第137話 「 百年条約 」 3
お気に入りの喫茶店
” 店名 ” は、笑っちゃうけど「ポエム」 看板見た時は、目を疑ったよ。 マジで。 勤めてた会社の側にあった、時代掛かった「喫茶店」と同じ名前だったんだもの。 でも、そこのアイスコーヒーが絶品でね。 残業前の休憩時間とか、早朝の出勤前とかに、立ち寄って、憩いの一時を過ごしてたんだ。
そん時も、思ったんだよね、ここの店主さん、いつ寝てるんだろうって……。
まぁ、お店の名前が同じだけなんだけど、なんか猛烈に懐かしくなって、もしかしたら、中に ” あの人 ” が居るんじゃないと想っちゃったりもした事は…… 内緒。
待ち合わせにも使ったりしてたんだもの……。 ちょ、ちょっとくらい……期待してもいいよね。 悪くないよね。 はぁ……、居なかったけどさぁ……。
そんな「ポエム」は私のお気に入りのお店。 でも、今日はちょっと真剣な顔で、マスターに声を掛けるの。 マスターはハイオークだけどね。 つぶらな瞳の、人懐っこい人柄のいい人よ。
「マスター、来てらっしゃる? 伯爵様」
「はい、ソフィア様。 何時もの場所に」
「あぁ、此方は、使節団の方々。 カロンの街の新顔さんだから、宜しくね」
「はい。 皆さん、ようこそ「ポエム」に。 歓迎いたしますよ」
ニッコリ笑う、ハイオークのおじさま。 まぁ、シュールっちゃぁシュールな光景だよね。 案の定、皆さま固まってる。 マクレガーに至っては、腰の剣に手が伸びそうなのを、プルプル震えながら堪えてるの。
「伯爵様がお待ちになって居られるようですので、参りましょうか。 審問の件でのお話だろうと思われますので」
私がそう言うと、四名様、頷いて後に続いてくれた。 良かったよ、騒ぎを起こさなくて。 まぁ、この街に居て、【妖魔の目】を展開して見たら、周りは全部魔族の方々だから、早く慣れては欲しいなぁ……。
ちょっと、無理かなぁ……。 まぁ、繊細な人達はあんまりいないし、変な戯言を言う人達でもないから、厄介事にはならないと思うんだけどなぁ……。 どうなんだろう?
テラスの何時もの席で、ガムデン伯爵様が待っておられた。 何時もの寛いだ雰囲気とは違い、今日はきちんと正装でのお出ましだったよ。 正装……。 うん、南部審問軍団、試練の回廊 司令官の正装だよ。
キッチリと重装鎧を身に着けて、テーブル脇に重そうな長剣が立て掛けられて居たんだ。 まぁ、武骨な魔人族の武人の風格が、辺りを圧倒してるんだよ。 これも、多分審問の一環だよね。 私も、きちんとお話する為に、コートを脱いだんだ。
私達の姿を確認すると、伯爵様は音もたてず、立ち上がったんだ。 雰囲気は……、そうね、大将軍様って言う感じ? マジモノの初顔合わせだからね。 エルガンルース王国、百年条約 更新使節団の 「証人官」としての立ち合いになるんだ。
私も――― 、頑張ろう!
