔法」を、其々に授けました。 「審問」は、第一の砦の事も有るので、制限を設けます……。 弟子を傷つけるのは、本意では有りませんし、我等は戦士ではありませんので」


「痛み入る。 では、制限とは?」


「魔法力を見る為の「審問」です。 攻撃と防御それぞれに精通している事が、「審問」の内容です。 「精神魔法」「物性魔法」は、必要ですが、勇気と誇りを示すうえで、必要なモノは、やはり。「攻撃魔法」と「防御魔法」と考えます」


「はい」


制限(ルール)は、簡素に致します。 攻撃を受けても壊れぬ防御を張り、相手の防御を壊す。 以上を以て「審問」といたします」





 ん? 不利じゃん。 相手は二人だよ? こっちはマーリン一人。 不公平だよ。 私の目がスゥって細くなって、闇神官(ダークプリースト) ミラベル=アーデン様に、視線を投げかけるの。





「どうしましたか? 聖女ソフィア様」


「ミラベル=アーデン様。 ガムデン伯爵のお話では、一対一の審問とお伺いしております。 ご姉妹での審問の意味をお知らせ頂きたいのですが」





 まさか第一の関門の意趣返しをする為に、こんな事するのかと思った。 ミラベル様の口が開き、真意を紡ぎ出したの。





「すみません。 二対一になる事は、申し訳なく思います。 しかし、この異例の「審問」をするにあたり、正確に人族の力を計らねばなりません。 防御も、攻撃も、わたくしの砦の第一人者にして、魔法解析が可能な者。 更に裁定官……。つまり、わたくしですね、以外の者となれば、一人に絞り切れませんでした。 その姉妹……、 ルカとルータは、まだまだ成長の途上では有りますが、「攻撃」と、「防御」においては、わたくしと肩を並べる者達です。 ルカが、「攻撃魔法」。 ルータが、「防御魔法」を専門にしております。 この二人ならば、十分な「審問」を行う事が可能です。 二人一組での、「審問」とお考え出来ませんでしょうか」


「……「証人官」としては、お気持ちもわかりますが……、 人族に対し、余りにも……」





 私が口を開き、抗議の声を出そうとした時、別の声がしたんだ。





「レーベンシュタイン。 大丈夫だ。 その「審問」受けさせてもらう。 防御を展開したまま、「攻撃」する事も、「審問」の内なのだろう。 全力を以て対峙させてもらう。 そうだな―――――― 俺が、最終防衛戦の最後の生き残りって事でどうだ? 俺の後ろには、退却中の友軍、及び、民草が列をなして、前線から引いている。 殿しんがりにして、護りの最終線。 現実でもあり得るだろ」


「マーリン……様。 貴方はそれで良いのですか」


「王国の者として、賭けねばならぬ時が有る筈。 それが、今だという事だ。 なに、きちんと「審問」と言う舞台の上で、「制限(ルール)」が有るのだ。 命、削れ切る所まではいかんだろ」


「それにしても……」


「マクレガーに笑われたくないからな。 逃げんよ」


「御意に……」





 こ、コイツ、何が有った? 《エルステルダム》の森で、何が……。 そう言えば、健康的な体躯に成ってるし、血色も良くなってる。 漲る魔力も、真摯な態度も、何より、その強固な意思……。 



       賢者の尊称を戴く者……。



 そうか、マーリンも高みに届いたんだ。 その力を何に使うか、明確に意識出来るんだ。 彼の背後に居る者達の安寧の為に……。 よし、わかった。 何も言わない。 貴方の矜持と誇り。 見せて貰う。





「出過ぎた真似を致しました」


「ご理解頂けて、幸いに御座います。 魔法力の「審問」につきましては、攻撃も、防御も、大きな魔方陣を使用致します為、専用の場所を設けました。 あちらに御座います」





 岩山の向こう側を刺し閉める、ミラベル様。 みんなでそっちに向かう。 峰を越えて視界が開けると、其処には……、


 巨大な擂鉢状の窪みが有った。 周囲の壁は、耐魔法障壁でコーティングされている。 この中では、どんな魔法が使われたって、外側には影響しない……ようにね。 



 ある意味、闘技場(コロッセアム)だよ……。





「では、宜しいですか。 魔法力の「審問」を始めさせていただきます」


「はい。 マーリン、頼んだ」


「任せてくれ、殿下」





 マーリンは、スッと落ち着いた表情で、その闘技場(コロッセアム)に降りて行ったんだ。 片手に魔法の杖。無地の灰色のローブ。 撫でつけられた藍色の髪……。 背中が大きく見えたんだよ。



 闘技場(コロッセアム)の其処に降り立ち、ダークエルフ姉妹と相対する。 無詠唱で、マーリンの踏みしめる床に、魔方陣が浮かび上がる。 遠目にしか見えないけど、重防御結界だね、あれは。 魔力ごっそり、もっていかれる奴……。


 彼方側の、姉妹は、片方が重防御結界を張り、もう一人が、攻撃用の魔方陣を紡ぎ出してるよ。 攻撃魔方陣……。 火炎系かと思ったら、複合してた。 いきなり、高位魔法かよ……。 二重三重に、魔方陣が紡がれていく。 魔力の発散が、辺りを威圧する……。 緊張感が高まり、そして……、







