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第七話 『換金しにいったよ』

ギリギリ日付が変わる前に投稿できました。

ちょっと急いで書いたのでミスとかあるかもしれないです。すみません。


2017/1/26 変換ミスがあったので修正しました

2017/02/07 行間修正

黒狼の解体を終えた俺は早速ガイスさんにどこで換金すればいいか聞いてみることにした。


 「あの、それでこの解体した黒狼をお金にするにはどうしたらいいのでしょうか」


 「ああ、それなら冒険者協会が買取をしている。商人なんかに直接売るのも禁止はされていないし、うまくやればそっちの方が金にはなるが、小さいギルド所属の冒険者相手だと安く買い叩こうとする商人なんかも珍しくないからな。初めのうちは確実に相場で買ってくれる冒険者協会に売るのがオススメだな」


 ふむ。転生前に読んだ小説なんかではギルドで換金する感じの話が多かったが、それと似たようなものだろうか。でも商人に直接売るのも禁止されていないのか。大ギルドは大きな商会とかと契約してて直接卸したりなんかしてるのかねぇ。


 「じゃあ、冒険者協会まで行ってちゃちゃっと換金してきちゃいますね」


 そう言ってギルドを出ていこうとすると、ガイスさんに呼び止められた。


 「まて、今から行くのか? それなら俺もついて行ってやろう」


 「ん? 今からだと何か問題があったりするのでしょうか」


 肉なんかは保存がきかないから早く売ってしまいたいのだが......


 「いやそうじゃない。ただこの時間はちょっと混むからな。勝手がわからんとちょいと面倒かと思ってな」


 「そういう事なら、よろしくお願いします」


 どうやらおせっかいを焼いてくれたらしい。申し出はありがたいので素直に受けておく。


 


 冒険者協会の前まで行くと、確かにガイスさんの言っていた通り人が多かった。この人数だと目的地もわからず建物の中に特攻していくのはなかなか面倒そうだ。


 「換金所はこっちだ。はぐれるなよ?」


 そう言うとガイスさんは平然と人ごみに入っていく。よそ見をしていた俺は一瞬置いて行かれるのではと焦ったが、ガイスさんは冒険者の中でもかなり大柄な方で人混みの中でもかなり目立つため、そんなに焦らなくても見失う心配はなさそうだった。


 ガイスさんと共に列に並んで待つこと約30分。ついに俺の番がやってきた。


 「ギルド証の提示をお願いします」


 俺は指示に従いギルド証を受け付けのお姉さんに渡す。


 「......はい。ん? Gランクの方でしたか。申し訳ございません。買取はFランクからとなっておりまして」


 なんと! 換金できないとか聞いてないんですけど。


 「すまん忘れてた。俺なら大丈夫か?」


 困っていると横からガイスさんが受付にギルド証を渡してそう言った。どうやらガイスさんはGランクでは買取をしてくれないことを素で忘れていたようだ。まあ、Bランクだしな。そんな前のこと、覚えていなくても不思議ではないか。


 「あ、はい。大丈夫です。では、買取をさせていただきます。解体はお済みでしょうか」

 「はい。解体はしてあります」


 「ではこちらへお出しください」


 受付のお姉さんがそう言うと、受付の横から大きな台車を転がした男性が出てきた。

 俺は言われた通りに黒狼の解体した毛皮や爪、肉などを台車の上に積み上げていく。


 「はい。では査定が完了するまで少々お待ちください。しかし黒狼の素材ですか。それもこんなに。これはお二人で?」


 お二人で? と言いながらもお姉さんの視線はガイスさんへ向けられている。言外に手伝ったのか聞いているのだろう。先き渡した素材は黒狼25匹分だ。俺一人で狩ったとなれば流石にGランクとはいかないだろう。変に目立ってしまうかもしれない。ここはガイスさんが手伝ったという事にして穏便に済まそう。

 そう考え、俺はガイスさんに視線で訴える。するとガイスさんがそれに気づきこちらに確認するような視線を向けてきたので俺が無言で小さくうなづくと、ガイスさんは受付のお姉さんにいい笑顔を向けて語り始めた。


 「いや、俺は何もしちゃいねえよ。木の上から見ていただけさ。相手は頭付きの黒狼35匹の群れだったんだがこいつ一人で軽くあしらっちまいやがったんだ。そん時の装備はこいつが今着ているこの服とナイフが1本だけ。見た感じ魔法も使っていなかった」


 (おいー!? なに語り始めちゃってんの? 俺のアイコンタクト全く伝わってねえし! しかもあんたがバカでかい声で語るから周りの冒険者もみんなこっち見てんじゃねえか!)