「お待たせいたしました。 エルガンルース王国 百年条約 更新使節団の方々をお連れ致しました」
「使節団の責任者 サリュート=エルガン です」
「南部審問軍団、「試練の回廊」司令官 ネクサリオ=ガムデン である。 此度は、百年条約の更新に見えられたのですな。 その少人数で」
「……そうです。 我々 五人で、参りました」
ガムデン伯爵……。 なんかを探ってらっしゃるね。 サリュート殿下、探られても問題なさそうにしてる。 当たり前っつうか、どうぞ的な、そんな感じ。 きっと、王国の文書にマニュアル的ななんかが有るんだと、確信したよ。
それ程、普通な感じなんだ。 全てを曝け出して、許可を受けるみたいな……。 私は……知らんかったけど、それでも、同じようにしたんだ。 ガムデン伯爵様と、サリュート殿下の間に、なんかの目に見えないやり取りが、あったんだろうね。
闘気というか、覇気と言うか、ビリビリと痺れる様な空気が、私達を取り巻いて来るんだ。 これも……、 審問の一種かな? 良く判らないなぁ。
私達は、その空気を纏っても、一切抵抗する事無く、ただただ、受け入れるんだ、 そして、使節団として切に条約の更新を願っている気持ちを曝け出して居たんだ。
ふっと、その雰囲気が緩む。
「不躾な事をして済まなかった。 君たちの本気が見たかったのだ。 なるほど、一国の王子だけの事はあるな。 その腹、豪胆にして繊細。 「百年条約」を通し、世界の理を護り、依って生きとし生ける民草の安寧を護る……か。 まったく、エルガンルース王国の漢達は…… よくもまぁ、四人で……」
「五人です、閣下」
「ん? いや、済まん。 五人であったな。 座ってくれ。 話がある」
ほら、ガムデン伯爵、私の事を数に居れてなかったでしょ……。 あれ、ワザとだよ。 サリュート殿下が、最初に五人ってわざわざ言ったのに、四人って言ったの。 ちゃんと私の事を、使節団の中に入れているか、無意識のうちに外してないかってのを、確認するためなんだよ……。
なんか、嬉しかった。
ガムデン伯爵様のお気遣いと、サリュート殿下の当たり前な感じが……。 名実ともに、私は使節団の一人に成れたと思ったんだよ。 王国の民だよね、私も……。 よし、気合入って来た!!
さて、場所はさっきと同じ 「ポエム」のテラス。 眼下にレテの大河が広がっているんだ。 透き通る様な、潮風。 柔らかな陽光。 ハイオークのマスターが飲み物を持って来てくれた。 テーブルに私を含め六人が付く。
「時にサリュート殿。 僅かな人数での使節団は、前代未聞と言う事はお分かりか?」
「誠に申し訳ない。 ” 勇者 ” も、相応の人数も用意できぬ、不甲斐ない王子では有りますが、気概だけは有るつもりです」
「「勇者」を用意できなかったと仰るが、貴殿の外見は強く ” 渡り人 ” の、特徴をされている。 そして、その身に理力すら感じるのだが?」
「……私の母親が…… ” 渡り人 ” だったのです」
ハッと息を飲む、マーリンと エルヴィン。 そうなんだよね、国王陛下の寵姫とか王室歴には、記載されてるけど、サリュート殿下の母君は……、
ユミ = オオタイラ
歴とした、日本人の ” 渡り人 ” マーリンの実親である筆頭宮廷魔術師 ハリーダント=ボルガー=アルファード卿が召喚失敗した結果、この世界に連れて来られた、哀れな人。 ……年から言って、多分、女子高生……くらいだよ。 マーリン、目を閉じて俯いちゃったよ……。
「左様か。 黒髪、黒目。 理力を纏い、周囲の魔力を「その身」に吸収する者。 顔を隠しておられたのも、その妖気を抑える為ですな」
「……はい。 先代の筆頭宮廷魔術師が、仮面を作って私が半妖のモノとわからぬようにして下さったのです」
おおぉぉ……、 これも、知らんかった。 あの銀箔の仮面……。 私の眼鏡と同じだったんだ。 お母さんが、 ” 渡り人 ” だから、強く出たんだね。 どおりで、宮廷が躍起となって、サリュート殿下の存在を隠すわけだ。 毒殺しようにも、「勇者」の力がそれを跳ねのけるのね。 殿下を弑す為には、物理的にどうこうする必要が有るんだ……。
でも、理力を纏った人を、傷つけるのは、難しいよね……。
殿下……、小さい頃から、暗殺の手をずっと受け続けていたんだ……。 言葉に成らないよ。 よくぞ、曲がらず、拗ねず、真っ直ぐに……。 お小さい頃の殿下が、妙に死にたがっていたのは……、 そう言う事だったのかぁ……。
一国の王子が「半妖」とはね。 あのエロ爺でも、こりゃちょっと手出しが出来ない筈だよ。 エルフ族のクソ爺からしたら、ほんと、気に障る存在だったんだろうなぁ。 ――――だからか、あのエロ爺、この機会に、サリュート殿下の排除を目論んで、出来るだけ少ない人員で、オブリビオンに送り込んだのは。 死んで来いって事なんだ。 何処まで汚い事考えてんだ? あの聖賢者様は!!