  辺りを揺るがす、轟音と共に…… 「審問」 が始まったんだ。







 ^^^^^^^





 騎士、剣士の戦いと違って、魔術師の戦いは時間が掛からない。 物理法則をも捻じ曲げる、魔法の力は相手を殲滅するか、術が分解されるかで、勝負は決する。 そこに込められた、膨大な魔力を消費し、魔法を行使する。



     耐えるか、破られるか。 



 攻撃する側も、全力で有ればあるほど、二弾目に継ぎ込める魔力は減少する。 勿論、並々ならぬ集中力も要求される。 この世界に魔法騎士が存在しない理由にもなるんだ。 強大な広域魔方陣を組上げる能力と、一点突破に全てを掛ける能力をと高次元で統合するなど、不可能なんだよ。


 ダークエルフのルカさんが放つ攻撃魔法……。 優に一個師団相手の魔法だよ。 雷撃が、火炎が、光弾が、次々とマーリンの魔法防御壁に突き刺さる。 その度に虹色の光を撒き散らして、霧散する。 


 なんて、強固なのかしら……。 あれ……、【絶対防御魔法】じゃ無いの? 長い長い詠唱と、膨大な魔力を必須とする、最高極大魔方陣……。 本来ならば、城塞の重要部分を、何人もの魔術師が長い時間を掛けて編み、展開する様な代物……。 それを、個人がつかえるなんてね。


 全く、貴方、何処でそんな魔法を覚えたんだ。 それに、その魔力……。 内包魔力量が少ないって、嘆いていた貴方は何処に行ったんだ? 


 極彩色の光の粒が、マーリンの周囲に撒き散らされていく……。 ん? んんぅん? なんだ? 動いてねぇ? アイツ、魔方陣展開したまま、歩いてねぇ? マジか!! 普通は、地面に描き紡ぎ出す、【絶対防御魔法】を、自分に掛けてんの? そんな事、出来んの?


 あっちのダークエルフ、めっちゃ焦ってんじゃん。 一旦、魔方陣を治めて、なんか、長い詠唱をはじめやがったよ……。 薄っすら聞こえて来る詠唱……。 


 お、おい!!! ここで、【星降る雨(メテオストライク)】使うつもりか!! マズイ。 私は、この場所に居る皆を範囲に捉えて、【絶対防御魔法】を紡いだんだ。 そうさ、私も出来るよ。 でも、それは、あくまでも ” 理力 ” を使ってだけどな!!




 詠唱が終わる。 


 掻き曇る、天空。


 轟音と共に、隕石が降り始める。


 空気を焦がす匂いと、耳をつんざく轟音が周囲に満ちる。




 闘技場(コロッセアム)が、瞬く間に、穴ボコだらけの廃墟に代わって行く。 物凄い土煙、煙の中に稲光、火炎の渦、切り裂く風が吹き荒れているんだ……。 こ、こんなの見た事無いよ……!


 なんとか、私達はその場に留まれた。 周囲の状況は控えめに言っても、ボロボロ。 私が、【絶対防御魔法】を施した範囲以外は、瓦礫に埋まっているんだ。 




 ま、マーリン!!!! マーリンは!!




 視線を闘技場(コロッセアム)に向ける。 がっくりと膝を付いている、ダークエルフが目に写った。 アレは……、 魔力切れ……。 ま、マーリン!!! 吹き飛んじゃった?! い、いや、ゆっくりと歩いてる……。 しっかりとした足取りで、もう一人のダークエルフに向かって……、 


 ドサッって音を立てて、倒れ込んだダークエルフを護る様に、もう一人のダークエルフが、彼方もまた、【絶対防御魔法】を詠唱して、防御の魔法を紡いでいる……。 ドーム状の結界の様な防御魔法。 その中に居る二人のダークエルフ。




    闘気と魔力が渦巻いているんだよ。




 マーリンが魔法の杖を振り上げる。 杖になんかの魔法が掛かっているんだ。 なんだ、なんだ? 目を凝らして、その魔法を解析すると……、【浸食】? えっ? どういう事?


 振り下ろされたマーリンの杖。 物理攻撃でもなく、魔法攻撃でもないそれは、相手の【絶対防御】に触れる。 うん、触れているんだ。 その結節点から、虹色の光の粒が爆発したみたいに吹き上がってる。


 あ、あいつ……! 相手の魔法……、接触分解してやがんのか!!! ま、マジか!!! こ、こんな使い方する奴、知らんぞ……。 そ、それに…… ま、魔力!!! こんな使い方して、魔力が枯渇する!!!!


 ドンドン薄くなる、【絶対防御魔法】 フラフラし始めてるマーリン。 い、意地を張るな!!! 十分だよ!!! もう、十分だ!!! 死んじゃうぞ!!!


 ボワンって感じで、マーリンの身体から緑色の光が溢れだすんだ。 魔力の塊? どう……いう……こと……なの?


 頑張って、抵抗していた、【絶対防御魔法】が、ついに力尽きて……


 虚空に霧散したんだ。






「それまで!!! 「審問」は成された! 人族、使節団には、十分な魔法力が有ると、魔族と同等、……いや、それ以上の魔法力を有すると、審問する!!!」





 闇神官(ダークプリースト) ミラベル=アーデン様の声が、半壊した闘技場(コロッセアム)に響き渡る。




        ドサリと倒れ込むマーリン。





       彼の元に、全力で駆けつけたのは……、





          言うまでも無い事よね。









マーリン回です。


彼もまた、最高の人材でした。

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