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第七十一話 『大会四日目・vs邪教徒』

今日は思った以上に筆が進んだので、もう一話投稿しちゃいます。

ストックはあまりしたくないので(笑)

そんなわけで、本日二話目の投稿となります。ご注意ください。

 「火は常世とこよ全ての闇を照らし、水は常世に蔓延はびこる穢れを洗い、風は漂う怨嗟えんさはらい、土は清き聖花せいかをその身に咲かせん――――」


 魂魄活性により、先ほどまで見えなかった敵の動きが見えるようになった俺は、ギリギリでその攻撃を回避しながら、あるいは、あえて致命打にならぬ攻撃を受けながら、魔法を詠唱する。


 急に俺の動きが良くなったことで、相手の顔にも焦りの色が浮かび、攻撃がより熾烈になるが、攻撃方法はあくまで長く伸びた爪や、硬化した腕や足による近接攻撃のみ。

 魔法などの遠距離攻撃を使う様子はない。


 「ちょこまかとっ! さっさとくたばりなさいよ!!」


 カリーシャがそう叫びながら腕を振るう。

 するとなんと、その爪の先から、赤黒い魔力の斬撃が飛んできた。

 不意の遠距離攻撃に、俺はそれを回避しきれず、左腕の肘から先が宙を舞う。


 どうやら渋っていただけで、遠距離攻撃もあったようだ。

 だが、今まで使ってこなかったという事は、そう何度も放てるものではないのかもしれない。

 感じた気配も、魔素ではなく魔力だったからな。


 「~~~っ!? ……暗き水面に揺蕩うほむらよ。清き風に揺られ、土へと還れ――――」


 俺は痛みに顔をしかめながらも、冷静に腕を再構築しながら、詠唱を続ける。

 ここで詠唱を途切れさせれば、もう次はないだろう。

 どれだけ無茶でも、無理やりでも、これだけは完成させなければならない。


 しかし、相手も魔法というものの脅威を理解しているのか、かなりしつこく妨害してくる。

 腹や肺、口などの、攻撃を受ければ詠唱が止まりそうな部位を、積極的に狙ってくる。

 まあ、そのおかげで攻撃が読みやすくなっており、かろうじで避け続けられているのだが。

 しかし、相手はそのことに全く気付いていないようだ。

 パワーやスピードは凄いが、動きは単調だし、戦いは素人なのかもしれないな。


 「儚く淡き魔の六元よ。根源の無へとせ。生まれ、集い、混じりて爆ぜよ! ――――"水屯みたむろ"」


 俺が詠唱を終え、カリーシャはこれから発動するであろう魔法に身構える……が、特に何かが起こることはなく、結果として、俺とカリーシャの距離が空くだけの結果に終わった。

 もっとも、それはパッと見ではそう見えると言うだけで、本当に不発に終わったわけではないが。


 「はっ……ははははっ!! 脅かさないでよね。せっかくの魔法が不発なんて、全く貴方センスあるわよ! あははははははは!!」


 俺をバカにするように笑うカリーシャだが、俺から言わせればバカは貴様の方だ、カリーシャ。

 この局面で不発に終わるような魔法を詠唱するような間抜けが、こんなデカい大会の決勝まで勝ち残ってくると、本気で思っているのか?