「ふむ、相分かった。 貴殿の力はこれで予測がついた。 ―――護衛の騎士殿、闘気を仕舞いなされ。 この場では貴殿達に危害を加える気はない」
伯爵様の見据える先に、マクレガーが居た。 座っても、ピンと張り詰めた闘気を体にまとっているの。 臨戦態勢って奴ね。 判っちゃいるけど、身体が反応してるのかと思っていた。 伯爵の言葉にその闘気が体の内にスッと納められるの。
あぁ、マクレガーも、一流の騎士になったんだ…… こんな芸当が出来るなんて、よくその高みにまで登ったよ。 ちょっと、苦笑いを浮かべて、軽く頭を下げている処なんて、ほんと、堂々としているね。 まいったな。
「あまりに異例な事でもある。 魔人王様達の中央会議でも、議題に上った。 故にこちら側の対応も、異例な対応としたい。 良いかな」
「審問は辛く、厳しいモノと。 覚悟はできております。 この身を賭して、その審問に対する事をお約束しましょう」
「良き覚悟であるな。 異例な審問ではあるが、中央会議でも承認を受けた正式な審問を執り行う。 サリュート殿以下、各人には個別の審問を受けて頂く」
「個別? と、申されますと?」
「普通は、使節団を一団として、我等と対峙して頂き、戦闘力、魔法力、大協約への理解、強き意思 等、戦闘中に見極める事に成って居る。 が、その人数では、擦り潰れてしまう事、必定。 よって、個別に見極めさせて頂くという訳だ。 「試練の回廊」を進んで頂き、各関門を設け、使節団の中のお一人、お一人が、審問を受ける事になる」
サリュート殿下の顔が引き締まる。 自分だけが受けると思っていたらしいんだ。 仲間を思いやる心が強い殿下らしいね。 ウンウン、流石に代表として、魔族の支配領域に来るだけの事はあるよ。
「我等、一人 一人 を、ですか……」
「そうだ。 個人を評価し、審問するのでは、個人の資質に寄るものが大きすぎる。 よって、「人族」と言う括りで、審問せねばらぬ。 通常の審問では、大規模戦闘をする事によって、「人族」の力を計るのだ。 いかんせん……此度はそれが出来ぬのでな」
「……判りました。 いかようにも。 いいな、お前達」
静かに頷く、漢達。 もうね、悲壮感に溢れてるんだよ。 見てられないよ……。
「聖女、ソフィア殿」
「えっ、あっ、はい……、 何で御座いましょう?」
「貴方は、全てに出て貰います」
「はい?」
「「証人官」として、彼等を見守り、そして、助言を与えてください。 審問の手順、内容を此処に記載しておきました。 審問は……明後日から始めます。 そちらの準備が整い次第、始めようと思いますので、「試練の回廊」を進んで下さい」
一枚の羊皮紙を私に差し出す伯爵様。 ……ガイド的な立ち位置になるんですね。 敢えて、「証人官」って言われてますけど、それって、オブリビオンのって事ですよね。 助言を与えるって事で、何かしら足りないものが有ったら、補えって事ですよね。
また、そんな大役を……。
ニヤリとした笑みを頬に私を見詰めるのよ。 ” 判りましたね ” って、言外に言ってきやがり下さりますよ、この司令官様は! だから、私は、エルガンルース王国側の人間なんですってば!!
話は終わったとばかりに、スッと立ち上がる伯爵様。 皆もそれに続き立ち上がる。
「サリュート殿下。 善き結果を期待しております。 わたくしは、北の端、跳躍門でお待ちしております。 その行く手に光あらん事を」
「有難うございます。 全力で参ります。 あなた方の配慮に対し、感謝いたします。 精霊様に感謝の祈りを、種族は違えど、あなた方にも御加護を」
差出される手と手。 ガッチリと握手を交わされる。 契約は整った。 審問は三日後から。 内容は、私の手の中の羊皮紙に記載されている。 頑張んなきゃね。
立ち去る伯爵様の後姿に、最敬礼を捧げるの。 ホントに有難うございました。 助かりました。 ご配慮、感謝申し上げます!
