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第八十五話 『他人から見れば、ただのイタいヤツかもしれない』

本日二話目の投稿となります。ご注意ください。

 俺は露出したダンジョンコアに触れ、その魔素の流れや質を調べる。

 魂とやらは感じ取れないが、核を覆うのは魔素の結晶だ。

 そして、妖刀から流れ出ているのが魔素であることを考えれば、妖刀の束縛もおそらく魔素によるもの。

 ダンジョンも魔核で動いているなら、魔獣と同じで操るのは魔素なはず。

 ならば、魂はわからずとも、魔素を感知できればだいたいわかるのでは? というわけだ。

 それに、魂のことなら隣にわかる奴がいるからな。最悪そいつに聞けばいい。

 ……というか、他人の魂感じ取れないのに、どうやって他人の魂保護するんだろう俺。

 あのスキル、意味あんのか?


 「どうだ? なにかわかったか?」


 俺がしばらくダンジョンコアに触れていると、黒騎士が後ろから、待ちきれないとばかりに聞いてくる。

 まったく……お前も期待しているんじゃないか。なら、裏切る訳にはいかないな。それに――――


 「ああ。まあ、なんとなくだけどな」


 魔素の流れを観測していてわかったことは、

 まず、妖刀から感じる禍々しい赤黒い魔素とは別に、魔素が二種類感じられた。

 一つは妖刀のものに負けず劣らぬ強力なもの。恐らくこれはダンジョンのものだろう。

 そしてもう一つは、二つに比べて微弱な、今にも消えてしまいそうな僅かな魔素。これはおっさんの魂のものだろうな。

 種族がヒト族でなくなっているから、扱うのも魔素となっているのだろう。


 そしてもう一つ。こっちの方が大事なことなのだが、妖刀とダンジョンの魔素は、コアの中心を避けるように渦巻いているようだ、ということだ。

 つまり、おっちゃんの魂は無事である可能性が割と高い。

 これなら、俺がおっちゃんの魂を保護し、取り出すことさえできれば、どうにかなるかもしれない。


 「レイガスのおっちゃんよ。もし俺がここからあんたの魂を取り出すことができたら、どうにかなるか?」

 「ううむ……それはなんとも言えぬな。まず、この魔剣だが、これは魂との接続を断ち切った状態で譲渡できれば、おそらくは大丈夫だ。だが、問題はダンジョンだ。こ奴は完全に死に絶えるまでは、己が核である我の魂を求め続けるであろう。故に、このダンジョンが完全に沈黙するまでの間、我が魂を保護し続ける必要がある。お主にそれができるか?」

 「う~ん。それはやってみないことには何とも言えないな……ダンジョンが死ぬっていうのは、どれくらいかかるものなんだ?」

 「うむ。恐らくここの規模であれば、数日はかかるであろうな。中の魔獣や魔物も多いだろうし……あ、いや、今はいないのであったな。お主が来てから四日ほど経っておるし、多少は復活しているだろうが……それなら半日もかからぬであろう」


 ん? 内部の魔獣や魔物の数がなんで関係するんだろ?

 というか、もう四日も経ってるのか。

 地上では、既に事件は終わってるのかな。

 フィルスは絶対心配してるよな。

 ごめんな、フィルス。なるべく急いで帰るから。


 「ん? ああ。今回の場合、ダンジョンは魂を抜かれて半死半生の状態になるであろう? そうすると、それを補おうと、己の中にある魂を食らおうとするのだ。もちろん、それらにダンジョンを支えるほどの力はなく、いずれ死を迎えるのだが、一応燃料にはなるのだよ」


 あぁ、そう言う事か。んじゃ、今回だけ特別ってことね。

 ん? というか――――


 「核を取っちまえば、普通にいつも通り死ぬんじゃないのか? ダンジョンは」

 「む? そうか、お主はダンジョンというものを知らぬのか。ダンジョンコアというものはな。普通ダンジョンボスを倒さなければ、ダンジョンから切り離すことはできぬのだ。我は魂の主であるが故、こうして露出させることくらいはできるが、それでも切り離すのは無理であろう」


 そうなのか。面倒だな……

 それができれば問題はほぼ解決したようなものだったのだが……


 「あ、そう言えば、魂を保護して取り出すところまでは俺でもできるけど、その後体に魂を戻す方法はよくわからないんだが……おっちゃん自分でできるか?」

 「うむ。それなら問題はない。任せておくが良い。これでも魂を操る者。問題はないわ」

 「そうか? でも、魔剣の束縛から解かれたら、おっちゃん人間に戻るんだぞ? 大丈夫なのか?」

 「……え? あっ」


 うん。どうやらそこまで考えていなかったようだ。

 こりゃ、妖刀の方は無理か?


