第八話 『ちょっとだけ秘密を明かした』
今回は切りのいいところまで書いたらいつもよりちょっと長くなってしまいました。
描かれているのは朝のひと時だけなんですけどね。
もっとテンポよく進めた方が良いでしょうか?
まあ、仮にその方が良くても今の私には無理そうなので、こういう作風という事でお願いします。
2017/01/26 仮のサブタイトルのまま投稿してしまい、内容と齟齬が発生していたため、サブタイトルを変更しました。申し訳ございません。
2017/02/07 行間修正・誤字修正
2017/04/28 主人公ステータスの誤りを修正
2017/05/03 ミスでずれてしまった主人公のレベルを、後に合わせるために下方修正(2レベ)
2017/06/06 シルヴィアの名前をシルヴァリアに変更(後でミスしてたのを修正しきれないため)。スミマセン……
黒狼の素材を換金した翌日の朝。早く寝たせいか日が昇る前に目が覚めた俺は、昨日の黒狼の群れとの戦闘について改めて冷静になって思い返していた。
昨日の戦闘、俺は前世の野犬をあしらうより容易く奴らに対処することができた。昨日はスキルの問題かくらいに思っていたが、本当にそうなのだろうか。昨日の戦闘中に効果を発揮しそうなスキルなんて、格闘術、短剣術、気配察知くらいしかない。それにそれらのスキルだって元々あったものを持ち越しただけでかさ増しもしていないし。スキルという形態をとったことで能力が向上した可能性は否定できないが、それだけであの黒狼の群れを無傷で、しかも服の汚れを気にしながら対処できるものなのか?
とりあえず俺はソメル村について以来確認していなかったステータスを確認してみることにした。
葛城 玲仁
年齢: 0歳
Lv.10
種族:無形の魔素 (古魔晶龍)
HP:500 (魔核:1000)
MP:61500
魔素量:63000
魔術適正:火SS・水SS・風SS・土SS・光SS・闇SS
魂容量:938/1021
お? レベルが2上がってる。黒狼を倒したからかな? そういや盗賊も倒してるか。
まあ、それはいい。そんなことより、だ。魔素量、増えすぎじゃね? 前見たときは53000だったはずなんだけど。レベルが2上がっただけでなんで10000も増えてんの? 魂容量も8上がってるけどこっちは多いのか少ないのかよくわからん。でもまあ、スキルの消費する容量を考えたら多いんだろうな。下の方のスキルなんて消費1とかざらだし。そういえばスキルの階級についてまだ確認してなかったな。まあ、それは今度でいいか。下手に突っついてチェックされたりしたら嫌だし。
さて、それじゃあお次はスキルだが......
・魔素操作(LvMAX) Lv4 → LvMAX
変化があったのはこれだけだった。まあ、これが上がっているのはわかってた。たぶん王都に着いた時点ではもうカンストしていたんだと思う。上がるスピードおかしかったし。新しいスキルを習得していないのでこのスキルはもう頭打ちなのだろうか。それとも他に条件があるのか。
そんなことより、だ。変化はこれだけだった。これだけだったのだ。つまり、俺の身体能力はおそらくこちらの世界に来てからそんなに変わっていないのだと思う。確かに魔素量は増えているが、俺の肉体に割り振られている魔素量は前と同じだ。という事は俺の肉体は最初にヒト族の姿をとった時のものと同じなのだろう。魔術的な補助もしていないことを考えると、俺のヒト族の状態での身体能力は転生前と比べて大きく変化している可能性が高い。これは要検証だな。
ステータスの確認がひと段落したところでふと窓の外に目を向けると、いつの間にか空が明るくなっていた。下からも人の声が聞こえる。しかもその声は、エルバルトさんともガイスさんとも違って聞こえる。
試しに気配察知を使ってみると、下の階に6人ほどいるみたいだ。ギルドの他のメンバーだろうか。他のメンバーにはまだ会ったことないし、挨拶しておきたいな。
そう考えた俺は、さっそく部屋を出て1階に降りていくことにした。
1階へ行くと、そこにはギルドマスターのエルバルトさんと話をする若い4人組の姿があった。歳は全員20前後といったところだろうか。装備の感じからしてそこまで上のランクではなさそうだが......