伯爵様の気配が無くなり、顔をあげると、皆も一様にホッとした顔をしている。 どさりと座り込む面々。 いやぁぁ、緊張したよ。
「レーベンシュタイン……。 君は、このオブリビオンで、聖女と呼ばれているのか?」
「えっ、ええ、まぁ……。 錬金で、ポーション類を作ったり、お薬を作ったりしてましたから……。 伝染病症状の患者さんに、ハイポーションをとか……。 ―――それで、そのような名で呼ばれる様に成った次第で御座います」
「どこに行っても、ソフィアだな。 君らしいなぁ。 君の侍女が言っていたよ。 困っている人が居たら、直ぐに手を差し伸ばすとね。 たとえそれが誰であっても」
「そ、そんな……、 こ、事、無いですよ?」
「事実、君は、此処に来て、私達と帯同してくれる。 「百年条約」締結に力を貸してくれる。 紛れも無く、偉業と言える事だよ。 むしろ、誰もが不可能な事だと言う事を、君は易々とやってのけたんだ」
表情を寛げた、サリュート殿下。 そんな顔出来たんだ。 額から頬にかけての痣……よく見たら、妖紋印が崩れた形してたんだよ。 納得だね。 これじゃぁ、オモテに出られない訳だよ。 毒を盛られたのも本当の話だろうし、苦しまれた事も事実だろう。 でも、その痣は、生まれた時からあったんだね。
だから、先代の筆頭宮廷魔術師が仮面を作った。
話は繋がるんだ。 でも、貴方が居ない間、エルガンルース王国は、大丈夫なの? 私の疑念が顔に出ちゃったんだろうね、エルヴィンがその答えを語り始めたんだ。
「今のエルガンルース王国は、マジェスタ大公の言いなりです。 が、大勢が彼に傾き、思うままの施政が現実化した現在、あの方の警戒は大層緩んでおります。 サリュート殿下が居ない今ならば、それはもう――― しかし、こちら側も只では明け渡せません。 然るべき人物を、極秘裏に王宮内に招きました。 勿論、彼方側には漏れぬように」
意味深な表情でね、そう言うの。 誰だろう? 然るべき人物って。 エルヴィンが、サリュート殿下に目配せしたんだ。 殿下は頷く。 何もかもを言っても構わないっていう風に、目を閉じ深く頷くんだよ。 きっと、この場に居る皆にも聞かせたかったんだろうね。
「然るべき人物とは、ガルフ=エルガン王兄殿下に御座います」
「えっ、行方不明の殿下ですの? 私のいない間に、お出ましになられましたの?」
「レーベンシュタイン。 きっと、ガルフ殿下は、君の事は生まれた時から知っていらっしゃるよ」
「どういうことですか?」
「諸国を視察中に襲われたのは事実。 しかし、その際に刺客の背後に居る勢力をあぶりだす為に、市井に潜られたんだ。 殿下自身、凄腕の冒険者としての能力もおありになった。 そして、時期を見て、王都エルガムの闇に身を置き、裏側からエルガンルース王国を見守られて来たんだ」
「裏側から?」
「ああ、殿下が行方不明になった後、直ぐに、アーレバースト=エルガン殿下が王太子として即位し、そして国王陛下に登極された。 周囲の思惑を以てね。 ガルフ殿下は傑物過ぎたんだ。 ルース王国系の貴族の恐怖が有ったんだよ、その時に。 表立って動くと、何時暗殺されるか判らない。 であるならば、王国を闇の中から護ると仰られたらしいのだ」
「では……、 わたくしが生まれた時から、「御存知」であるとは?」
「殿下の市井での御名前は、” 冒険者 カーザス ” 色々な闇の中でも、人脈と、情報の集まる深い闇の中に潜り込まれたんだそうだ。 ……娼館ギルドにな」
「カーザス……さん……」
あの人が…… 王兄様……。 出自は貴族っぽいと思ってたけど……、 びっくりした。 本当にびっくりだよ。 サリュート殿下が、後を繋ぐように、お話してくださったんだ。