 そうやって貴様が笑って無駄にしている時間ですら、俺にとっては勝利のための貴重なものであるというのに……

 俺は完全に勝った気でいるカリーシャに、左手から火のブレスを放つ。

 無論、その程度の攻撃では、カリーシャは簡単に避けてしまうだろうが、俺の狙いはダメージを与えることではない。


 今俺が発動した魔法、その正式名称は"沌燄葬帰とんえんそうき"という。"水屯"というのは、それの第一の発動キーに過ぎない。

 この魔法は少々特殊で、四つの発動キーを、手順に従って詠唱することで、徐々に完成させていく魔法なのである。

 故に、今はまだ最初の準備段階に入っただけ。何も起きないのは当然のことだ。

 そしてその最初の手順は、『魔導具への魔素の蓄積』だ。

 故に俺の狙いは、魔導具を収納している左胸に近い左腕からブレスを放つことで、魔素の集約の理由を、ブレスを放つためであると思わせ、時間を稼ぐことである。

 そういった意味では、こちらを舐め腐って遊んでいる彼女の行動は、俺にとっては酷く滑稽で……とても都合が良い。

 残り時間は約7分か……間に合わせなければな。


 俺は腕から、足から、口から、時には威力を落として全身からブレスを拡散させることで、敵の攻撃を牽制しながら、魔導具に魔素を流し込み続ける。


 「あっはっはっはっは!! そんなのろまな攻撃じゃ、私に傷はつけられないわよ?」


 カリーシャは相変わらずの舐めた態度だが、彼女は魔素や魔力を視覚で感知できる。

 もうしばらく、せめて第一段階が完了するくらいまでは気がついてくれるなよ……


 「ん? アンタその魔素の密度……まさか!! さっきの詠唱か!?」


 だが、俺の願いもむなしく、まだ十分な量の魔素を溜め込んでいない段階で気づかれてしまった。

 これで相手の油断も消え、攻撃も激しくなるだろう。

 そうなれば、長くはもたない……仕方ないか。


 「"臽炎ゲンエン"」


 俺はこれ以上の魔素をチャージするのを諦め、次の段階へと魔法を移行する。

 これでどれほど威力が出せるかわからないが、やらねば完成前にこちらがやられてしまうからな。

 段階が移ったことにより、魔法は内部の魔素の属性変換と、それらの衝突による魔力暴走をし始める。

 そうなってしまえば、俺は魔素を全て使用することができる。

 今まで全体の八割近くをチャージに回していたからな。ブレスの威力が上がるだけでも、だいぶ違うだろう。


 俺はブレスを、相手を狙うのではなく、なるべく広範囲に、相手が攻めづらいように放ち続ける。

 この行動、攻撃としては滑稽だが、足止めとしては効果的だ。

 事実、相手も斬撃は飛ばしてくるものの、近接攻撃はなかなか仕掛けてこない。

 相手が素人で良かった。もしこれで回避技術にまで長けていたら、とてもじゃないが相手しきれなかっただろう。


 「ぐっ……このっ! 調子に乗るなぁぁああ!!」


 しかし、相手も流石は人外バケモノというべきか、あるいは邪神への狂信からなのか、俺のブレスを喰らうのを覚悟で、突進をかけてくる。

 普通ならその程度の単調な動き、どうにでもなるのだが……相手は目で追うのがやっとなほどの高速。

 更に、俺はブレスの反動で動きがいくらか鈍くなっている。

 苦し紛れに後ろに飛んではみたものの、そんな状態では流石に攻撃を避けきれず、魔道具こそ無事だったが、両足の膝から下を持って行かれてしまった。

 しかし、相手もブレスの直撃を何発も受けたためか、霧散していく俺の両足を抱えたまま、その場でうずくまっている。

 俺は、足の千切れた痛みに耐えながらも、魔法の制御を維持しながら足を治す。


 ……しかし、このままではマズイな。

 今動かれていたら、確実に殺されていただろう。

 こんなことを続けていたら、先にやられるのは……恐らくは俺、だろうな。

 無茶な魔素の使い方をしているせいか、向けられた殺意に反応しているせいか、原因はわからんが、先程から古龍側の衝動も強まってきている。

 ここで敵を残したままデカい傷を負えば、確実に暴走するだろう。

 そうなれば、ここにいる観客たちは……クソッ!!


 「"双死草ふたしぐさ"」


 暴走は臨界点に達してはいなかったが、今は威力よりも時間を優先しなければならないと判断し、俺は魔法の段階を更に進める。

 三段階目は準備の最終段階。

 魔導具内部で荒ぶる魔素と反発エネルギーを融和させ、一体とすることで、魔法の効果を安定させる。

 この段階には、さほど時間はかからない。理論値よりもだいぶ込められた魔素が少ないことを考えれば、かかる時間はせいぜい1~2分といったところだろう。

 魂魄活性の持続時間は残り4分。どうにか間に合いそうだ。


 「ぐっ! いい加減に死ね!! この〇〇(ピー)が!! テメェの〇〇(ピー)〇〇(ピー)して〇〇(ピー)すんぞこの〇〇(ピー)がぁぁぁああああ!!」


 俺が足を直して立ち上がったところで、ほぼ同時に立ち上がってきたカリーシャが、こちらを睨んで突然お子様には聞かせられないような罵詈雑言を飛ばしてきた。

 先程までの妖艶なお姉さんな感じの雰囲気は一体どこへ行ってしまったのか……もう完全にブチギレていらっしゃる。

 さあ、最後のもうひと踏ん張り、頑張るとしましょうかね。

また近いうちに二話以上投稿する日があるかもしれません。

よろしくお願いします。

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