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第九十六話 『作風的に、なんだかんだどうにかなるのはもう皆わかってるはず』

とかいう作者の偽らざる本音。

 王城を出た俺は、ただひたすら森の上空をかける。

 属性はもちろん速度重視で風……と言いたいところだが、今回は空属性だ。

 体の属性には、それぞれ補正効果があり、空属性の効果は"空間把握能力向上"と"短距離転移"の二つだ。

 短距離転移は、残念ながら技後硬直があるため移動には使えないが、この空間把握能力向上により、全速力で飛行していても、眼下に広がる森の様子を事細かに把握することができる。

 そのため、人を探しながらの今回の飛行では、こちらの方が結果的に早いとうわけだ。

 万が一を考えると、一秒でも早く駆けつけたいとは思うが、まだ何かあったと決まったわけでもないし、見逃してしまっては意味がないからな。

 でも……何だろう、この胸騒ぎは。

 なんだか嫌な予感がする。急がなくては――――





 そうしてしばらく飛んでいると、前方に強い火の魔力の気配と、五人の気配を感じる。

 五人の気配はどれも嫌な感じがするあたり、おそらく邪教徒だろう。

 どうやら、五人は火の魔力で足止めを食らっているようだ。

 状況からして、戦闘があったとみるべきだろう。それもつい今しがた。

 普通戦闘から時間が経過していたのなら、迂回するなり消火するなり、何らかの対応をするはずだが、彼らはただそれを前に動かずにいる。

 ならば、香奈たちはその先にいる可能性が極めて高い。

 だが、動いていないという事は、慌てて動く必要が無いという事。

 もう追いつくことが不可能なのか、それとも香奈たちへの追撃に成功している仲間がいるのか――――

 後者だとしたら、香奈たちが危ない!!


 俺は手前の五人をひとまずスルーし、森を更に奥へと翔る。

 すると、前方から、弱った気配が一つと、徐々に近づいている気配が二つ。

 弱っているのがリカちゃんの気配……ってことは、ヤバい!! 間に合えっ!!

 俺は降下しながら二人に接近し、短距離転移でその間に割り込む。


 ――――カキンッ!!


 するとその瞬間、俺の体に僅かな衝撃と、硬い金属がぶつかるような音が響いた。

 ……どうやら、ギリギリ間に合ったようだな。

 奥には、胸からナイフを生やして倒れているリカちゃんが見える。

 まだ息はあるようだが、早く処置しなければ……


 「な!? 貴様、まさか古龍か!? くそっ! 穢れし神の眷属め!!」


 ナイフを持った男が、悪態をつきながら後ろに飛び退く。

 ……そうか。貴様がリカちゃんを刺し、香奈を――――


 「――――コロス」


 俺は怒りに任せて、ありったけの魔力を込めた空属性ブレスを放つ。

 すると、ブレスが通った後には扇状に抉られた森が…………うん、ちょっとやり過ぎたね。

 まあいいや。それより今はリカちゃんだ。


 俺はリカちゃんに歩み寄ると、その傷を確認する。

 どうやら、急所は外れているようだが、出血が酷い。

 おそらく、全速力で飛んでも、街までは間に合わないだろう。

 ましてや、ポーションを用意している時間なんて……


 「あ、あのっ! 梨華を……梨華を助けて下さい。お願いしますっ! 梨華を――――」


 近くまで歩み寄ってきていた香奈が、必死に頭を下げ、俺に救いを乞う。


 「元よりそのつもりだ。確約はできないが、善処はしよう」

 「あ、ありがとうございます!!」

 「先に聞いておくが、治癒系のスキルは持っているか? あるいは、時間稼ぎになるようなものでもいい」

 「い、いえ……何も……ごめんなさい」

 「そうか。いや、いい。一応確認しただけだ」


 せめて時間が稼げれば、王都まで戻ってポーションを用意できたかもしれないのだが……仕方がない。

 しかし、どうするか……

 俺が治すとしたら、治癒の魔法くらいしか方法は無いが……治癒の魔法は低位のものでもかなり難易度が高く、それに比例して魔法陣も複雑だ。

 属性は光だから、魔導具があれば発動はできるが……流石にここで作っている時間はない。

 そうなると、もう俺にできることは――――

 いや、考えろ……何かあるはずだ! 絶対何か……この状況を打破できる何かが…………


 魔導具の魔法陣は、そもそも複雑すぎる魔素や魔力の動きを正確に制御するためのものだ。

 ならば、治癒の魔法の魔法陣と同じように魔素が動かせれば、魔法は発動する。

 前にフィルスに詠唱無しで技を使う感覚を教えてもらいながら、無詠唱魔法を試した時はダメだった。

 でも、全く手ごたえが無かったわけでも無かったはずだ。

 なら……あと一歩、あともう一つ何かあればっ!!