「叔父上は、今、王宮の中に居る。 一般職員……としてな。 まぁ、護衛官だな。 もう、叔父上の事を覚えている者は、そうそう居ない。 大臣達、公爵達、そして、国王陛下にさえ、お話ししていない。 アンネテーナ妃陛下にのみ、お話を通してある。 体調がお悪い妃殿下にその事をお話するのは躊躇われたが、あの蛇の巣の様な王宮で、少しでもと思い、お話申し上げた。 ” よくぞ話してくれました ” とのお言葉を頂き、その後、妃陛下の体調もお戻りに成って来た…… 王宮内で、現国王陛下や、マジェスタ公爵がやっている事をつぶさに観察されている筈なのだよ。 だから、私は 「百年条約」に専念できるんだ」
「なるほど……左様でしたか」
「時に、ソフィア。 お前の服装はなんだ? 見たことが無い装いなのだが?」
「はい、魔族の領で、「証人官」のお仕事をしましたので、此方の方々から、正規の「証人官」の装束を頂きました。 この装束を着ている限り、オブリビオンでは、どんなに高位の方からも、攻撃を受ける事はないとの事。 恙なく、「百年条約」を更新する為に、必要だと思いましたので、着用しております」
「……それは、また……。 ソフィアらしいな」
眼を真ん丸にして、サリュート殿下、エルヴィン、マクレガー、マーリンは、驚きを隠せなくなった。 特に、エルヴィンの驚きは大きいのよ。 彼、「証人官補」の資格を取得したからね。 だから、生国以外で、「証人官」に列せられる事がどんな事なのか、良く知ってるのよ。
「レーベンシュタインは、確か、《ノルデン大王国》でも、「証人官」に列せられた筈……。 いや、はや、何とも、言葉に出来ぬな」
「勿体なく。 遅ればせながら、エルヴィン=ヨーゼフ=エルグラント様に置かれましては、「証人官補」の資格取得、おめでとう御座います」
「はははは、君に云われると、何だか面映ゆいな。 ミャー殿から、レーベンシュタインの作った教本を借りる事が出来たのだ。 アレが無ければ、相当難しかった。 本当に心の底から問いたい。 レーベンシュタイン。 君はいったい、何者なのだ?」
「嫌ですわ、エルヴィン様。 わたくしは、ブロイ=ホップ=レーベンシュタイン男爵が娘。 ソフィア=レーベンシュタイン。 盾の男爵家の娘に御座います」
「……そうか」
眩しそうに見つめる、エルヴィン。 まぁ、なんだ。 それ以外の者では、無いんだよ。 強いて言えば、 ” あの人 ” の妻になる予定の者……かな。 ニッコリ笑っておいた。 誤魔化そう。 うん、笑って韜晦しておこうね。
風光明媚なその場所で、美味しい飲み物を頂きながら、彼等の近況やら、王国の情勢やらを聞かせて貰った。 皆、頑張ってるね。 民草の安寧を望み、精霊様に祈りを捧げ、政界の理を護り、懸命に、懸命に努力してきた。 判ってるよ。 うん、とっても良く判ってる。
だから、頑張りましょう。
伯爵様から頂いた、羊皮紙に書かれた、審問の内容を皆さんで読込んで、誰がどの審問を受けるのか、その場で考えて、決めたの。
戦闘力の審問には、マクレガーが、
魔法力の審問には、マーリンが、
大協約への理解の審問は、エルヴィンが、
――― そして、強き意思の審問には、サリュート殿下が、
当たられる事になったのよ。 決意を込めた固い意思を孕んだ光を溢れんばかりに宿した瞳。 なんだか、カッコいいね。 眩しいくらいだよ。 きちんと準備して、「試練の回廊」の大門を開けよう。 決して失敗は出来ないんだから。
私達は、三日の間に全ての準備を整えて……
「百年条約」への、審問へと臨んだんだ。
大門を抜けて、
「試練の回廊」足を踏み入れたんだよ。
本日も、二話投稿に御座います。
楽しんで頂ければ、幸いです。