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第八十八話 『国王は、なんか割といい人っぽかった』

 山を越えたあたりで、体を大きくした俺は、王都北門前まで飛んで行く。

 まあ、魔素をたっぷり注ぎ込んで、500メートルはあるであろう俺の体では、頭が北門前に到着しても、体はまだ結構手前にあるのだが……まあ、それはいいだろう。

 迷惑を掛けぬように少し上の方を飛んでいるが、その巨体のせいか、皆が空を見上げ、隣人と何か言葉を交わす。

 それどころか、慌てて駆けて行く者や、いきなりひれ伏し、拝みだす者までちらほらと確認できた。


 う~ん。これは……目立ちすぎたかな?


 正直、これだけ目立てばすぐにフィルスに無事が伝わるだろうというのと、デカく、視界を広く持つことで、被害状況を確認できればと思っただけなのだが……考えが甘かったかな?

 まあ見たところ、街道にはちょくちょく戦闘の跡が残ってはいるものの、街の外壁には被害はほとんど見受けられないし、きちんと魔獣は食い止められたようで一安心だ。

 これなら、フィルスも大丈夫だろう。

 吸血衝動だけが心配だが……これだけ被害のでない戦いであったのなら、おそらく力は使っていない……と思う。


 俺が上空で静止し、考え事をしていると、何やら下が騒がしくなってきた。

 見たところ、どうやら偉い方が来ているようだ。

 皆がそちらを見て頭を下げているし、なんか馬車も豪華っぽいし。

 そしてその偉い人は、こちらを仰ぎ見て何やら叫んでいるように見える。

 ……俺に用事かな?


 目立って騒がせてしまったのはこちらだし、一応聞いておこうと思た俺は、魔晶龍騎士の姿となり、地面に降り立つ。

 以前はこの姿では飛べなかったが、今はスキルが変わったおかげか、その辺の自由度が少しばかり増し、翼を生やせるようになった。

 今後は、この姿が一番便利かもしれないな。


 「これはこれは、古龍エンシェントドラゴン様。わざわざお手間を取らせてしまい、申し訳ございません。私はアストレア王国国王をしております、ムーグランド・ディエト・アストレアと申します」


 ああ、よく見たらこの人アレだ。闘技場にいた国王だわ。


 「うむ。我は古魔晶龍エンシェントクリスティアドラゴンである。名は無いが、適当に古龍とでも呼んでくれれば良い。して、何用か? 我は王都の無事を確認しに寄っただけのつもりであったが、何か願いがあるのであれば、場合によっては聞いてやっても良い」


 今は状態も安定したことだし、今回のことで困ったことになっているとかなら、少しくらい手を貸してもいいと思っている。


 「そ、そのような!! わざわざ古龍様のお手を煩わせることなど、何もございません。その優しきご配慮、感謝いたします」

 「ふむ……そうか。では、何用か? 国王というのは、ヒトの最上位者であろう? そのような者がこのような場所にまで足を運んだのには、それなりの理由があるのであろう?」

 「はい。この度、ここフェレブを救って下さった古龍様に是非お礼をと思い、こうして足を運ばせていただきました」


 ……え? それだけ? そんなことのために、国王自ら出てきちゃったの?


 「うむ、そうか。それはわざわざすまなかったな。ただ、今後は呼んでもらえればこちらからお邪魔するので、そこまでする必要はない。国王ともなれば、色々と狙われたりもするだろうし、あまり不用意に外出をするのは危険であろう。今も最低限の護衛しか連れていないように見える」


 彼の周りにいる騎士の数はせいぜい十程度。

 国王の護衛としては、あまりに少ない。


 「そ、そんな! わざわざ古龍様に手間を取らせるわけには!」

 「我が良いと言っている。それに、主の住まう居城には、少しばかり興味もある。一度中も見てみたいし、一石二鳥という奴だ」

 「!!? ご、ご覧になりたいというのであれば、いつでもお越しください! できる限りのもてなしをさせていただきます!!」


 う~ん。

 まあ古龍の立場を考えればそりゃそうだよなとも思うのだが……国王にこうもへこへこされるというのは、なんだか微妙な気分だ。


 「いや、いい。いつでも来て良いというのはありがたい申し出だが、もてなしは結構。まあ、お茶くらいはいただければとは思うが、普通で良い。それから、そんなに民草の前で頭を下げるでない。それでは汝の威厳が損なわれてしまうであろう。別に我は、多少の粗相など気にはせぬ。堅苦しいのは苦手だしな。もっと普通で良い」

