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第七十三話 『勇者が召喚されたらしい』

 会場での騒動の後、俺と勇者(?)の女の子二人は、俺の控え室へと移動していた。

 後から来た騎士らしき人たちと、大臣っぽい感じの人も一緒だが。

 会場では、今頃司会の女の子とか王様とかが、事情の説明とか言い訳をしている頃だろう。


 「えー、私はアストレア王国、国王補佐のメルガ・アランダープという。よろしく頼む」


 部屋に到着し、席につくなり、大臣っぽいおじいさんが挨拶をしてくる。

 どうやらこの人は国王補佐だったようだ。

 勇者のお目付け役とかなのかな? 厳格そうな雰囲気があって、正直ちょっと苦手な感じだ。


 「冒険者のレイジです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 「あ、えと、カナです。よろしくお願いします」

 「リカです。よろしくお願いします」


 俺が頭を下げて挨拶をすると、カナって子が慌てて挨拶をし、リカって子がそれに続く。


 「では、そうですね……何からお話しするべきか……」

 「それなら、先に質問をしてもよろしいでしょうか」

 「ええ、どうぞ。その方がこちらも話しやすいですし」

 「では……まず、ここにいる二人は、異世界より召喚された勇者、という事でよろしいのでしょうか」

 「ええ、間違いありません。明日の大会最終日で、発表のする予定でした」


 ふむ。大会は五日なのに、四日で決勝までやってしまって、最終日はどうするのだろうかと思っていたのだが、そんなイベントが予定されていたのか。


 「では次に。なぜ、勇者を召喚したのですか?」


 彼女たちの召喚理由次第では、俺は国を敵に回さなくてはいけなくなるかもしれない。

 戦争のために召喚されて騙されて、なんてこともあり得るからな。


 「ふむ……それに関しては、明日には発表することだし、まあ良いだろう。勇者召喚をした理由は、お告げがあったからじゃ」

 「お告げ、ですか?」

 「うむ。王都にあるカーレイム神殿には行ったことがあるだろうか。あそこには、六大神様からのお告げを授かるための儀式をする場所があってな。そこで月に一度、祈りを捧げているのだが、先月の終わり、祝祭の日の儀式の際、巫女がお告げを授かってな。すぐに勇者召喚を行えという内容であったので、急ぎザストール王国とスレブメリナ王国に連絡を取り、サルマリア王国にて、勇者召喚の儀を行ったのが四日前というわけだ」


 ふむ……輪廻神は、世界を救え的なこと言っていたし、そういうお告げがあってもおかしくはないか。

 でも、あんまり急ぎじゃないとか言っていたのに、なんで勇者召喚はかしたんだろう。

 思ったより事態は深刻なのか?

 ま、本当にヤバくなったら、また夢にでも出てくるだろう。


 「では、最後にもう一つだけ。勇者は、この二人で全員なのですか?」

 「いや、勇者は全部で五人いてな。それぞれの国に一人ずつおる。この二人だけは、元々友人であったこともあり、引き離すのはかわいそうという事で一緒に行動させておるがの」


 まあ、勇者の召喚を大きな国が集まって行ったのなら、パワーバランスとかも気にするだろうし、そうなるわな。


 「では、こちらからも質問しても良いだろうか」

 「ええ、どうぞ。こちらからあなたにお聞きしたいことは、だいたい聞けたので」

 「お主に聞きたいことは二つじゃ。まずは、お主が何者であるか、という事じゃ。あの再生能力。詠唱もせずに放つ攻撃魔法。極めつけは、スレブメリナの国王や学者も知らぬ魔法の数々。ただの冒険者というわけではあるまい。そしてもう一つは、これは場合によっては、一つ目と被るやもしれぬので一緒に聞くが、お主と古魔晶龍エンシェントクリスティアドラゴン様との関係が如何様なものであるかじゃ。お主が彼の偉大なる古龍様と何かしらの関係があるという噂は、私の耳にも入っておるのでな」


 ふむ……ま、普通聞かれるわな。

 でも、それの言い訳はある程度考えてある。

 あとは相手が信じてくれるかどうかだが……


 「古龍様との関係は、以前彼が生まれて間もない頃、困っているところを通りかかって、ちょっと手を貸したことがあるだけです。その際、お礼という事で力の一部を分けていただきまして……俺の異常な再生能力や、無詠唱で放つ魔法は、それが理由で使えるというわけです。あと、オリジナル魔法についてですが……これは、申し訳ありませんが、秘密ということで。知れば、魔法の常識が変わってしまう程のものですから。おいそれと一つの国だけに漏らすようなことはできません」