 ガイスさんに避難するような視線を送るが、ガイスさんはそれに気が付くことなく話を続ける。


 「元々はこいつがどのくらい戦えるのか見るための試験みたいなもんだったからな。初陣だし、そんな相手と戦わせるつもりはなかったんだ。黒狼の群れに囲まれていると気が付いた時には俺も慌ててな。木から降りて俺が相手しようかと思ったんだよ。でも下にいるこいつを見て気が変わったよ。そん時こいつは明らかに黒狼の群れには気が付いてんのに全く慌てちゃいなかったんだからな。それどころかナイフを構えて迎撃態勢に入ってやがる」


 周りの冒険者から「無謀だ」とか「どうやって」とかいう声が聞こえてくる。

 装備から見て恐らくそこまでランクの高い冒険者ではなさそうだ。しかもいつの間にか俺たちを囲むように輪ができており、みんな完全に聞く態勢に入ってやがる。勘弁してくれ......


 「最初に15匹の黒狼が襲い掛かってきたんだ。だがこいつは俺でも真似できないような無駄のない最低限の動きで奴らの猛攻を回避し、確実に相手の急所を狙っていく。奴らが襲い掛かってきて10秒かそこらしか経ってねえっていうのにもう奴らは半分しか残ってなかった」


 「おお!」「やるな」「まさか......」といった声が周りから漏れる。穴があったら入りたい。羞恥プレイ過ぎる。


 「だが奴らもまずいと思ったのか、後ろで様子を見ていた群れのリーダーを含めた20匹も襲い掛かってきたんだ。しかもそのリーダーはな、『赤付き』だったんだよ」


 その言葉に周りがどよめく。あかつき? あかつきってなんだ? イマイチ意味の分かっていない俺だが、そんなことお構いなしに、俺を置いてけぼりにしたまま話は進んでいく。


 「こいつは流石にまずいと思って俺も臨戦態勢に入ったんだが、この野郎はそんなの関係ないといった具合で赤付きや他の黒狼の攻撃を難なく避けながら着実に奴らの数を減らしていった......」


 そこで一旦セリフを切るガイスさん。そういうのは良いからせめてさっさと話しを終わらせてくれ。周りも聞き入ってるんじゃない! さっさと換金して帰れ! 何しに来たんだ全く。


 「それで残りが12匹くれぇになったところで、赤付きが吠えたんだ。奴が吠えるのはスキルを行使するときだけ。いよいよまずいかと思ったが、なんと奴ら撤退していきやがった。つまり、こいつは赤付きに手下11匹引き連れても勝てないような相手だって判断されたんだよ」


 それを聞いた冒険者たちの視線が俺に集中する。あかつきとやらのことはよく分からんがなんかすごいことなんだっていうのはなんとなくわかる。ガイスさん、あの時はリーダーとしか言ってなかったのに。せめてあの時にちゃんと教えて欲しかった。


 「で、奴らが完全に撤退していってから木から降りてこいつを褒めたら、こいつ今の相手はそんなに強くなかったから褒められるようなことじゃないみたいな感じでよ。汗一つ掻いちゃいねえし、怪我も全くしてなかった。それどころかズボンの裾すら汚れてなかった。こいつにとっちぁ赤付き率いる黒狼の群れを相手にするのなんざ朝飯前ってわけだ。これでウチのギルド『クリスタリア』も安泰だぜ!」


 ......なんか今のセリフ、最後の一言だけやけに声がデカかったというかワザとらしく感じたんだが。もしかして俺、ギルドの宣伝に使われたのか? まあ、ガイスさんやエルバルトさんにはお世話になってるからお礼はしたいところだが、こんな羞恥プレイみたいなのは勘弁して欲しかった。




 「お話、大変楽しませていただきました。ところで、査定が終わったので確認をお願いできますでしょうか」


 ガイスさんの話も終わり、周りも落ち着いてきたところで受付のお姉さんが声をかけてきた。

 そういや恥ずかしくて俺も途中から忘れてたけど、黒狼の素材を換金しに来たんだった。


 「あ、はい。なんかすみません」


 「いえ、楽しませていただいたのは本当ですから。そうでなければ査定が完了した時点で声をかけています。しかしすごいですね『赤付き』の群れをお一人で撃退してしまうとは。それもナイフ1本で」


 くそ! なんでみんなして俺を恥ずかしめるんだ。俺をいじめて楽しいか!