 「ま、とりあえずダンジョンから切り離すのは大丈夫そうだし、最悪それで我慢してくれ」

 「うむ……残念ではあるが、仕方あるまい」

 「いや、まだ諦めたわけじゃないから。とりあえず、その剣をもっとよく見せてくれないか?」

 「ん? それは良いが、間違っても触るでないぞ? 危険なのでな」

 「わかってる」


 黒騎士は、刀を鞘から抜くと、地面に突き立てる。

 さて、さっきは声が聞こえたのだが、どうなっているのやら……

 魔素の流れは……放出してるだけで、おかしなところはないか……ん? あ、いや、一ヶ所だけ魔素が流れていないところがあるな。

 位置は……鍔の中心か。


 俺はそこの周囲にある魔素に干渉し、それをかき分け、奥へと自分の魔素を押し込んでいく。

 それでどうなるかはわからんが、やってみなければ何もわからんからな。


 (驚愕…………理解……不能……)


 そして俺の魔素がその中央まで届いたところで、再びあの声が聞こえてくる。

 内容は単語だけで、酷く小さく、消えてしまいそうなほど儚げな……それでも確かに聞こえる声。

 それが、頭の中に直接響いてくる。

 今ならわかる。これは、俺の魔素が感知している、この刀の声だ。

 おそらくこの声は、魔素を利用した念話のようなもので、音ではないのだろう。故に、耳では感知できない。

 だが、同じ魔素である俺は、その声を拾う事が出来た。

 そう考えれば、俺には聞こえたのに、所有者である黒騎士に聞こえなかったのも納得がいく。


 「お前は……この妖刀――――魔剣の意思ってことでいいのか?」


 俺は、対話をするべく妖刀に語り掛ける。

 はたから見れば、剣に話しかけるイタい奴だが、気にしたら負けだ。


 (肯定……我、妖刀・白雪しらゆき


 あ、妖刀で良いのね。

 しかし、"しらゆき"か。随分日本臭い名前だが、誰が作ったんだろう。

 いや、今はそんなことより――――


 「なあ。できれば、主であるこのレイガスさんを解放してやってほしいんだが……それは、可能だろうか?」

 (可能……条件……譲渡)


 ん? 譲渡してくれればいいだけってこと? でも、それじゃ駄目だからこうして悩んでるんじゃなかったっけ?


 「いや、それだと魂の拘束が――――」

 (対価……完済……束縛……皆無)


 え? じゃあ、この魂にまとわりつく魔素は一体……


 (魔素……保護……迷宮……浸食)

 「え? ってことは、むしろ守ってくれてたってことか?」

 (肯定……宿主……脆弱……相性……環境……劣悪)


 おい……

 でもまあ、そういう事なら、むしろそのままでダンジョンだけ引きはがすのが正解っぽいな。

 曲りなりにも、こいつは主人である黒騎士を守ってくれてるみたいだし。

 ……まあ、不満たらたらだったけど。


 「どうやら、魔剣の方は大丈夫みたいです。特に束縛とかされてるわけではなく、むしろ、ダンジョンの浸食から守ってくれていたみたいですよ」


 白雪との対話を一旦終え、俺は黒騎士にわかったことを伝える。


 「む? であれば、このまま持っていた方が良いのか?」

 「そうですね、一旦は。ただ、人間に戻りたいなら手放す必要があるので、その時は誰かに譲渡する必要があるでしょうが」

 (汝……希望……魔素……良好)


 おお!? いきなり頭に声が響いたと思ったら、白雪か。

 てか、こっちに対話の意思がなくても話せるのかよ。


 (肯定……汝……相性……良好……念話……可能)


 ってか、どゆことだ? 譲渡するなら俺にってことか?


 (肯定! ……汝、希望! 汝、至高!)


 お、おおう……

 なんだかさっきよりも言葉が強いというか、感情がこもっている気がする。

 というか、どうでもいいけど、さっきからなんで口に出してないのに話せてるんだよ。勝手に思考読まれてる系ですか? プライバシーは無いのでしょうか?


 (不快? ……謝罪……我、反省……)


 な、なんだか今度は言葉に元気がないような……

 ま、まあ、謝ってくれるなら別に良いんだ。

 怒ってないから大丈夫だよ~?


 (…………)


 ……反応がないな……あ、そうか。反省してくれたのなら、声に出さなきゃわからんよな。


 「怒ってないから心配しないでくれ。反省してくれたなら、それでいいよ」

 (感謝! ……我、安心……精神……平穏……)

 「む? いきなりなんであるか? 我は何か、怒られるようなことをしたであろうか」


 白雪に伝わったのは良いが、今度は話の流れがわかっていない黒騎士に、勘違いをさせてしまったようだ。

 はぁ……面倒だ。

 二人ともキャラ濃過ぎて疲れる……パパッと終わらせて、早く外に帰ろう…… 

明日も午前と午後で一話ずつ、合計二話投稿する予定です。

最近書く方が早くて一日一話だと追いつけなくなってるので、今後もちょくちょくこういうことがあるかもしれません。ご了承ください。

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