「おはようございます」
俺が挨拶をすると、皆の視線が一斉にこちらを向いた。
「うむ、おはよう。昨日はガイスがスマンかったの」
「あ、いえ」
うーむ。昨日は恥ずかしかったが、もうそこまで気にもしていないし、もしガイスさんが昨日のことを気にしているならちょっと悪いことしたかなぁ。
「あの、彼は?」
俺がそんなことを考えていると、4人組の中で一番背の高い男性がマスターに俺のことを質問していた。
「彼がさっき話したレイジくんじゃよ。レイジくん、彼らはウチに所属するCランクパーティー『龍晶の煌』のメンバーじゃ。一番背の高いこ奴がリーダーのシェイ、その隣にいる杖を持った小柄の女性が魔術師のラナで、その後ろにおるのが同じく魔術師のシルヴィア。最後に一番奥におるのが盾使いのモンドじゃ」
「初めましてレイジ君。俺はシェイ。職種は剣士だ。よろしくな」
「あたしはラナ! 得意属性は火属性! よろしく♪」
「私はシルヴァリアよ。得意属性は水ね。よろしく、レイジさん」
「俺、モンドってんだ。よろしくな~」
皆ガイスさんと同じくらい気さくな感じで、俺に詰め寄ってきた。......顔が近い。
「え、えっと」
俺が困って苦笑いをしていると、エルバルトさんが助け船を出してくれた。
「これこれ、仲良くするのは良いがレイジ君が困っておるじゃろうが。自重せい」
すると皆一歩引いてまともな距離を空けてくれた。助かった。
「すまない。さっきまで君の話を聞いて皆で盛り上がっていたものでね。つい気になってしまったんだよ」
「あ、いえ。大丈夫です。俺はレイジ、ランクはまだGです。職種は~まだ何とも。まだ冒険者見習いといった感じですが、よろしくお願いします」
リーダーのシェイさんが謝ってきたので慌てて返事をする。
シェイさんはいかにも好青年といった感じで実にさわやかなイケメンだ。身長も180cm以上あり、さぞおモテになることでしょう。
魔術師のラナさんは身長が150cm前半くらいとかなり小柄だが、すごく活発で明るい印象を受ける。なかなか楽しそうな人だ。
一方シルヴァリアさんはラナさんとは真逆で静かなお姉さんといった感じだ。身長も160cm後半と女性にしては高めだ。この世界の平均身長はわからないのであくまで俺基準だが。
最後に紹介されたモンドさんは盾使いというだけあってなかなかガタイが良く、かなり鍛えていそうに見えた。かなりのんびりとしたしゃべり方で、とても優しそうな顔をしている。
皆いい人そうで安心した。流石エルバルトさんのお眼鏡にかなったメンバーだなといった感じだ。
「それで聞いたよ。なんでも昨日黒狼の群れに襲われて、それを一人で倒してしまったんだって? それも軽くあしらうみたいに。しかも、だ。相手のリーダーは赤付きだったっていうじゃないか! ガイスさんも同行していたって聞いたけど、本当に一人で倒したのかい?」
さっそく話したのかよエルバルトさん! こりゃ噂になるのはどうやっても回避できそうにないな。少なくともこのギルド内では。
「あーまあ、はい。一応......」
「「「「おお!!」」」」
う……やっぱりそういう反応になるのね。こりゃマジで実力の把握を急いだほうがよさそうだな。わかってないと調整もできないし。でもせっかくここに魔法使いが二人もいるんだし、できれば魔法も使ってみたい。教わったりできないかな?
「あの、そんなどうでもいいことは置いておいて、ラナさんとシルヴィアさんは魔法が使えるんですよね? 不躾なお願いかもしれませんが、もしよければ魔法の使い方を教えてもらえないでしょうか。基礎的なものだけでもいいので」
「? うん、そんなことなら全然いいよ! どうせ帰ってきたばかりで暇だしね!」
「ええ、いいわよ。ラナだけに任せておくのも不安だしね。この子は感覚派だから」
俺の言葉に二人は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔を浮かべ了承してくれた。
「でも、魔法の使い方や基礎的なものを教えて欲しいってことは、レイジさんは魔法を使おうとしたこともないという事でいいのかしら?」
「え? ええ、そうですけど……なにかまずかったですかね」
俺はシルヴァリアさんの意味ありげな発言に不安になり、質問してみる。するとシルヴァリアさんは慌てたように俺の質問に答えてくれた。
「ああいえ、そういう事ではないのだけれどね。普通は12歳の誕生日に教会で魔法適正を確かめて、適性があれば基礎的な訓練を受けるものだから」
あーそういうことか。つまり普通は魔法が使えるからこんなお願いをする奴はほとんどいなくて、いても魔法の適性がないのに諦めきれない奴くらいなのだろう。そりゃ確認もしたくなるわな。
「そういう事でしたか。俺の生まれたところには教会なんてなかったんですよ。なのでそういうことはしてないですね」
まあ、本当はそもそもまだ12歳にもなっていないんだがな。
「そうだったの。ごめんなさいね、変なこと聞いてしまって」
俺がテキトーなでっち上げの言い訳で答えると、シルヴァリアさんは申し訳なさそうな顔をして俺に謝罪してきた。なんだか申し訳ない気分になってくるな。
「いえ、当然だと思います。誰だって無駄骨になるのは嫌でしょうしね」
「ありがと。でもそれなら先に教会で魔法適正を見てきた方がいいかもしれないわね。多少お金が掛かるけど、銀貨一枚だしね。それで適性がわかるなら安いものよ。魔法は使えれば便利だから」
ふむ。俺には自己能力診断のスキルがあるから本当は必要ないんだが、一応行っておいた方がいいのだろうか。しかしなぁ、あまり他人に俺の能力を覗かれるようなことはしたくない。魔術適正だけを見るのだとしても全部SSっていうのは流石に異常だろうしなぁ......
