第五話 『冒険者登録』
昨日半分ほど書いていたおかげで更新できました! 明日を超えればフリーな時間も増えるので執筆の時間も十分とれると思います。明日の投稿も間に合わせるつもりです。頑張ります!
それから、前回ヒロインを次かその次までに登場させると言いましたが、このペースだともう何話か後になるかもしれません。近いうちに登場させるのは確定しているので、もうしばらくお待ちください。
2017/01/23 誤字修正しました
2017/02/07 行間修正
ギルドの中に入るとその内装は外観からくる期待を裏切ることなく、シックでおしゃれな感じにまとまっていた。
「それでは早速登録の手続きをしてしまうかの。ちょいと待ってておくれ」
ギルドの中に入るとエルバルトさんはそう言って受付の奥へ入っていってしまった。
待っている間、特にすることもないのでギルド内を眺めていると、奥のテーブルに座っていた男性がおもむろに立ち上がりこちらへ向かってきた。
「よお! 新入りか? どうせまた爺さんに勧誘されて来たんだろう? 俺はガイス、このギルドの冒険者で冒険者ランクはBだ。困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
「うおっ! え、あ、その......」
こちらに近づいてきた時点で話しかけられるのは予想していたが、思っていたより五割増くらいの大きな声でフランクに話しかけてきたことに驚いてしまった俺は一瞬返事に詰まってしまった。
「ほっほっほ! でかい声が奥まで聞こえておったぞガイス。もう少しボリュームを絞らんと初対面では驚かせてしまうといつも言っておるじゃろうが」
「おお、そうだった。すまん新入り」
いつの間にか戻ってきていたエルバルトさんが会話に入ってきてくれたことで
「あ、いえ。えっと、俺はレイジといいます。よろしくお願いします」
「おう!」
「だから声がでかいと言っておろうがまったく」
注意をしながらもエルバルトさんは終始ニコニコしていて、注意されたガイスさんもどこか楽しげな雰囲気だ。おそらくはいつものことなのだろう。
(いいな、こういう空気。このギルドはやっぱり当たりかもな。肝心の仕事をしてみないとまだ何とも言えないけど)
「さて、それでは登録手続きじゃが、ランクははじめは皆Gランクからじゃ。と言ってもGランクは何か一つでも仕事をこなせばFランクに昇格するがの。要はテスト期間みたいなもんじゃな。それから――――――」
それからしばらくエルバルトさんから説明や注意点を聞いたが、まとめるとだいたいこんなところだ
・ランクはG~SSまで存在し、ランクは依頼をこなしギルドポイントを稼ぐことでランクが上がる
・Cラン以上に上がるにはそれぞれポイント以外にも条件がある
・Gランクで冒険者でいられる期間は1週間
・半年間ギルドポイントを稼いでいない冒険者は登録を抹消される
ただし、仕事ができなかった理由に正当性が認められた場合にのみ免除される
・ランクC以上になると、冒険者協会のリストに名前が載り、協会を通じて指名依頼を受けることがある(※拒否権あり)
・ギルド証の再発行には50メリクかかる。
・登録時、冒険者協会に申請して能力適正試験を受けることができる。これの成績次第では最初からある程度高いランクで活動を始めることができる(最高Cランク)
・ギルドで受けてよい依頼は自分のランクより1つ上のランクまで。B以上は自分のランクまで
・ギルド証には通信機能が搭載されており、緊急の呼び出しや仲間との通話に使用される。
「それで、能力適正試験はどうする? 受けたければ申請しておくが」
「それは、受けるデメリットなどは何かあったりしますか?」
「ふむ。そんなにはないが、金がかかることと、試験が終わるまで活動ができんこと、それから万が一ランクアップを認められなかった場合恥を搔くことくらいかのう。試験は基本公開されておる場所で行われるからの。あぁ、金については心配いらんぞ? こちらで出すからの」
(ふむ、悪い話しではないが正直魔法も使えん現状では大した成果もあげられんだろうし、やめとくかな)
「せっかくですが色々不慣れなこともありますので、1からやっていきたいと思います」
「そうか? あいわかった。では、ギルド証の発行を協会に申請するからこの書類を書いてくれるかの。文字は書けるか?
