第六話 『初仕事だ!』
こんばんは、モモガスキです。
今日も無事投稿することができました。
しかしやっぱりヒロインは登場させてあげられませんでした(´・ω・`)
このペースだと登場は明後日辺りになってしまうかもしれません。すみません<(_ _)>
2017/01/24 黒狼の振り仮名の位置を修正,誤字修正
2017/02/07 行間修正・その他微修正
「おはようレイジ君。ほれ、これがギルド証じゃ。なくさんようにの」
次の日の朝、目を覚ました俺が1階へ降りるとエルバルトさんがギルド証を渡してくれた。ギルド証は銅でできたプレートで、俺の名前が刻印されている。
「ありがとうございます。これで俺も仕事ができるんですよね?」
「ほっほっほっ。やる気があって実に良いことじゃの。もう必要なものはそろっておるから仕事をしてもらって大丈夫じゃよ。ただ......」
「ただ? 何かあるんですか?」
「いやなに、初仕事というのは最も死亡率が高いと言われておってのぅ......心配なんじゃよ。そこでじゃ。もしレイジ君さえ良ければはじめは先輩の冒険者と一緒に仕事へ出んか? 薬草採集の方法から魔獣の剥ぎ取りまで、冒険者としてのノウハウを指導してもらえるじゃろう。大きなギルドなんかではあまりこの方法をとらんが、家はアットホームが売りじゃからの。できれば皆に無事に帰ってきてほしいんじゃよ」
そう言うとエルバルトさんは少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。昔、何かあったのだろうか......
「どうじゃ? 指導には今手の空いてる冒険者が付くことになるじゃろう。今だとガイス君になるかの」
ああ、昨日のでかい声でやけにフレンドリーだった人か。あの人なら悪くないかもな。ランクもBて言ってたから結構強そうだし。見た目も長身マッチョで頼りがいありそうだからな。
「ガイスさんなら頼りになりそうですし、むしろこちらからお願いしたいくらいですよ。でも、ご迷惑にはならないでしょうか? 彼にも仕事があるでしょうし......」
「それは大丈夫じゃよ。新入りへの指導はうちでは毎回のことじゃし、ガイスは昨日レイジ君のことを見ておるからの。指導担当になることもわかっておるじゃろ。ガイスの性格も考えると、むしろあちらから言ってくるかもしれんくらいじゃ。迷惑という事もあるまいじゃから――――――」
「おう爺さん! レイジに指導の話はしたか? 担当はもちろん俺なんだよな? 俺じゃなくても俺にしてくれ! 準備してきちまったしな!」
噂をすればなんとやら。昨日に増して大きな声を張り上げながらガイスさんがギルドに入ってきた。
「朝っぱらから声がでかいわい! 心配せずとも担当はお主になるであろうとちょうど話しておったところじゃよ」
「そうか! それじゃあよろしくなレイジ!」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
流石ギルドマスターなだけあってエルバルトさんはメンバーの性格がよくわかっているようだ。ガイスさんがわかりやすいだけかもしれないが。
朝食を食べた俺とガイスさんは早速門を出て近くの森へ来ていた。本来なら荷物や武器の準備から指導が入るらしいのだが、俺には持ち物がほとんどなかったのでそれはまた今度になった。今の俺の装備は私服と変わらぬ格好にナイフを1本持っているだけだ。
ちなみにこのナイフは冒険者になった記念にと言ってエルバルトさんから頂いたものだ。武器は貸すとか言ってたくせにまさかくれるなんて......粋なことをしてくれる。また借りが増えてしまった。
「さて、それじゃあレイジ。まずはお前がどれだけやれるのかを見たい。次に遭遇した魔獣をお前ひとりで相手してみろ。もちろん危なくなったら俺が助ける。ポーションもあるから落ち着いてな」
狩場では流石にいつものバカでかい声は抑えているようで、普通のボリュームになったガイスさんがそんなことを言ってきた。できるなら普段からそうしていればエルバルトさんに怒られることもないだろうに。
さて、それはそうと魔獣を狩るんだったな。戦闘経験がなければここで取り乱したりするのかもしれないが、俺は転生前に散々人や獣を相手に闘ってきた経験があるし、なにより今の体ならそうそう死ぬことはなさそうなので過度に緊張をすることはない。
「それじゃあ俺は木の上から見てるからな。頑張れよ」
そう言うとガイスさんはその巨体に似合わぬ素早い動きで木の上まで登って行った。
気持ちを戦闘モードへ切り替えた俺は、周囲への警戒を始めた。気配察知のスキルを持つ俺は一定範囲内の魔獣や人を感知することができる。人の姿だと目を瞑っていてもわかる感知範囲は10メートルくらいだろうか。その場で警戒をし始めて2分といったところだろうか。後方からの草を踏み分けるようなかすかな音を拾った俺は後ろを振り向き警戒を強めた。