でもそれを回避するには俺の自己能力診断スキルのことを話さなければならないだろう。協会には行ったことないって言っちゃったし。さて、どっちの方がダメージが少ないか。難しいな。
「まだ初収入を得たばかりじゃしの。協会へのお布施は儂から出してもよいぞ?」
俺が悩んでいるとエルバルトさんが俺がお金のことで悩んでいると勘違いしたのかそんなことを言ってきた。
うん。やっぱりスキルのことを話そう。その方が今後のこういったイベントも回避しやすくなるし、何より俺はこの優しい人たちに必要以上に隠し事をしたくない。流石に種族とかは話せないけど。
「あーいえ、そういうわけではないんです。ただ、ちょっと話すか迷っていたことがあって......」
「そうじゃったか。しかし、話したくなければ話さなくてもよいのじゃぞ? 所属ギルド相手だから秘密を持ってはいけないなんてルールは無いからの」
「いえ、いいんです。今後のためにも話しておこうと思うので。ただ、なにぶん私は田舎者の世間知らずでして、もしこれから話す内容が異質であったりした場合には口外しないでいただければと思うのですが......」
俺がそう言うとエルバルトさんと魔晶の煌の皆は真剣な面持ちで頷いた。
「わかった、約束しよう。ところで、ガイス君も呼んだ方が良いか? お主の指導役はあやつじゃからの。聞かせた方が良いなら呼んでくるぞ? もうギルドには来ておるしの」
「あーそうですね。ガイスさんにも聞いておいてもらった方がいいかもしれません」
「わかった。ではちょいと待っておれ」
そう言うとエルバルトさんは裏庭の方へ行き、ガイスさんを連れてきた。
「おう、レイジ。昨日は悪かったな。それで、大事な話があるんだってな。いいぜ、言ってみな。昨日のことがあって疑っているのかもしれんが俺はこれでも口は堅い方だ。言うなというなら言わん」
「わかりました。といっても、俺には本当にこれが隠すべきことなのかわからないので、肩透かしでも笑わないでくださいね?」
「はは、わかっているさ。大丈夫だよ」
予防線を張る俺に、シェイさんが笑いかけてくれる。
彼や皆の態度に安心した俺は、彼らにスキルの話をし始めることにした。
「俺は自己能力鑑定っていうスキルを持っています。だからわざわざ誰かに見てもらわなくても自分のレベルもスキルも魔術適正もわかるんですよ。さっき教会へ行くのを渋ったのはこれが理由だったというわけです」
さて、みんなどういう反応を示すか……
「ほう。因みにスキルレベルはいくつなんじゃ?」
ん? 思ったより驚いてないな。意外とよくあるスキルなのか? なんか心配して損したかも。
「レベルは9ですよ」
俺がそう言うと、皆さっきまで何でもない顔をしていたのにいきなり驚いた表情になり食いついてきた。
「な! レベル9じゃと! ど、どうやってその歳でそんなレベルまで。お主、やはりヒト族ではないのか? 登録書の種族欄も空欄じゃったし」
「自己能力診断ってレベル上げるとそんないろいろ見れるのか!? 名前くらいしか見れない死にスキルだって有名なのに!」
「そ、それって自分しか見れないの? パーティーメンバーのとかは? あたしのとかって見れる?」
質問をしてきていないシルヴィアさんとモンドさん、ガイスさんも驚いたような顔をしてこちらを凝視してきている。
つまりあれか? スキルは有名だけどLv1だと使えないから誰も育てないってことかな? スキルを育てるのは大変(らしい)しな。俺はまだまともにやったことないからわからんけど。
「え、えっとですね。とりあえずステータスに関してはいろいろ見れますよ。名前、年齢、性別、種族からHP、MP、スキルや魔術適正まで。あと種族に関しては申し訳ないのですがノーコメントとさせてください。年齢に関しても同様です。ちょっと人様に言えるようなものではないので。ただ、年齢に関しては皆さんよりは年下ですとだけ」
俺がそう言うと皆少し落ち着いたようで少し気まずそうな表情をしている。
「いや、すまんかったの。柄にもなく取り乱してしまったわい。スキルの効果もさることながら、その歳でスキルレベルが9まで上がっておるなんて話、聞いたこともなかったのでな」
「いえ、お気になさらず。話すと決めた時点である程度想像していましたし、想像していたよりは幾分かマシだったくらいなので」
俺がそう言うと、皆ホッとしたような表情を浮かべ苦笑いをした。そんなに気を使わなくてもいいのに。