 「は、はい。では、今だけはお言葉に甘えさせていただきます」


 そう言ってようやく頭を上げる国王。

 今だけじゃなくて、ずっと普通で良いんだけど……ま、いいか。

 何度も言ってれば、そのうちわかってくれるでしょ。何度も話すかわからないけど。


 「さて、とはいえお主の用は済んだのであろう? 我ももはやここでの用は済んでおるし、そろそろ去るとしようか」

 「お、お待ちください古龍様。できれば何か、お礼をさせていただきたいのですが、何か、私にできることはございませんでしょうか」


 立ち去ろうとしたところを、王様に呼び止められる。

 しかし、礼と言われてもな……あ、そうだ。


 「これは我のささやかな願いであり、別に早急にどうしろというものではないのだが……」

 「おお! 何でございましょう!!」

 「うむ。汝らヒト族には、亜人を排斥する考えが根付いておると聞いた。魔獣と混じった穢れし者であると言ってな」

 「そ、それは……はい。確かに、その通りでございます」


 そう言いながら、滝のように汗を流す国王。

 その顔は蒼白で、まるで父に叱られた子供のようにも見える。


 「その考えを、少しずつで良い。ヒト族から取り除き、互いに手を取り合える未来を目指して欲しい。急に何かをするのでは、反発もあるだろうし、戸惑いもあるだろう。手段を間違えれば、立場が逆転するだけの、無意味で悲惨な結末を迎えてしまうこともありうる。それに種が違えば、様々な常識の差異や、それに伴う問題も出て来るだろう。故に、急かしはしない。ただ、それに取り組み、この国に……いや、この世界に住まう一人一人がその問題に真摯に向き合い、良き未来へと向かって行ってくれることを、我は願っている」


 俺がしゃべり終わる頃には、先ほどまで顔を青くして震えていた国王は、涙を流して俺に片膝をついて頭を下げている。

 ……それって騎士が忠誠を誓う時とかのポーズじゃないの? なんで王様がやってるの? この国ではそう言うものなの?


 「古龍様の願い。その心の痛み、嘆き。しかとこの胸に刻みました。正直なことを申しますと、私も現状を憂いていた者の一人。しかし、これまでは大きく動くことはしてきませんでした。常識を変えるというのは、そう簡単なことではないと、どこかで諦めてしまっていたのです。ですが! しかし今!! 古龍様がそれを願って下さいました!! これほど心強いことはありません!! 古龍様のご意志であるのなら、それを叶えるのは当然の責務! このムーグランド・ディエト・アストレア、必ずや、ご期待に応えてみせましょうぞ!!」


 う~ん? つまりあれか? 俺の発言が大義名分になってくれたおかげで、やっと表立って動けるとか、そう言う事なのかな?

 まあ、そう言う事なら任せてみましょうかね。

 元々そう言う考えを持っていたというのであれば安心だし、政治のことはよくわからんしな。

 交渉とか駆け引きは苦手なんだ。


 「そうか。お主ならば、安心して任せられる。ああそうだ。それから、勇者を召喚したと聞いた。その者たちにも、よろしく伝えておいてくれ。世界の危機に立ち向かうのであれば、その道が交わることもあるだろうからな。では、さらばだ」


 俺はそう言うと、翼を広げ、再び森の方へと飛び去って行くのであった――――


ちょっと今、展開に悩んでまして、ここの所日刊で来てましたが、一旦ペース落ちちゃうかもしれません。

まだわからないですけど。

あとちょっとだけストックがあるので、その間に良い話が浮かべば良いのですが……

まあ、土日でちょっと頑張ってみます(`・ω・´)

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