(魔獣か? 1匹ではなさそうだな。囲まれている。数は1、2、3......15か? いや、更に奥にもかすかに気配を感じる。かなり多いな。足音からして四足歩行か? 気配の感じは狼に似ているかな。最初の獲物としては上々といったところか。狼の群れは手強いが、ガイスさんもいる今それを経験できるのは僥倖かもしれんな)
推定狼型魔獣は少しずつ包囲の輪を狭め、俺に近づいてくる。それにつれてさっきまではわからなかった更に奥にあった気配も感じられるようになってきた。
(奥に居るのも同じ奴らか。数は更に20ってとこかな。1匹だけ気配が強い奴がいるな。群れのリーダーだろうか。それならそいつを――――――)
そこまで考えたところで、先頭に居た魔獣達が一斉に俺に襲い掛かってきた。その容姿は黒い狼といった感じで俺の予想から大きく外れないものであった。木の上からガイスさんの焦りと迷いが気配に乗って伝わってきたが、それを無視した俺は魔獣の同時攻撃に焦ることなく冷静に対処する。
最初に飛び出した奴の軌道を掌打で逸らし、軌道が交差する奴は避けて自滅を誘い、隙を見て1匹ずつ確実に傷をつけ血を流させていく。どうやら俺の身体能力は転生前よりも上がっているようだ。流石にこの数は前の俺では対処しきれなかっただろう。
最初に襲われてから約15秒、第一陣の魔獣の数が半分ほどになったところで奥の20匹も動き出し攻撃に加わってきた。
だが、今のわずかな戦闘で相手の攻撃パターンを見切っていた俺にとって数の増加は大した問題ではない。問題があるのはむしろ群れのリーダーらしき個体も戦闘に加わってきたことだろう。この個体だけ明らかに動きが良い。それにわずかだが魔素の気配を感じる。俺基準で考えると大した量ではないが、ここにいる他の狼どもとは格が違いそうだ。リーダーへの対処を後回しにした俺は、攻撃を回避しながら更に魔獣の数を減らしていく。
しかし相手も馬鹿ではないのか残りが12匹になったところでリーダーらしき個体から魔素が放たれたような気配を感じると、すべての魔獣が一斉に俺への攻撃をやめてリーダーを囲うような形で陣形を組んだ。そして俺を警戒しながらもジリジリと後退していく。どうやら逃げるつもりのようだ。こちらとしてもすでに23匹も倒しており持ち帰れる数を超えてしまっている。帰ってくれるなら別に深追いするつもりはない。
そう考え俺が魔獣達への警戒を解くと、奴らは一斉に踵を返し一目散に森の中へと逃げ帰っていった。
「はっはっは! やるじゃないかレイジ! 正直黒狼の群れが出てきたときはかなり焦ったがまさか無傷でやり過ごすとはな! これなら心配せずとも大丈夫そうだな。」
「本当ですか? ですが今の相手はそこまで強い相手ではなかったのでは?」
「確かに黒狼は単体でならFランク相当の弱い魔獣だがな。今の群れ、リーダーがいただろ? リーダーのいる30匹以上の黒狼の群れの討伐は、単独でなら本来Cランク相当の相手だ。それをお前さんは無傷で対処したんだ。感じからして奴らが逃げなければすべて倒すのも難しくなかっただろう。違うか?」
「いえ。リーダーが未知数ではありましたが、それ以外は問題ないかと」
「黒狼のリーダーは群れを統率する能力を持つ以外は普通の黒狼より少し身体能力が高いってだけで大した相手じゃない。1対1でお前さんなら負けることはまずないだろうよ」
「そうでしたか。ところでこの黒狼の死体なんですが......どうしましょう?」
「ん? もしかして持ち帰りの心配して奴らを追撃しなかったのか?」
「え? あ、はい。そうですけど......」
こんな言い方をするってことは何か当てがあったのだろうか。それなら全部狩ってしまってもよかったかもな。
「あーそれなら言っておけばよかったな。俺は魔術付与のされた袋を持っているからこのくらいなら問題なく持ち運べるんだ。まさかいきなりこんな数の獲物を狩るとは思ってなかったんで言ってなかったんだが......スマンな」
そう言ってガイスさんはバツが悪そうに頭を掻いた。
「あぁいえ、大丈夫です。これを運んでいただけるだけで十分ありがたいですから」
「そうか? まあ終わったことだしな。あんまグダグダやってても血の匂いでいらん相手呼んじまうかもしれないし、とりあえず黒狼の死体をしまうから集めるの手伝ってくれ」
「はい!」
それから素早く黒狼の死体を回収した俺たちは、一旦ギルドへ戻ることにした。
「む? 早かったの。どうじゃった? レイジ君は大丈夫そうか?」
ギルドへ戻ると受付に居たエルバルトさんが出迎えてくれた。
