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第106話 「銀級錬金術師」の腕の見せ所

 




 ベッドの上から失礼している。 まぁ、許してくれてるんだから、大丈夫だろう? そんで、恐怖感が薄らいできたから、この神官であるアレルア=メジナストさんに、お話を伺おうかと思ったの。





「あの……、 アレルア様……」


「何だろうか?」


「アレルア様はこの辺りの領主様とお聞きしましたが?」


「そうです。 サブリン村を含め、この辺りの領主を魔人王様から、辺境伯として拝命しております。 この村を訪れていたのは、病人が出たからです。 ご存知ないととは思いますが、体中に赤い斑点の出る、厄介な伝染病なのです。 初動に失敗すると、一気に広がりますから、私が参りました」





 ん? なんか、症状に聞き覚えが…… 体中に赤い斑点? 熱は? 関節怠くない?




「患者の方、熱が高くなっておりません? 関節の痛みとか、倦怠感を訴えて居られませんか?」


「ええ、そうなんですよ。 よくご存じで……。 なにか、思い当たる事でも、有るのですか?!」


「症状からですが、多分、「点赤熱」だと思われます。 ミッドガルドでも同様の伝染病が御座います。 患者の方々、湖沼での作業か、枯れた小川の近くでの作業をされておられませんか? 生水を飲まれた可能性は?」





 アレルアさん、驚いた顔していたんだよ。 なんか、大当たりみたいだね。 「点赤熱」は、淀んだ生水に生息する、微細な生き物が身体の中に入って、血を吸うんだ。 血管を破りながらね。 だから、体中に赤い点々が出来るんだ。 全身に回ると、炎症起こして、熱が上がって、関節痛が酷くなる。 


 一旦、罹患すると、なかなか治らない上、患者さんの体液から、伝染するのよ。 特にシーツとか、枕からね。 熱には弱いから、吸い込まない様にして、熱湯で洗濯するのよ。 注意深く、対処する必要があるの。 レーベンシュタインの御領地でも、そうしてた。


 でもね、この病気、特効薬があるのよ。 さらに言えば……、 私、それ、作れるの。





「この村は、開拓途中でね、周囲にはまだまだ、畑を作らなけばならないんだ。 畑を広げる為に、森を切り開き耕さねばならない。 いま、ソフィア殿が言われた通り、湖沼や枯れた川が点在するのだよ。 この辺りはね。 作業中、喉が渇くのは当たり前。 生水を飲むなともいえぬしな」


「井戸は?」


「飲料に適した水が湧く井戸は、まだ掘れていない。 流量のある川の水を汲み、一度沸騰させてから飲むようには指導しているのだが……」


「左様ですか。 その患者の方々の治療は?」


「私が、治癒魔法で治療している。 が…… 治りが遅い。 今は他の患者が出ない事を祈るしかない」


「お薬は? 薬草か何か?」


「……お恥ずかしい限りなのだが……、 薬師がこのような辺境までは来てくれない。 私が作れれば良いのだが……。 それも出来ない。 今あるのは……、 こういったものだけなのだ」





 そう言って、差し出されたのは……。 うーーん、コレ、栄養剤みたいなもんじゃんか!! これじゃぁ無理だよ。 えーっと、えーっと……





「メジナスト辺境伯様  イラクサ草、マルケネの花、ルベルの蔓、エレマスの球根、揃いますか?」


「はっ? どういう意味でしょうか?」


「わたくし、少々錬金術を嗜みます。 「点赤熱」の薬ならば、生成できます。 何処かの……お部屋の片隅と、先ほど申し上げた薬草根が御座いましたら、四半時で生成致します。 如何でしょうか?」


「こ、これは……願っても無い。 早速用意しましょう。 薬草類に関しては、私では判りませんので、ノールを呼びます。 あの子は、ああ見えて、そういった物に詳しいのです。 早速に手配いたしましょう!」





 立ち上がって、アルレアさんが出て行かれた。 さあ銀級錬金術師の力、発揮しようか!  夜着のままだけど、いいよね。 これ結構、暖かいし部屋着にだって出来そうだしね。 おや? 下着……付けて無いよ? 




    まぁ……いっか……。 




 着替えさせてくれたの、口振りからして、女性の方の様だしね。


 ベッドから降りて、改めて自分の状態を確認したの。 魔力、理力共に満タンになってる気がする。 今、なんか魔法展開してるのかなって思って、確認してみると、「妖魔の目」だけが常時展開されてるんだ。 不思議に思って、ちょっと切ってみたら……。


 うわぁぁぁ!


 目が回る~~~~~~!!


 魔力の濃度がめっちゃ濃いよ!! 「黒き森」の最深部並みだよ……。 その上、色だって、極彩色……。 何だコレ? 慌てて、「妖魔の目」を常時展開し直した。 ホッと一息つけた。 ……まぁ、なんだ……魔物達が普通・・に、生きて行くには、これくらいの魔力濃度が有る所でないと、いけないんだね。






 ビックリしたぁ~~~。






 おっかなびっくり、部屋の中を見てたら、ノールがアレルアさんに連れられて、入って来た。 私の姿を見て、ちょっと驚いて居たね……





「失礼しました。 部屋着をお持ちしましょう。 ソフィア殿の御姿、ノールには刺激が強すぎる様ですから」





 えっ? マジ? これで? 本気? ……奥床しい、って言うか、初心? そうなの? 厚手の夜着だよ? えっ? 素足がマズいの? 脹脛が見えてるのが、マズいの? えっ? えっ? えっ?