」
「あ、はい。大丈夫です」
(ふむ。文字が書けるか聞かれたあたりから考えるに、この世界の識字率はイマイチ高くないのかもしれないな)
そんなことを考えながら渡された書類に目を落としたが、
「えーと、これって全項目記入しなければならないのでしょうか?」
俺は書類に記入し始めることができなかった
書類に書き込む項目に別に特殊なものはなく、名前・年齢・種族・特技だけだ。
だが俺にとってはこれらを聞かれるのは実に厄介だ。特に年齢や種族なんて正直に書いたら絶対ヤバい。
「いや、最低限必要なのは名前だけじゃな。それも最悪の場合愛称や偽名などでも問題ない。といってもステータスチェックをされれば流石にアウトかもしれんがの」
ふむ。じゃあ名前と特技だけ書いておけばいいかな。
しかしやっぱりステータスチェックってのはあるんだな。されることがないよう気をつけないと。
名前:レイジ
特技:格闘・短剣・解体
こんなところだろう。嘘は書いていないし、大丈夫だろう。たぶん。
用紙を書き終えた俺はそれをエルバルトさんに渡した。
「うむ。ではこれで申請をしておこう。ギルド証が届くのは早くても明日じゃから今日はゆっくり休むと良い」
なん......だと......?
まだ昼過ぎくらいだし軽い仕事を何かと思っていたというのにいきなり出鼻を挫かれてしまった。
しかしまあ、できないものは仕方ない。いくつか知りたいこともあったし今日は情報収集でもしましょうかね。
「そういう事ならマスター。魔獣の情報などが調べられる場所に心当たりはないでしょうか?」
「ふむ、それならこのギルドの資料室で調べると良い。儂が冒険者時代に使っておった資料やギルドを始めてから追加した資料がすべて保管されておる」
おお! そんな場所があるのかこのギルドには! これはラッキーだ。わざわざ調べに行く必要がなくなった。あとはどんな資料があるかだが......
「あの、魔晶龍についての詳しい資料ってありますかね?」
「魔晶龍様についてか? そりゃあるに決まっとるよ。王都は魔晶龍様の生息域が近くにあるし、それになによりこのギルドの名前は魔晶龍様の名前の一部のクリスティアから来ておるんじゃからの。ほれ、ギルドのマークにも魔晶龍様のシルエットが使われておるじゃろ?」
そう言ってマスターが見せてくれたギルドの紋章のデザインには、確かに中央に大きく細身の龍のシルエットの使わていた。
へ? 何それ聞いてない。
戸惑う俺に追い討ちをかけるようにエルバルトさんは話を続ける。
「儂の故郷はゼムスというアストレア王国北部の村での。魔晶龍信仰の盛んな地域じゃったんじゃよ。もっとも、ここら王都周辺も魔晶龍様の生息域が近いこともあってか魔晶龍様を信仰しておる者は多いがの」
ナニソレハズカシイ
「そ、そうなんですか。えっと、とりあえず魔晶龍についての資料を貸していただけると......」
何とも言えない恥ずかしさに耐えきれずに話を戻した俺は、さっさと資料室へ連れて行ってもらうことにした。
「そうじゃったな。こっちじゃ」
エルバルトさんに付いて行き資料室に入ると、そこにはかなりの数の本や紙束がキレイに保管されていた。
「魔晶龍様について詳しく書かれておるのは......これじゃな」
そう言ってエルバルトさん1冊の本を用意してくれた。
「ありがとうございます」
「読むのはここでは暗いじゃろうし、ロビーの休憩スペースで読むと良いじゃろ。ほれ、さっきガイスのやつが座っておったところじゃ」
「わかりました。読み終えたらどうすればいいですか?」
「読み終わったら受付に渡しておいてもらえれば良い。今は外しておるが、すぐ戻ってくるはずじゃからの」
「了解です。では」
エルバルトさんと別れると、俺はさっそく自分のことについて知るべく資料を読んでみることにした。
「えっと、本のタイトルはっと......」
『魔晶龍の生態と歴史』
まさかの魔晶龍だけの専門書だった。200ページ以上ありそうなくらい分厚いのに魔晶龍のことしか書いてないのかよ......ま、まあこれなら必要以上に詳しく書いてあるだろうし、うん。良い方に考えることにしよう。それがいい。