「レイジ、こいつを持って裏庭に行け。そんで試しに1体解体してみろ」
そう言ってガイスさんは俺に例の魔術付与のされた袋を渡してきた。どうやらテストの評価は俺には聞かせてくれないらしい。まあ、先ほどの様子から考えれば評価はさほど悪くはならないだろう。
解体スキルの具合も確かめておきたかった俺は、袋を受け取るとおとなしく裏庭へと向かった。
~~~ガイス視点~~~
レイジが裏庭へと出ていったことを確認した俺はさっそく爺さんにあいつの評価を聞かせてやることにした。
「大丈夫なんてもんじゃねえよ爺さん! レイジはかなり腕がいい。テストでは頭付きの黒狼の群れ35匹に襲われて焦っちまったが、レイジははそれを一人で無傷で退けやがった。その証拠にさっきレイジに渡した袋には25匹分の黒狼の死体が入っている」
「なんと! ナイフ1本でか? 魔法は?」
(へへっ。予想通り爺さんなかなか驚いた顔してやがる。俺だってかなり驚いたからな。ま、当然だろ)
「いや、見ていた限りでは魔法は使ってなかった。使っていたとしても身体強化系くらいだろう」
「いやはや、まさかそこまでとはな。それもさっきの様子からしてギリギリの戦いというわけでもなかったのじゃろう?」
「ああ。戦闘が終わった時点でもレイジは汗一つ掻いていなかったよ」
「となると戦闘力だけならCかそれ以上はあると考えてよさそうじゃな。もちろん魔獣との相性などもあるじゃろうが......」
「ああ。それに全く緊張していないように見えた。ありゃかなり戦闘慣れしてやがるな。俺だってあの装備であの群れにいきなり襲われたら冷や汗の1つは掻くだろうってのにあいつは顔色一つ変えずに対処してやがった。無駄な動きもほとんどなくそりゃ見事な戦闘だったぜ。あれでGランクスタートってのは勿体ねぇんじゃねえか?」
「たしかにのぅ。しかし彼が1からやると希望したんじゃ。それに冒険者として必要な知識や技術もどこまで身についているかわからん。大丈夫だと思ったらランクスキップ申請をしてやっても良いし、彼ならそんなものなくともすぐにランクも上がるじゃろ」
「そうだな。んじゃ俺はそろそろレイジの様子を見に行くぜ。あんまテキトーなことさせて獲物を無駄にさせちまったら悪いしな」
「うむ。しっかり頼むぞ?」
「任せとけ」
そう爺さんに返事をした俺は、期待の新人の待つ裏庭へと急ぐのだった。
~~~~~~~~~
「ふむ、体の構造は狼とほとんど変わらないんだな。変な球は入ってたけど。これならいけそうだ」
ガイスさんに言われて裏庭へ出た俺は早速解体を始めていた。裏庭には解体用であると思しき台が置いてあり、僅かにだが血の匂いを放っていた。俺はその台の上に黒狼の死体を1つ出し解体をしてみたのだが、その体構造は元の世界の狼と心臓付近に黒くて丸い玉が入っていたこと以外はほぼ同じで、スムーズに解体をしていくことができた。
そして、ちょうど言われていた1匹目の解体が終わったところで、ガイスさんが小走りで裏庭へ来た。
「どうだレイジ? 解体は順調か?」
「あ、はい。今ちょうど終わったところです」
するとガイスさんは驚いたような表情を浮かべ、台の上をのぞき込んできた。
「終わったってお前......ほんとに終わってやがる。しかも処理もかなり丁寧だ。マジかよ。俺より上手いんじゃねえかチクショウ! 黒狼の群れに無傷で勝っちまうし、解体はプロ並みだし、何もんだよお前さんは!」
一瞬変に見られるかもと警戒した俺だが、笑いながら俺の肩を叩くガイスさんからはそんな雰囲気は全く感じることはなく、むしろ予想以上に仕事のできる俺を歓迎してくれているようであった。
それから遅めの昼食をはさんで黒狼の解体を全て終えるころには、すっかり空は赤くなってしまっていた。
「流石に25匹分ともなるとなかなか時間がかかるもんだな」
解体した素材を全てガイスさんが貸してくれた袋に入れた俺は、解体終了の報告をガイスさんにするためギルド館内へ足を運んだ。
「おうレイジ! どうだ解体作業は? 順調か?」
「あ、はい。今さっきすべて完了しました」
「は? お前もう全部終わらせたのか!? まったく早すぎだろ! とんでもねえな!」
「ははは......」
驚きながらもどこか楽しそうにそんなことを言ってくるガイスさんに対し、俺は苦笑するしかなかった。
本当は換金して寝るところまで書いてしまいたかったのですが、ちょっと今日は徹夜明けでイマイチ体調が優れないのでここで一旦切らせていただきました。
誤字脱字もちゃんとチェックできていないので、間違ってたらごめんなさい。
明日は今日より時間が取れると思うので、今日の分を取り返す勢いで書ければいいなと思っています。
では、よければまた明日前書きでお会いしましょう。
では。