「淑女のあられもない姿に、少々照れて居るようですね。 ノール、手短に」


「は、はい…… あの、薬草の事ですよね……。 この神殿の一室に色々と保管してありますから、ご、ご、ご案内します」


「ありがとう……。 お願いしますわ」





 頭を下げてお礼を言うと、ノール君、なんか、慌てて手を振って……、 右手と右足同時に出して、お部屋を出て行ったよ。





「素直な良い子です。 直ぐに部屋着をお持ちします。 フレイヤ、頼みましたよ」





 お部屋の外に待機してたらしい、茶褐色の肌をした、柳耳で、めっちゃスタイルのいい、メイド服に身を包んでいた人が、お部屋に入って来た。 ダークエルフ族の人だ……。 話しには聴いて居たけど……、 綺麗な人ね……。 どうしてエルフ族の女の人って、種族は違えど、こんなに綺麗なんだろう?


 精霊様、不公平だよ……。 ツンとお澄まししたまま、部屋に入って来たその人は、手に質素だけど、温かみのある色をした、服を持って来てくれたんだ。 フレイヤさんって言うのか…… 目の端の方で、私の着替えを見てたよ。 チラチラって感じかな? 得体の知れない私だから……、監視の対象かな?


 大丈夫だって!! 私の戦闘力なんて、ここ、オブリビオンでは皆無だから!!! オトナシクしてますから!!! だから、そんなに警戒しないで!!!





 ******************************





 結果的に「お薬」は、生成出来た。 ノール君に連れられて行った、薬草が保管されている小部屋で、作業させてもらったんだ。 棚にぎっしり入った、薬草。 生薬。 草根木皮。 いやぁ~~、良い物見せて貰った。


 どれもこれも、一級品。 まぁ、めったに見ない薬草ばっかりだったよ。 コレ噛んどきゃ、疲れを覚えない草とか、どんな毒でも、一発解毒出来る、薬草の根っことか……。


 ミッドガルドの薬師さんが見たら、卒倒ものだよね。 ノール君 曰く、その辺に生えてるって。 なんで、薬草だって判るかと言うと、この神殿の薬草図鑑に載ってたからだって。 はぁぁぁ―――― 恵まれてんね。 


 と、言う訳で、贅沢な薬草の使い方をして、「点赤熱」の特効薬の「エルキエル剤」ってのを生成したんだよ。 まぁ、一級品の原材料だからね。 本来だったら、何段階も凝縮繰り返さなきゃならん作業が一回の抽出で済んじゃったんだ。





         オブリビオンの大自然の恵みって、



             凄げぇぇ―――!







^^^^^^




 でね、患者さん達に逐次処方していったんだ。 まぁ、処方して飲ませるのは、アレルア様がしたんだけどね。 何日か、色んな「薬」とか、ポーションを作ってたんだ。 神殿にある、備蓄の薬があまりにもショボかったからなんだけどね。


 十分、必要だろうと思われる薬の数々を作ってたら、フレイヤさんが薬草保管部屋にやって来たんだ……。 なんか、目の周りが赤いよ? つうか、瞳も赤いから、目全体が、真っ赤だよ? どうしたの?





「……ソフィア様……。 せ、聖女ソフィア様……。 あ、有難うございました……。 ほ、本当に、本当に……。 感謝いたします……。 お爺ちゃんが……、 い、いえ、祖父の命が繋がりました……」





 あぁ……何となく察した。 フレイヤさんの御爺さんが、「点赤熱」に罹患してたんだ。 そんで、 「エルキエル剤」使ったら快癒したんだ……。 まぁ、アレルアさんに、病気した人に飲ませてねって、大回復薬も一緒に渡したからねぇ。 





「いいのですよ。 全ては精霊神様の思し召しです。 それに……」


「はい?」


「私は単なる半妖の娘です。 畏れ多くも、聖女様などでは……」


「でも……」


「もし、感謝を頂けるのなら。  あの……」


「何でしょうか、私に出来る事ならば、何でも致しますよ?」


「お、お友達に……なっては貰えないでしょうか?」


「はぁ? い、今何と、仰ったのですか?」


「お友達に……なって下さいと。 わたくしは、ミッドガルドから来ました。 オブリビオンの常識が、判らずに困っております。 本当に申し訳ないのですが、御教授頂ければ…… 嬉しいのですが?」


「……」





 沈黙が痛い。 嫌なのかな? 得体の知れない私と友達になるなんて……ダメなんだろうなぁ……。 いろいろ、聞きたかったんだけどなぁ……。





「ダメでしょうか?」


「と、とんでも御座いません!!! 私が、聖女様の御友達なんて……畏れ多くて……。 お役に、立てるのであれば…… 」


「ご了承して頂けるのですね?」


「はい……謹んで……」






 やっほ~~~~~っ!!!!!  なんとか、お話出来る人、確保~~~~~~!!! いや、真面目に困ってたんだよ。 ほんと、事情が分からないから。



 こっちの常識とか、勢力図とか、大協約の文言に至るまで……。



 ナニガナンダカ 判らないよ。





 色々聞くよ?





 私はいつだって本気ですよ? 









     宜しく、お願い申し上げます!!









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