俺がその本を読み終えるころには空がすっかり茜色に染まっていた。読書は師匠に散々させられていたから文字を読むのはそこそこ早いと思っていたのだが、この本はなかなかのボリュームで内容も面白かったためついついじっくり読んでしまった。しかしおかげでなかなか有意義な情報が手に入った。自分の出生の謎もなんとなく想像がついたしな。
魔晶龍というのは龍種の中でもかなり特殊らしく、まず雄雌の区別がないらしい。それでもって繁殖のしかたもかなり変わっており、空気中を漂う魔素が近くにいる魔晶龍と共鳴して時たま結晶化することがあり、そこにごく稀に命が宿ることがある。
その命を宿した結晶が周囲の魔素を取り込み成長したのが魔晶龍なんだとか。食事は魔素を多く含んだものなら何でも食べるが、魔素の濃い地域にいる限りそもそも必要ないらしい。
だから俺は飯を食わなくても大丈夫なのだろうな。出生に関しても結晶化していない魔素に命が宿ったのが俺なのだろう。どういう理屈なのかはわからんが。
魔晶龍はとてもおとなしい種で、こちらから襲い掛からない限り襲ってくることはまずないそうだ。だからあの盗賊達は俺に襲われたことに戸惑っていたのか。
更に魔晶龍を倒してもコア以外は魔素に戻り霧散してしまう上に、そのコアを破壊する以外に魔晶龍を討伐する手段がない。そのくせ龍種の中でも戦闘力はかなり高い方で討伐しても全く旨みがないどころか赤字まっしぐらなため、やむを得ない事情がない限り討伐されることはない。
それから信仰の対象となっている理由だが、その特殊な繁殖方法と見た目の美しさから神が手ずから命を与えている種であると言われており、また人間に対し全く危害を加えないところに親しみを持たれ神の御使いとして信仰されるようになったとか。
正直神が手ずから命を与えたという部分に関しては俺に限っては否定し辛いところだ。あながち間違ってもいないし。しかし古の部分に関しては全く記載がなかった。元々討伐の必要もないことから必要以上に研究はされていないらしいし、もしかしたら発見すらされていない種なのかも? とりあえず後で詳しそうなエルバルトさんにでも訊いてみることにしよう。
「読み終わったかの?」
本を閉じて情報を整理しているとエルバルトさんが話しかけてきた。
「あ、はい。とても参考になりました。ところで少し聞きたいことがあるのですが」
俺はちょうどいいのでさっそく古魔晶龍について聞いてみることにした。
「古魔晶龍についての記載がなかったのですが、何か知りませんか?」
するとエルバルトさんは驚いたような表情を浮かべた後、身を乗り出し興奮した様子で話し始めた
「古魔晶龍か。古の名を冠するということはそれすなわちすべての生命の頂点に君臨する王者であるという事じゃ。古の名は龍種にのみ与えられるものであり、その名を冠す者が現れた時代には必ず何かしらの変革がもたらされておることから神の御使いとして崇められておる。といっても現れるのは数千年か数万年に1度と言われており、一番最近現れたのも約4700年前のことじゃ。更に言えば儂は魔晶龍がその名を冠したことがあるという話は聞いたことがない。お主、まさかとは思うが古魔晶龍を見たのか? もし古龍が現れたのであればそれは大変なことじゃぞ? それも魔晶龍ともなれば儂を含め信徒が黙っておらんじゃろうしの」
「え、いやその~」
(なんだよそれ!? そんな大げさなもんなのかよこれ! それじゃあますます他人に知られる訳にはいかなくなったな。神の使途として崇められるなんてまっぴらごめんだ! 使途っていうのはあながち間違いでもないけどさ! この世界のことお願いされてるし)
「そういうわけではないのですが、そんな単語を旅の途中でぽろっと。信徒が語る夢物語の類だったのやもしれません」
「そうか......確かにそういう話をする信徒はよく見るのぅ。もし本当に古魔晶龍が現れたのならそりゃ嬉しいことじゃし気持ちはわかるがの」
なんとかごまかせたみたいだ。セーフ。
「それに古の名を冠するのが魔晶龍であるというのは信徒でなくとも嬉しいことじゃろうしのぅ」
「え? どうしてですか?」
信徒が喜ぶってのはわかるがそうでない人が喜ぶのはよくわからん。親しまれている龍種だからか?