 …………ん? 待てよ? 魔導具の魔法陣部分に使用されている材料は、魔石を粉末化したもの。

 そこに混ぜられている他の素材は、本来魔素しか通さない魔石に、魔力が通るようにするためのものらしい。

 なら、魔素を扱える俺ならば、そのままでも大丈夫なはず。

 それなら、その辺の魔獣を急いで狩って魔核を――――


 いや……いや待てよ?

 人間が魔石と呼ぶのは、死んだモンスターの魔核。つまり、魂の抜けた魔核の外殻だ。

 そして、俺の魔核の外殻は、俺の魔素によって作られている。

 ならば……魔法陣を魔核の外殻と同じ要領で作れば、魔法が発動できるのではないか?

 それだ! それしかない!!

 失敗したら時間の無駄だが、どうせ他に良い手は無い。


 俺は右手の掌に、治癒魔法、その中でも上位の術、"ディオ・カリタ"の魔法陣の構築を試みる。

 これほどの傷だ。中途半端な術では、時間稼ぎにもならない。

 ならば、いくら難しかろうと、いくらぶっつけ本番で不安だろうと、そんなものは気合でねじ伏せる。

 今求めるべきは、成功だけだ。完成された魔法陣だけだ。

 さあ、やれレイジ。貴様の――――古龍の力を見せてみろ!!


 焼き付くような痛みと共に、少しずつだが、手のひらに魔法陣が形成されていく。

 本来、魂を保護するためのものを無理やり形成するのが、ここまでキツイとはな……

 だが、これなら――――


 「慈悲深き神の光よ。天より注ぎて、我らが同胞はらからに癒しを与えたまえ。我らの痛みに、その尊き涙を流したまえ――――ディオ・カリタ!!」


 俺が呪文を唱えると、治癒の魔法が発動し、空から降り注いだ光が、リカちゃんの体を覆う。

 すると、傷が見る見るうちに塞がっていく。

 その治癒力は大したもので、胸に刺さっていたナイフすら押し退けていくではないか!


 「うむ……おそらくは、これでもう大丈夫だろう。失った血までは戻らぬが、命にかかわるほどの出血ではないはずだ。じきに目を覚ますだろうから、血になるものを食わせてやると良い」

 「は、はいっ!! ありがとうございます!! ぐすっ……」


 リカちゃんが助かったことがよほど嬉しかったのか、涙を流して喜ぶ香奈。

 さて、それじゃあ後は……


 「手前で五人の人影を見たが、あれも敵ということでいいのか?」

 「ふぇ? あ、は、はい! そうです! 私の炎で、足止めしたのですが、さっきの奴は、魔力を無属性に戻せるとかで……一人だけ抜けてきちゃって」

  

 ほう……魔力を無属性に、ね。

 でも、さっきのブレスは普通に受けて死んでったけど……許容量を超えてたとかだったのかな?

 ま、どうでもいいか。もういないんだし。


 「そうか。では、そ奴らも滅ぼしてくるとしよう。もののついでだ。その後で良ければ、貴様らを王都まで連れて行ってやろう」

 「え? い、いいんですか?」

 「ああ。死なれても困るのでな…………さて、話しているうちに奴らが移動を始めたようだ。さっきの光を見て焦ったか? まあ、何でもいいが、手早く済ませてしまうとしよう」


 俺は上空に飛びあがると、敵に向かってブレスを放つ。

 今度はやり過ぎないよう、威力を絞って、敵だけを消すように連続で5発。

 すると、流石空属性というべきか……敵の防御魔法やら結界やらなどものともせず、空間ごと通過した場所にあった全てを消し飛ばす。

 そして当然ながら、それでも敵が生き残っているなんてことはなかった。

 俺は敵の気配が消滅したことを確認すると、再び地上に降りる。


 「これで終わりだ。敵はすべて消滅した。さあ、帰るぞ勇者よ」


 そう言って古龍の姿となった俺は、二人を背に乗せ、王都まで帰って行くのであった――――

サブタイ、いいのが思いつかなくてふざけすぎました。ごめんなさい(;^ω^)

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