「それで、魔法を教えて欲しいって話だったわよね? 適性はどうなっているの?」
場の雰囲気が少し和らいできた辺りでシルヴァリアさんが話を進め始めた。ま、いつまでも黙ってても意味ないしね。ガイスさんだけは最初いなかったので、あ、そういう話だったのねといった顔をしている。
「あーえっと、ちなみに皆さんはどれくらいなんですか?」
俺は自分の適性を言っても大丈夫なのか判断すべく、先に皆の適性を聞いておくことにした。
「そうね。シェイとモンドに関しては属性適正は無いわ。魔力操作自体は多少できるけどね。であたしは水がA、他はDかEで使い物にならないわね。ラナは火がB+と土がC、他はEで使えない。こんなところかしら」
「儂は風がSで土がAじゃな。他は残念ながら使えん」
「俺は魔法はからっきしだ。魔力操作はできっから無系統の肉体強化とかは多少使えるけどな」
ふむ。皆の様子から言ってエルバルトさんのSでも十分高い感じだな。やっぱり全部SSは異常っぽいな。でも隠してても面倒だし、最低でも全属性使えることくらいは言っておきたい。どうするか......
「ふむ。適性の方も普通ではないのかの? 心配せんでも儂らは口外したりせんぞ? のう?」
俺が悩んでいるとエルバルトさんはそう言って皆を見渡す。
「「「「「魔晶龍様に誓って!」」」」」
お、おう。彼らにとっては神かなんかに誓う感覚の発言なのかもしれんが、俺にとってはなんだか自分に対して誓いの宣言されてるみたいで妙な気分だ。まあでも、ここまで来たら変に隠すこともないか。
「えっと、俺の魔術適正でしたよね。その~、全属性SS......です|(今は)」
「「「「「は?」」」」」
俺が正直に話すと皆行っている意味が理解できないといった表情で固まっている。や、やっぱり言わない方が良かった?
「す、すげえ! そんなの聞いたことねえよ! どれか1属性Sオーバーってだけで凄いのに! 全部SSって!」
「お、驚いたわね。じゃあそんな才能を持っていながら今まで魔法を使ってこなかったの?」
再起動したシェイさんがすっごくいい笑顔で興奮している傍ら、シルヴァリアさんは驚いた顔を浮かべながらも冷静に話を進める。見た目の印象通りって感じだな。指導役を買って出た自負もあるのだろうか。
「えっと、はい。教わる相手もいなかったので」
ま、まだこの世界に来て数日ですけどね! 居るわけないね、教えてくれる人なんて!
「勿体無い話ね。こんな凄まじい才能を持っているというのに。いいわ。私にできる範囲でならいくらでも教えてあげる。その代り、近い将来私を超えたら逆に私に教えてね♪」
シルヴァリアさんはそう言うといたずらっぽい笑みを浮かべる。クールそうに見えるけどこんな表情もするんだな......そのギャップにちょとドキッとしたのは内緒だ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
そう言って俺とシルヴァリアさんが微笑みあっていると、ようやく再起動したレネさんが慌てたように割って入ってきた。
「ちょ、ちょっと待った! 私も! 私も教えるからね! ね!」
「はははっ! 大丈夫ですよ。レネさんからもちゃんと火属性を教えてもらうつもりですから」
「儂も風と土なら教えてやれるぞ?」
「エルバルトさん。ありがとうございます」
「それじゃあ、朝食を食べたら早速始めましょうか?」
「はい。お願いします」
よっしゃー魔法だ! しかも下位とはいえ4属性も教えてもらえるとか! 中々ラッキーだったのではないだろうか。
あ、そういえば魔術の位階のことだが、俺の肉体構成魔素固定スキルの魔晶龍化の条件に下位属性のみの縛りがあったのは覚えているだろうか。それで前に試した時、火・水・風・土の属性の姿しかとれなかったのでその4属性が下位という事はわかっている。そこから予想するとおそらく光と闇が上位なのだろう。たぶん。
さて、俺も晴れて魔法使いの仲間入りだ! 昨日はただナイフで獣を狩っただけでイマイチ異世界っぽいことができなかったからな。楽しみだ。
そうして俺は内心の高揚を隠すこともなく朝飯を食うべく、ギルドの休憩スペースで注文をするのだった。
こんばんは、モモガスキです。
今回女性が2人ほど出てきましたが、彼女たちは残念ながらあくまでサブキャラ(の予定)です。
メインヒロインの登場はおそらく次々話か、その次くらいになると思います。
早く出したいですね。