 俺の知識で魔導具を作ったら、アーティファクトを量産できてしまうからな。

 流石にそれをどこの国が独占するのはマズいだろう。

 信用できる個人に完成品をプレゼントするならまだしも。


 「ふむ、そういう事でしたか。まあ、古龍様も借りがあると仰っていたらしいですし、だいたいそんなところだろうとは思っていたのですがね。ちなみに、このことは誰かに話したりは?」

 「いえ、特には。あーまあ、仲間が一人いまして、彼女にだけは話してはいますが」

 「それならば大丈夫でしょう。ただ、あまり広められると、古龍様に力を分けてもらうために、色々としようとする愚か者が出てきかねませんからな。とはいっても、あれだけの人間の前で見せてしまった以上、噂が広まるのも時間の問題でしょうが」


 あーまあ、大丈夫だろう。

 彼は古龍の機嫌を損ねるのを危惧しているのだろうが、古龍は俺なわけだし。

 人間と敵対することはあり得ないです。ご安心ください。


 「さて、ではお互い事情もだいたい分かったという事で、レイジ殿には、一応正式に発表があるまで、勇者の詳細は黙っていていただけるとありがたい」

 「あ、はい。わかりました」


 そもそも、別に話す相手もいないけどな。

 レティアも、フィルスも、話しても黙っててって言えば大丈夫そうだし。


 「では、我々はこれで」


 そう言って、メルガさんと勇者一行が、全員控え室から出て行く。

 そして、一人残された俺。


 「さて……そういや、優勝ってどうなるんだろ。決勝があんなことになっちまって……」


 運営側としては、たまったものではなかっただろうな……ま、俺のせいじゃないけど。

 それにしても、邪神信仰か……またベタなテンプレみたいな敵が現れたもんだなぁ……

 それで、ラスボスは邪神様ってか? めんどくさ……

 そもそも、俺の強さは神の器に依存したものなのだから、神に勝てるわけないじゃん。

 無理ゲー臭いなぁ……魔王までならどうにかなるかもだけどさぁ……神はなぁ……

 ま、今は自分の体のことだわな。

 正直、無茶したせいでかなりヤバい。今も下手に戦闘でもしようものなら、古龍に呑まれかねないほどに不安定な状態だ。

 あーフィルスに会いたい。モフモフしてぎゅっとして落ち着きたい。





 ――――コンコンッ


 しばらくの間、俺が一人でぐーたらしていると、不意にドアがノックされる。

 気配は一人だけ。大会スタッフとかかな?


 「はい。どうぞ~」

 「失礼します。協議の結果、相手選手に、明確な殺意があったことから、ルール違反で失格とし、レイジ様が優勝ということになりましたので、そのご説明に伺いました」


 入ってきたのは、ちょっと高級感のあるスーツを着た、比較的若そうな男の人だった。言動からして運営側のそこそこ偉い人とかかな?

 しかし俺が優勝ってことは、賞金もらえるってことか? やったぜ。

 優勝者としてはなんとも締まらない感じの勝負だったが、別に名誉とかいらないしな。

 今俺が欲しいのは金だけです。


 「それで、優勝者であるレイジ様には、できれば明日のイベントにもご参加していただけるとありがたいのですが……どうでしょうか。お体の方は」

 「あーまあ、戦闘とかでなければ大丈夫なんですが、戦うのは無理です。あと、魔導具もあの爆発で全部吹っ飛んじゃったので、魔法も使えません。それで良ければ一応大丈夫ですが」

 「そうですね……本当は勇者様との試合をと思っていたのですが、わかりました。レイジ様の状態を考慮して、こちらで再び予定を組み直しますので、そうですね……本日は、どちらにお泊りに?」

 「大会期間中はずっと、ジウスティア侯爵家の別宅にお世話になっています」

 「では決まり次第、そちらに再度お伝えしに伺いますので、よろしくお願いします」

 「わかりました。今日はもう帰っても?」

 「ええ、問題ございません。本来なら、このあと表彰式を行う予定だったのですが……今は色々立て込んでおりまして、それは明日に延期されました。ですので、本日はもう選手の皆様にしていただくことは特にございません。それでは、私はこれで失礼させていただきます」


 そう言って、彼は部屋を後にする。

 扉が閉められた直後、駆けていくような音が聞こえたあたり、なかなかに忙しそうだ。

 イベントが失敗に終わらないよう、是非とも頑張ってもらいたいものだ。

 失敗になったら、下手すると俺まで責められそうで嫌だし。


 「さて、それじゃあ俺も帰りますかね」


 俺は誰もいない部屋でそうつぶやくと、腰を上げ、会場を後にするのであった。

大会編も終わりが近いですね。というか、そこまではもう書き終わってたりします(笑)

そんなわけなので、次の話もきちんと詰めておかないとなぁ……

なんて最近(今日)はよく考えたりしています。

さあ、どこまで日刊が続けられるのか……私も楽しみだったりします(笑)

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