「古龍の現れた過去の記録では、国や地域を滅ぼした古龍もおったそうだ。しかし相手は古龍。抗うことも許されぬほどの絶対強者。あるいはそれは世界にとって必要な破壊であったのやもしれんがそこに住む者たちにとってはたまったものではない。しかし古龍となったのが魔晶龍であるならばそのような災厄も起こらぬであろう。魔晶龍は他の龍種と違っておとなしいじゃ種からの」
うへぇ......古龍ってそんな感じなのか。てっきり世界を天より見守る的な存在かと思ってた。確かにそういう事なら魔晶龍であることが喜ばれるのも理解できる。まあ、安心してくれ人間諸君! 俺はそんな災厄起こす気はないから! たぶん!
「さて、ではもういい時間じゃし、飯にするか? 食べるじゃろ?」
そういえばもう夕方だったな。俺は本来食事は必要ないのだが......味はわかるし、何より断っても不審がられるだけだしな。それに人里はあの森より魔素が希薄に感じる。食事をしておいて損はないだろう。おそらく山を越えたときに感じた意義こちの悪さは魔素の濃度の差から来るものであったのだろう。町に入ってからはその居心地の悪さが更に増した気がする。
「はい、いただきます。すみませんごちそうになってしまって」
「なに、お主のしてくれたことに比べれば些細なことじゃて。遠慮はせずに沢山食べてくれ」
「あはは......はい」
正直たいしたことはしていないと思うのだが。まあ、今は甘えさせてもらおう。他に宛があるわけでもないしな。
ギルドの休憩スペースは食事もできるようになっており、エルバルトさんにはそこで夕飯をごちそうになった。数日ぶりにとった食事はとても美味しく、食事が人に与えてくれる幸福感を俺に訴えかけてくるようであった。
(必要なくてもやっぱり食事は良いものだな。金が入ったらきちんと食べるようにしよう)
食事が終わるとエルバルトさんはギルドの二階にある部屋へと案内してくれた。部屋には藁のベッドが1つと備え付けのタンスが1つ置かれているだけであったが、寝起きするだけなら十分すぎるものであった。
「ここを好きに使うと良い。別に遠慮せずいくらでも使っていてよいからの。何なら永住してくれてもよいぞ? ほっほっほっ」
そういうとエルバルトさんは部屋の鍵を俺に渡し、一階へ戻っていった。
(まったく、頭が上がらんな。借りばかり増えていってしまう。彼に出会えてよかった)
部屋に入った俺はようやく生活が安定してきた安心感からか、布団に横になるとすぐに夢の世界へと旅立つのだった――――――
あらすじにも書きましたが、大きな間違い以外はしばらく修正するつもりはありません。そんな技量もありませんしね。読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。上手く書けるようになったら修正も視野に入れて読み直したいと思います。いつになるかわかりませんが(^^;
修正はできませんが、ご意見ご要望は歓迎いたしますので今後ともよろしくお願いします。