 「い、いえ。そんなことは。たまたまですよ。ところで、そのあかつきってなんなんでしょうか」


 これ以上恥ずかしい思いをしたくなかった俺は、話をそらすためにさっきから気になっていたことをお姉さんに聞いてみることにした。


 「え? 赤付きをご存じないんですか?」


 「あ、はい。恥ずかしながら......」


 「では、知らずに相手をしていたのですか?」


 「え? あ、はい。そうですけど......」


 うむ。何がとは言わんがなんだか話が嬉しくない方向へ向かっている気がする。周りの人たちもまたざわざわし始めたし。ガイスさんだけは俺を見てニヤニヤしているが。チクショウ。


 「それはすごいですね。赤付きというのは狼系魔獣の特殊個体の通称で、体に真っ赤な線が入っているのが特徴です。赤付きは通常の個体よりも高い身体能力と知性を持ち、場合によってはスキルや魔術を使うこともあるのだとか。そして赤付きの最大の特徴は相手の強さを見極める力を持っていることです。スキルなのか技術なのかはわかっていないのですが、彼らはわずかな闘いだけで相手の強さを感じ取ることができるそうです。ちなみに赤付きの強さは単体でもCランク相当になります。そしてその赤付きの率いる黒狼の、それも30を超える群れの討伐ともなれば、当然Bランク相当の依頼になります。つまり、それを無傷で軽くあしらってしまったあなたは冒険者ランクこそまだGではありますが、実力的には少なくともそこにいらっしゃるガイス様と同等、あるいはそれ以上という事になるわけです」


 だからみんなこんな騒いでんのか。そりゃそうだよな。Bランクって言ったら結構上の方だし、まだGランクの新人がそんな相手を軽くあしらったなんて話を聞いたら俺でも驚くだろう。こりゃ多少は噂になるかもなぁ。ガイスさんもこれを狙ってワザと俺に赤付きの話をしていなかったのかもしれない。やられた......


 「あーえっと......あ! 確認でしたよね、査定の。お願いします」


 もはやどうしようもないと悟った俺は、さっさと用事を済ませてここを去ることにした。


 「え? あ、はい。黒狼の素材25匹分で、3000メリクでいかがでしょうか。状態の良いものが多く解体もとても綺麗にされていたので、多少色を付けさせていただいたつもりなのですが」


 俺には相場がよくわからないのでガイスさんの方を見ると、無言でサムズアップしてきた。大丈夫ってことなのだろう。


 「はい、それで大丈夫です」


 「では、こちらが代金になっております。銀貨30枚、ご確認ください」


 そう言うとお姉さんは小さな麻袋を俺に渡してきた。中を見てみると銀貨が沢山入っている。

 「はい、大丈夫です。それでは」


 本来なら出して確認したほうがいいのかもしれないが、早くこの場から逃げ出したかった俺は袋を軽く覗くとすぐに冒険者協会を出ていった。


 建物を出たところでガイスさんが慌てて後を追ってきたが、俺は一言も発することなくギルドへと帰り、そのまま自室で眠ることにした。今日はもう恥ずかしすぎてやってられん。

 問題を先送りにしているだけだという事はわかっているのだが、とりあえず落ち着く時間が欲しかった。ガイスさんが部屋の外で何か言っているが、無視だ無視。

 そうして俺は恥ずかしさから逃げるように眠りについたのだった。


今回素材の換金しかしてねぇ……


予定にないシナリオをはさむことになったためヒロインはまだ登場してません。

次回登場するかも怪しいです。

早く登場させたいような、そうでもないような……

出そうと思えば次回出すこともできるんですけどね。

とにかく、頑張ります。

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